80○　1/19 書き下ろし「空中乱舞」

「空中乱舞」

頭上に三羽の鴉が飛んでいる
厚い曇と裏に隠れた青空が
等間隔で描かれる空に
精肉を混ぜているあの
粘着と不快さを合わせたような
ぬばりとした飛行を続けている
同じ場所を何度も
ぐるぐる　ぐるぐる
その光景を見つめている私に
牽制をかけているのか
それともただ腹を空かし
獲物を見定めているのか

反時計回りの円陣が
空中に残ってしまうほど
彼らはそこで羽を広げ続けている
そして
乱れ飛び拡散した！
見失った私は彼らがいた場所に
何も見えなくなった
焦げ付いた円陣も
したであろう会話も
生きた匂いも
ただそこに居た事実だけが
頭の中に取り残されただけのこと

＊＊＊

黄赤青(きせきせい)