被写体深度 19

《2020年 4月 山茶花》

「どうも〜。今度さ寄席、見に来てよ。ふたつめになってからから、一度も来てないじゃないの。店なんて、看板出してさ~…」

青い目の噺家さん。いつものように、「店長見習い」のミヤにちょっかい出している。
この人"春風亭あっ!乱"なんて、ふざけた名前貰って、喜んでる変わりアメリカ人。黙ってスーツ着てれば、モデルと思えるルックスしてるのに、いつも和服の変な外人さん。

親と気持ちが通じた今でも、ミサキ先輩とはお友達として、図書館や山茶花で遊んでいる。今日は学校の図書室に出勤前に、ムサシチョコパを征服中。
気があう、ミサキ先輩のボケ、ここのムサシのボリューム、珈琲の透明感は変わらない。返すために持ってきた写真集を、ペラペラ見ている。

「作風〜っていうよりもこの人、性格が変わってしまった、と思うのです。たぶん、この土地が好きになったのでは?あと、編集別人って、もうこの世には居ないとか?」
ミサキ先輩が、妙に優しい顔で微笑んで私を見てる。
「な なに?見てる?」
「ふーん。似た様な感想だったもので。ヤッパリ気が合うな~と思ってさ。」
などとジャれていたら、蒼い眼の噺家さんが、懐かしいモノ見るような表情で、こっちを見てる。訝しげに視線を返したら、それに気が付いたのだろう、何時もの"へにゃへにゃ"な表情に戻った。

「オースイマセン〜お二人が余りにもキュートだったので、見惚れて……ミヤ〜浮気してスイマセン。私のすべては君のモノです。」
「アーン?別に私は、あんたの財布が好きなだけ。常連さんの話に付き合ってるだけ。」

って言いながら、ミヤさんハンカチを、噺家さんに渡してる?目尻をチョイチョイ触った後…
「ブビいーぶっ!ぶっ!」
「あっ バカ!鼻カムな!ボケ!」
「へっへ~芸が上手くな〜りました。ミヤの匂いのするハンカチ……もったいない事しーません。ふかーーく嗅いで、匂いがなくなった頃、洗濯してかえしまーす。」
「アホ!ボケ!カス!とっとと返せ!」

アハハ、あの二人面白い!
でも、あの表情とハンカチ?
あれれ?おや?

カランコロン
「はーいミヤ!1ヶ月ぶり~レシピノート第29号もってきたぞ。28号の何か作れ。でノート返せ。」

ダレダレ?細みの美人さんと、背の高いイケメンさん。ん?イケメンさんの肩に…

「ふぁーいみやー!にーっにーっ」
「はーい!かおちゃん!トキ〜♥……あ…タマバー」
「テメー"姉弟子"をババー呼ばわりとは!マスタ〜が基礎しか教えずにあの世に逝っちまってよ~、仕方無しに休み潰して来てやってんだ。先生と呼べ!」

あーだから「見習い」なのか。
イケメンさんが、優しい目でなだめてますね。

「まあまあ、タマ。ここ無くなると、平日の私の食事が困るんだし。"思い出の店"だろ?ここなきゃ、今の私達無いじゃない。」
「まあまあ、たまァ〜こ…ん〜……わっ……いーっ!」

アハハ!かわいい〜あの子。
パパのマネ、必死にしてる。ああやって私も、母国語覚えたんだろうな。全く記憶の無い時代だけど、《天使の時間》私にもあったんだよね。誰からも好かれる、無邪気な時間。

目の前のミサキ先輩。戸籍上性別は男。見た目も可愛い系の男の子。でも、内面は乙女で、恋愛対象は、女の子。
複雑な人ですが、体の工事してないし、男なんだよねー。ぱっと見好みだし。
ボール…投げて見ますか。
「良いな~あんな子供。どう?」
「良いかもね〜」

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