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呵責液
2019年11月14日 22:01
赤ん坊が、こちらを見ている。私の目の前に、ひとつの不可思議な像が見える。聖母マリア像を模したような、加えて観音か如来を足したような、古今東西の地域で崇められてきた地母神のような、表情の妊婦の像。頭の髪先から、脚の爪先に至るまで、全身の全てが硝子で造られている。その妊婦は、阿修羅像のように、手が二本に収まっていなかった。一対の手は、それこそ天に人々の祈りを伝える聖母のように、嫋やかな指を
2019年11月14日 19:51
点翠職人の藍晶はその名を、かつて絹が通った道で繋がれている諸国まで轟かせるほどの、腕前の持ち主だった。本物の鴗(かわせみ)の羽を、部品となる枠に糊で貼り付けて、一枚一枚花弁を作る。それから出来た見事な牡丹や蓮の花飾りは、本当に翡翠を削いで作った花弁から、出来たようだった。硬質な石の色を帯びていながらも、その光沢は生き物の熱が通った滑らかさがあり、筆舌に尽くし難い。変わった材料の点翠仕上げて
2019年10月18日 13:01
深海后、全ての生き物の始まり。この世全ての命の母。鯨のような巨体を擡げ、深海の薄い砂の上に身を明け渡して居る。暗い海底の活火山のように、ぴくりとも動かずに長い長い眠りについている。この砂も、元々は深海后の古い皮膚の角質が粉々になった屑だった。水母は、深海后の吐いた息から生まれ、原始的な海藻類は髪から零れ落ちて生まれた。魚は、深海后から剥がれ落ちた古い鱗が命を経て、海の哺乳類達は、その魚が深