被写体深度 16

《15より》

「ああ。ひねれば水が出るし、青い火も直ぐ点く。」

キラキラした目で、私を見てる。よく見れば可愛い男の子?小学校3、4年生位か…AK抱いて無きゃ、即席牢に入れられて無きゃ、頭グリグリして遊び倒したくなる様な…

「良いなー。洗濯も箱の中に入れれば、全部やってくれるって本当か?箱の中から"チーン"って音すると、食べ物が出てくるって、本当か?学校って所に行くと、ご飯が出て、かしこくなって、トモダチいっぱいも本当か?」

反対に聞きたい。そんなに不自由な子供って、ありか?

「良く知ってるな。」
「行きたい。歩いたら何ヶ月で行ける?」

ハハハ
無邪気な子供じゃないか。こんな子に…それオモチャじゃないぞ。引き金引けば、人殺せるんだぞ。

「カメラマン。笑ってるとは、余裕だな。正規軍の写真撮ってれば良いモノを…もうすぐ開放する。カメラもフィルムも返してやる。お前は奴らをおびき寄せる為に、街中で派手に拉致したんだから。」

??髭面の、狼の様な目をした男だ

「オレたちの小隊は、10人。おびき寄せるのは、先鋒の外人部隊1つと、正規軍の大隊1つだ。
ココは、石炭採掘場だった山だ。坑道に水がタップリ溜まってる。山津波……起こして潰す。大事な隊が2つ無くなれば、話し合いになるだろう。」

「外人部隊?」
「正規軍についてたのに知らなかったのか?先鋒に金で雇った余所者使ってたんだ。こいつ等が、強い上にやりたい放題で……ああ、コイツに坑道案内させる…悪かった。サラバだ。」

だから、本当の最前線に行けなかったのか。まあ、ありがちな話しでもある。できる奴を、金で買った方が安い。こと戦闘員なら尚更。
あいつ等…引き寄せるだけ引き寄せて爆破なら……この子もか?

「なあ。君も小隊の人数の一人か?」
スゴクふてくされて、こっちを見てにらんでいる。
「無駄口叩くなオッサン。オレ戻らなきゃ行けないんだから。」
「さっき言ってたろ?オレの国来たいって。このまま一緒に行こうぜ。オレ街中案内してやる。」
「馬鹿言うな。オレは母ちゃんと姉ちゃんに誓ったんだ。オレの村は戦闘地区でも、ゲリラの駐屯地でも無いのに、外人部隊に襲われて、女は犯されて、男も散々リンチされてから殺されたんだ。あいつ等人間じゃない。だから、殺る。」

何も言えなくなった。
この場所での、この状況下での、この子の正義だ。
「なあ、生き延びるのも悪い事じゃ無いんだぞ。どんなになっても、生き延びてくれ。死んでいったものが気にかかるのは、親しい人の幸せだ。復讐じゃない。」
静かな笑顔で握手を求めてきた。
「そうかもしれないな。さっきの男、小隊長で、オレの父だ。もう、家族離れ離れは嫌なんだ。ありがとう。じゃ」
坑道の暗闇に、靴音が消えてゆく。
子供を無理やり大人にしてしまう。戦争の弊害の1つだ。



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