被写界深度 11

《1988年 5月》
ちょっと栄えてる街に、オヤジとアランの3人で出てきた。写真屋の暗室を、借りるため。
正規軍の暗室使わせてもらった時、イヤな監視の目があったので、オヤジに紹介してもらって。午前中の半日アランと折半、アシスタントにオヤジ…豪華な顔ぶれだ。色気も何もあったもんじゃない。

「色気〜欲しいのなら、5キロの塩で、一晩年頃の女買えるよ。」
「前にも言っただろ?アラン。オレは、そのためだけに雇っても、起たないんだ。相手がある程度解らないと出来ないんだ。」
「めーんどくさいオスです。」

日本にいる時とかも、風俗でイッタ試しが無い。最初付き合いで行った時に、イケなかった。何で?と思い、10回くらい通った。
たった1回だけ。部屋入るなりKissして、抱きついて来て、めっちゃ笑顔の娘の時だけイケた。
あーつまりそうゆう事ねと、ホッとして?納得した。
しかし…日本だと、スーパーで売ってる、味も素っ気もない精製塩5キロで……

「ムダ話してね~で、ちゃっちゃと手を動かす!何で俺が印画紙に焼いてるんだよ。」
「オヤジがやりたそうだったし、手動かして、細かいもんみてりゃ、ボケてるひまないでしょ。」
「ソーね~オイラも、そ~思うザンス。おいらとカミカゼの優しさにー」

キャハキャハと、不思議な半日の暗闇の中。不思議な連帯感。
「私は、このバカが長玉持つまで見ていたい。ケド、来週契約終了だ。平和な国満喫したら、また何処かの戦場に行くんだろうけどな。アラン、コイツ好きならよく見てやってくれ。」
うっさいよ!小言オヤジ。俺の事なんか気にすんなよ。長玉使おうなんて思ったら、オレは用なしだ。近くで撮るアングルが、ウケてるのに。

郵便局で、出版社にフィルムを送って、出来の良さげなのを、コピーして、ファックスする。さあメシメシ!温かいもん食うべ!

「兵隊さん!靴磨くよ!」
道端には、花売りやら、靴磨きやら子供達が働いている。
「No!」
と、言わないとずーっとぶら下がってくる。ん?オヤジ?

「土産変わりだ。ココにはもう来ないしな。」
「先に屋台に行ってるよ。」

アランが、靴磨きの男の子を見て、首をかしげながらオレについてくる。次の瞬間、襟首掴まれて道に倒された。
「watch out!! head down!!」
あ、マジ焦ってる。アランが母国語使って…………

ズズッ ぼっぱーーーん!

《12へ続く》

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