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[エッセイお仕事小説]銀座東洋物語。

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ホテルは幸せな仕事。二十代半ばで転職し続けたどり着いたホテルは働く人も泊まる人も幸せなホテルだった。著者が経験した仕事をエッセンスに、小説風にまとめました。昭和の仕事の仕方はこん…
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#仕事

銀座東洋物語。10(ドッペルゲンガー)の⑤

銀座東洋物語。10(ドッペルゲンガー)の⑤

 「吉田くんがね・・・」

 ホテルは幸せな仕事だ。お客様の笑顔のために働く。これほど清くて楽しい仕事はないだろう。残念なのは、その精神を間違った方向でゲストに利用されてしまうこと。

 清雅様に部屋の鍵を渡さない作戦の後、部屋の中にあるはずの未払いの帽子を身につけているところを撮影されていたため、マネージャーが部屋をチェックした。すると、何も聞かされていなかったスタッフが直接奥様から連絡をもらい

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銀座東洋物語。4(忘れられない面接)

銀座東洋物語。4(忘れられない面接)

 そんなこんながあって、私の就職活動の方向性は当初のものから180℃変換した。というより、帰国して二年近くがたち、そろそろ本気で正社員のポジションにつかなければと焦ったところに、例のごとく、Japan Timesの求人欄に銀座東洋の求人欄が舞い降りたのだった。
 あの頃の求人広告といえば、ラフなのはフォントも変えることなく、新聞記事と同様にすらりと書かれているものがほとんどで、数字の幅寄せもなくア

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