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一筆書きショートショート

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とっても短く、すぐ読める変な話たちです。
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メイローラーメン

メイローラーメン

僕は久しぶりに一人旅をしている。

一人旅は何処に行くか何をするか、全て自分のタイミングで決められて楽だ。

ここはまだ来たことのない未開の地。

通りすがりの白髪で白髭をなびかせているお爺さんに聞いてみた。

「ここのおすすめスポットはどこですか?」

「そうじゃな。特にここに行った方がいいぞという場所はない。だが逆に、ここだけはやめとけ、という場所ならある。」

「なんていう場所ですか?」

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失敗作

失敗作

「失敗作になってはいけないよ。」
よく父が僕に言った。
小さい頃から繰り返しそう言っていた。

何をもって『失敗作』なのか。
歳を重ねるにつれてだんだんとその意味が分かってきた。

僕たちの生きるこの世界ではあるルールがある。

それは、20歳になると両親は他人となり、自立して生きなければならないということ。

20歳になったその瞬間から、僕は両親のことを忘れる。両親も僕のことを忘れる。

どうい

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手を繋ぎたくなるウイルス

手を繋ぎたくなるウイルス

いつの間にか僕の両手は2人の人と手を繋いでいた。

ある瞬間から、猛烈に本能から「目の前の人と手を繋ぎたい」という欲に駆られた。

そしてその欲は感染症のように広まり、今では見える範囲でも何百人もの人が手を繋いでいる。

僕の両隣の人の隣の人も、そのまた隣の人も、キリの無い程の人々が手を繋いで一体となっている。

痒くなった頬を掻こうとすると隣人の手も一緒に動かさなければならない。

トイレとかほ

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クリスマスの発明家

クリスマスの発明家

今年もまた、この季節がやってきた。

僕ら家族の一大イベント、泣く子も黙るクリスマスである。

僕の子供は毎年、お金では買えない要求を“サンタさんへの手紙”として書いていた。

例えば、“時間を倍にする装置が欲しい”という願いがあった。

倍にはならないが、睡眠時間を活動時間へ変換できればいいと考えた。

そして、“没入枕”というものを開発した。

その枕を使えば完全に寝ている間、夢の中で自分を自

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旅する地球

旅する地球

ある朝目を覚ますと、この世界には僕しか居なかった。

正確に言うと、置いて行かれた。
というより、僕がそれを望んでいたのだ。

もうすぐ地球が寿命を迎えられるということで、人類は地球脱出計画を5年前から進めていた。

各個人に対して、紙が渡された。
そこには、
「脱出の意思はありますか。YES or NO」
と書かれていた。

どうやら今日のこの状況を見る限り、僕以外はYESを選んだようだ。

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高層ビルから飛び降りて

高層ビルから飛び降りて

別に死にたいと思ったわけじゃない。

いつの間にか辿り着いた場所がここだっただけだ。

僕は今、自分の会社の入っている高層ビルの屋上の淵に立っている。

ここから飛び降りて、終わり。

あらゆるものから解放される。

恐怖は一瞬。僕は目を閉じて飛び降りた。

すごい勢いで落ちていく。目を開けるとガラス張りのビルに僕が写っていた。

このままぐんぐん落ちる。それで終わり。

しかし次の瞬間から、ビル

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予定決められ人間

予定決められ人間

朝。
手帳を開くと書き覚えのない予定がつらつらと書かれている。

11/7

9時:カフェに行く
12時:ランチを友達と食べる
15時:昼寝する
18時:ディナーを1人で食べる
21時:発狂する

発狂?

毎回思うけど誰が書いてるのこれ?

そして毎度、この予定とは違うことをしてやろうと試みる。

まず家から出なければ、予定通りには行かない。

8時50分。まだ家にいる。よし、この調子でいけば予

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吸血鬼村

吸血鬼村

今日もこの村に人間が現れた。

またか。

最近人間たちは“人工太陽”を開発し、吸血鬼村を訪れては、人工太陽を取付け、村から吸血鬼を絶滅させようとしている。

今までに幾つもの村が絶滅させられてきた。

以前も僕が住むこの村へ人間がやってきて人工太陽を設置しようとしたが、なんとか村のみんなでそれを防いだ。

人間たちはいつも、笑いながらやってくる。

退屈な日々に抗うための、刺激を享受する1つの手

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労働人間

労働人間

21XX年

僕は畑で人間を育てている。

昔はAIブームで労働を人工知能付きの機械などにさせていたが、時代が一巡して、やはり人間が持つ温かみにも需要が多くなってきた。

そこで国を挙げて『労働用の人間を育てよう』という計画が立てられ、瞬く間に実行された。

中学校の道徳の授業では、『人間には2種類います。“好きなことをして暮らせる人間”と“ただ労働のみをする人間”です。』というようなことを繰り返

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ゴミはゴミ箱に

ゴミはゴミ箱に

“ゴミはゴミ箱に”というゴミ箱が売られ始めたのはつい最近のことだ。

その名の通りすぎる商品名に意表を突かれた面白いもの好きな人たちはこぞってこのゴミ箱を買っていた。

もちろんその中の1人は僕という訳だ。

ゴミ箱のデザインはシンプルで僕もこのゴミ箱を買った。

このゴミ箱には注意点が2つあった。

ひとつは、このゴミ箱に捨てたものはもう二度と取り戻せないということ。

ひとつは、1日に最低一回

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弁当の中の人

弁当の中の人

お昼休み、母が作ってくれた弁当を開ける。

そこにはいつも通りのご飯やお菜が入っている•••?

はずだったが普段とは異なる点がひとつだけあった。

弁当の中の卵焼きに虫が齧り付いたような穴がある。

はて、何者がやったのか?

その答えはすぐに分かった。

小人だ。

本当に実在するとは思わなかったが、小人がまさに今、卵焼きを食している。

しかも赤ん坊のような見た目をしている。

はて、どこか

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想い出屋

想い出屋

僕に両親はいない。

僕が小さい頃、事故で亡くなったらしい。

その後僕は祖父母に引き取られ育てられてきた。だから全く両親と話したことがない。

両親が僕に残したのは、この命と僕の名前だけだ。

「よる、朝ごはんできたよ。」

まだ眠い土曜日の7時。おばあちゃんの声が鼓膜に優しくノックする。

はーい、と返事をして起き上がり、食卓でご飯を食べる。

ほかほかの白ごはんとお味噌汁と目玉焼き。

いつ

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血液空気型

血液空気型

30XX年

人間は多様化し、様々な人種が現れた。

特に血液型の幅が一気に広がった。

私はその一つ一つの特徴を記録する仕事を行っている。

未だ確認されていない血液型もあるらしい。

最近発見した新しい血液型を紹介しよう。

まずは、“血液空気型”だ。
血管に血の代わりに空気が流れている。
1人だけよく宙に浮いてしまう人がおり、「あれは新種の血液型ではないか」との通報があったのだ。
そして血液

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人生最後の日

人生最後の日

どうやら明日が人生最後の日らしい。

最近、テレビをつけるとどのチャンネルもその話題で持ちきりだった。

人生最後の日をどのように過ごすか。

僕もそれを考えていた。

しかし急に過ごし方を変えるのも面倒くさい。

いつも通りの日常を過ごして、今までの幸せだったことを思い出しながら最後の時を待とう。

そう決めて眠りについた。

翌日。

爆発したのかと思うくらい大きなボリュームのアラームが部屋に

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