被写体深度 12

《11より》

「オヤジ!オヤジ!!」
「落ち着け。コレは爆弾テロだ。あと1、2ヶ所…遮蔽物になりそうな車とか、建物の内側とかまだあるはず。銃を持った歩兵が制圧しに来る訳じゃない。ここで、伏せてるんだ!」

ドウン!ズッパーン!
ドウン!バーン
ギャー キャー ワー

「オヤジ!オヤジ!! フグっ…」
「わかってんだろ!"外人さん"ってだけで、捕まると面倒くさい事ぐらい。まずキャンプに帰って報告だ。どうせ誰の肉か骨かわかんねーよ。」

情けない事に、1発で気絶させられて、今キャンプ内のテントの中。
解ってる…解ってるんだ。でも、思考を通り越して、オヤジを連れて帰りたかったんだ。対戦地雷のあの兵士のように。
冷静になれない哀しみがある。
自分の中にも。
初めて確認した。
あの靴磨きの少年がスイッチで、トラックと、3階建てのカフェの中で、時間差で爆発。
つまり、戦争中の市民は、音がすれば、伏せたり遮蔽物に身を隠す。ソコに又仕掛けると言う冷徹なテロ。
冷静に考えれば、オレにだって解るんだ。

オヤジを拾いたかった。

確かにアランの言う通り、どれが誰の肉片、骨片か解かんない。でも集めたかったのだ。大切に思ってても、感謝の言葉をかけたコトのない恩人。戦友。初めての感情だ。
本当に"親"と認識していたのかも…

『お前がいなけりゃ、今頃私は国に帰ってたのに…お前が…お前さえいなきゃ…』
思い出してしまった。1番身近な、一番嫌いなオトナの事を…


《1950年〜昔の事》
気がついたら、父方のお祖母ちゃんの家で暮らしていた。断片的に覚えているのは、鬼の様な顔の女の人と、いつも笑ってる男の顔。
気が付いた時には、お祖母ちゃんと2人きり。
「母ちゃん! 会社に金を払ってきたの?甘やかしちゃダメだよ!」
オレにとって叔母に当たる2人が、怒鳴っている。どうも会社の金ネコババして、トンズラしてるのは、オレの父らしい。

《13へ続く》

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