被写界深度 08

《07から》
「オー!カミカゼー。まーた あえったにょー。アホ!!」

頭の痛い日本語……
コイツもいるのかよ!
わざわざ、日本語で喋るな。英語と仏語は話せるって。アラン!あだ名は…

「オイラの事ねターキーと呼ぶべきでゴザル。まーたーKaraokeいくねー。
きょうとーにいるとっきゃー!大竹とよぶべきねん!♬」

頭痛い………

「どうした?何処か痛い?ネギどこ?日本人オシリにネギ入れとかないと、病気になるアルヨ〜」
「ああ、分かった分かった〜!久しぶり!よろしくお願いします!」
両手で日本語バカの口を塞ぐ。いい加減にしないと、ずーっと喋ってそうだから…

海兵隊員あがりの元傭兵。
どう見ても青い目の白人なのに、日本、日本語、日本人に興味が有るらしい。前回逢った時は、俺と一緒に日本に来て、俺の部屋で生活しながら、街歩きして、寄席行って、歌舞伎見て、ラッシュの電車に乗り、銭湯に海パンで入浴して怒られ……日本が本当に好きらしい。
オレの修羅場の先輩だ。仕事場で、自然に笑顔で助けてくれる。あんたの方が、スピリッツは日本人だって。

"せいれーつ"
ん?
画になりそうな子を、見つけた!
オレはフリーだから、遠目から風景写真風に撮ったって意味がない。この子に取り憑こう。
アラン……いや、ターキーもモデルを見つけたようだ。
ホント 一つ目の死神
忌み嫌われるのは、慣れっこだ。
オヤジはjeepの荷台に、簡単な足場組んで、若いのに長玉で撮らせるらしい。1キロ位なら、アサルトライフルでも届くんだから、そこも安全地帯じゃ無いのにな。この若いのも、初陣なんだろう。落ち着かない素振りだ。

リスクの少ない最前線などない。
ここは、ついさっき迄戦場だった、ゲリラが居た村の跡。生き残りを捕まえ捕虜にしたり、情報が無いか探す、後方支援。
死体の処理も任務だ。案の定気持ちが悪くなってる新兵達。
へっ?
オレが取り憑いたこの子…キモ据わってる。淡々と眉一つ動かさない。歳は多分17歳だろう。

ガサガサ!
オレと新兵は、音のする方を見る。小さめの影は、その体には似合わないハンドガンを、新兵にむけている。
新兵は、着剣されているアサルトライフルを、その影に向けて突く。ハッとした顔に
なった。そこまでは、身体が勝手に動いたのだろう。左胸を正確に突いている。突いた相手は、自分より背の低い男の子と解って、我に返る。

ガチャ

小さな手ににぎられていた、ガバメントが主を無くして、地面に落ちる。
新兵の口が歪みながら空いて、言葉にならない声が…同時に、人差し指が動き、空薬莢が一定のリズムで、排出される。瞳から涙が…
オレは、その一部始終を、片目で見てベストポジションにいた。動いているのは、左手の親指と人差し指、右手でピント合わせ。
新兵もオレも、それが仕事。

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