見出し画像

クモ


ぼくがうまれたひ
ママがおしえてくれたこと
『ぼうやたち  おおきくなったら  じぶんのおうちをさがしにいくのよ   
もりもいいわ 
こうえんもいいわ   
とかいにいくなら あかりがたくさんともるところにするといいわ
たべるものにこまらないからね』

ぼくはきょうたびだつことにきめた
きょうだいにわかれをつげた

ぼくはとかいにむかった
もりのせいかつはゆったりしていて
たのしかったけど
しらないせかいをしりたかったんだ

びるがたちならぶ
ぼくは
さっそくすをはりはじめた
たけど かんせいするまえに
せいそういんがやってきてはたかれちやった
ぼくはよるまでまってみた
ビルからひとがいなくなった
ぼくはすをはりはじめた
りっばなすができた
『ゆっくりやすもう』
ぼくはふかいねむりについた

なんだかさわがしい
みみもとがさわがしい
ぼくがめをさますと
ぼくはほうきのさきにからまってた
せいそういんがほうきのさきをゴミばこに
おしこめようとしている
ぼくはあわててにげだした
いのちからがらにげだした
『とかいはためだ』
ぼくはとかいでのせいかつをあきらめて
すこしちいさなまちにやってきた
つかれていたけど
ぼくはがんばってすをはった
こんどはちいさないえのベランダに

ガラガラガラ
ベランダのまどがあいた
ろうじんはぼくにきづいた
いすにこしかけながらぼくにはなしかけてきた
『きのうまではいかなったな  どこから やってきたんだ?』
『むすこたちはとかいにいってしまって こんないなかはいやたとさ』
『おまえさんはどうだね? ここのくらしがあうといいがね』
そういってほんをめくりはじめた
ぼくはなんだかほっとして
ふかいねむりについた

おなかがすいてめがさめた
すをみわたすとちいさなむしが3びき
いとにからまっていた
これだけじゃおなかいっぱいにはならないけど
いいはじまりなきがした
ぼくはすをおおきくした
まどからもれるあかりで
おなかいっぱいになるだけのえさにありつけた
おじいさんはまいにち
ぼくにはなしかけた
すきなやきゅうチームがかってごきげんだとか
きんじょのいぬのなきごえがうるさいとか
スープをつくりすぎてきょうで3日目だとか
たわいもないひびのはなしだけど
ぼくはおじいさんのはなしをきくのがたのしかった

おじいさんがベランダにでてこなくなった
それから  しばらくして いえのまえにかんばんがたてられた
『このいえ うります』
あかりがもれなくなってむしたちもあつまらなくなってぼくのおなかはいつもはらぺこだけど
それでもぼくはこのいえにいたかった

がさがさがさ
『いえがうれたんだ  はやく  そうじして  くものすもとっぱらって』
おなかがすきすぎたぼくはうごけなかった
がさがさがさ
ゴミぶくろのなか
ぼくはゆっくりめをつむった
ながいあいだひとりきりでさみしかったんだ

やったとおじいさんのところにいけるきがして
ぼくはうれしかった

おしまい

#創作絵本ストーリー
#クモ
#蜘蛛
#都会
#田舎
#クモの巣
#厄介者
#老人
#孤独
#ひとり
#窓
#明かり
#公園
#虫
#餌
#死
#息子









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?