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とある外資系IT企業のPMが実践している顧客の声を聞く方法

こんにちは、外資系IT企業でプロダクトマネージャーをしています、ハヤカワです。
日々、Twitterでプロダクトマネージャーのノウハウや考え方などを発信しています。

先日このようなツイートをしたら、思ったよりも反応をいただいたので早速記事を書いてみました!

私が実際のお客様の声を聞いている方法は大きく6つあります。

1. 🌱 顧客の声を投票するコミュニティサイト
2.  🤝 ロイヤルカスタマーとの繋がり
3.  💡 パイロットによる製品検証
4. 👀 ユーザーリサーチ
5. 🗣 商談・顧客ミーティング
6. 💻 社内VoCシステム 

さっそく、それぞれ解説します!

1. 🌱 顧客の声を投票するコミュニティサイト

まずはじめにご紹介したいのは顧客の声を直接集めることができるコミュニティサイトです。

IdeaExchange (アイデアエクスチェンジ)と呼んでいるこのサイトでは、既存のお客様がいつでもログインして、世界中のどなたでも機能改善要望やアイデアを投稿、投票することができます。

たとえば、こちらのお客様が6ヶ月前に投稿した機能アイデア

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Dynamic Forms for Case Standard Object

これはケースという標準オブジェクトにDynamic Formsという製品を対応させてほしい、という機能追加要望です。

これには、なんと12,500ポイント、58コメントがすでにつけられています。このように実際のお客様が抱えている悩みをアイデアとして、このサイトに投稿していただくことで、他のお客様は共感したアイデアに👍したり、コメントすることができます。

デモ動画もあるので興味ある方はご覧ください!

この仕組みを通じて定期的にチェックすることで、お客様の声を拾い上げて、年3回に行うメジャーバージョンアップでの機能改善、将来のロードマップに反映させるなど製品開発に役立てております。

もちろん、プロダクトマネジメントの世界では、機能要望を直接聞くのはNGである、という大原則があります。もちろん、弊社でもこれらの要望をそのまま鵜呑みで作るのではなく、このアイデアはあくまでもきっかけにして、リサーチや仮説検証を通して製品づくりを行っています。

いずれにせよ、お客様の成功を第一と考えている弊社では、世界中のお客様の声を直接伺えるコミュニティサイトを、透明性をもってオープンにし、必ず耳を傾けるというこの姿勢こそが、イノベーションを支えていると考えています。

2. 🤝ロイヤルカスタマーとの繋がり

次に私が普段聞いている顧客の声が、ロイヤルカスタマーの声です。分かりやすくロイヤルカスタマーと表現しましたが、実際は全ての既存顧客の声ということができます。その中でも特に何かしらのイベントでの登壇者や、製品資格の保持者、事例企業やコミュニティメンバーなど、ありがたい事に直接声を上げていただける多くのお客様がこれにあたります。硬い表現をしましたが、

アーリーアダプターや、パイオニア、トレイルブレイザー、パイロットカスタマー

という表現で社内では呼んでいます。

このような方々とは、最近はこのご時世なので回数は減ってしまいましたが、月や四半期単位でイベントやワークショップを開催し、出席していただいた際に直接お話を聞いたり、こちらも月や四半期単位で定期的に利用データに基づいてアンケートをとったり、また相談会のようなミーティングを行って、悩まれていること、業務の課題、製品への要望など様々なお話を聞いています。

以前は、本社サンフランシスコの開発チームを日本に呼んで、お客様のオフィスを行脚して、訪問することでお話を伺ったりしました。

このような方々とは、イベント以外でもメールやコミュニケーションツールを通じて定期的に会話させていただいています。

3. 💡パイロットによる製品検証

3つ目は、パイロットを通じて顧客の声を聞く方法です。パイロットというのは

新製品や新機能を開発する過程で、社内検証を終えたあとに、特定の一部の顧客の新機能を試していただくことで、バグを特定し、想定利用イメージとのギャップを発見し、不足機能をロードマップの参考にし、将来への機能要望を集め、リリース前に製品検証を行うプログラム

のことです。

ほぼすべての機能はパイロットを通して、リリース前の3〜6ヶ月間ほどで数社のお客様に試していただきます。このパイロットプログラムの中で、私はプロダクトマネージャーとして1機能あたり2週間に1回ほどのペースでお客様とMTGを行っています。

多いときには、3,4機能、5-7社ほどのお客様が並行してパイロットをすることもあるので、毎週2,3社とパイロットに関してMTGをすることがあります。

パイロットのMTGの場では、利用開始前のキックオフMTGで、製品を通じて実現したいことや、業務課題、ゴールを話し合います。そのうえで、製品利用方法を説明し、ドキュメントを共有しつつ、実際にその場で設定や操作を行っていただきます。その中で、不明確なポイントや、改善要望、操作に躓いた部分、今後やりたいことなどを伺って、それらをリストにまとめて、本社開発チームに共有しています。
一見カスタマーサクセスのように思えますが、その一面はあるもののPMとしての目的はより良い製品を作るため顧客の声の収集です。

4. 👀ユーザーリサーチ/UXリサーチ

こちらもパイロットと類似した製品開発プロセスの一環で、ローンチ前に顧客に製品や機能を見てもらい、UIやUXの参考や製品のギャップを特定するために声を拾い上げる仕組みです。

基本的には本社のPMとリサーチャーが行うので、私自身が直接関わることは正直少ないですが、それでも日本のお客様の声を聞くことも行っています。その場合は、本社のUXリサーチャーと、私と日本のお客様でミーティングを行い、製品デモやプロトタイプを体験していただいて、その時の製品利用の導線や、動き、考え、頭の中を開示していただいて、ヒアリングします。

ここでは、PMは基本的には一切口出しをせずに、リサーチャーがフレームワークに沿って聞くのですが、日本のお客様の場合は私が間に入り通訳になったりします。

5. 🗣商談・顧客ミーティング

製品開発プロセス以外でも顧客と話す環境を作っています。それは商談や顧客との一般的なミーティングの場です。

私は、AI製品をPMとして担当していることもあり、AIそのものやAI製品ついて広く説明するために社内の営業チームから頻繁に商談への出席を依頼してもらいます。もちろん、全ての商談に同席するのは不可能なので、クライテリアを設けて、特定の商談にはできる限り出席することにしています。その場では、製品の魅力や価値、ビジョンやロードマップをご説明するのですが、そのミーティングの中で伺うお客様の声はとても貴重だと感じています。

多くの場合、一部の製品を利用していただいている既存顧客なのですが、製品に関する懸念点や、AIそのものに対する興味、課題意識、不安、思い、期待など様々な声を聞くことができます。ここまでの1~5の場では聞けなかった、よりビジネス的で、抽象的で、感情的な声を聞けるのもこの商談の場なのではないでしょうか。

よくPMは営業ではないので、社内にこもって製品開発に従事しがちかもしれませんが、私は実際に自分たちが作っている製品の価値を説明して売る人 (=営業)、そこに何かしらの期待をして買っていただける人 (=お客様)の声を聞かなければ、良い製品を作ることができないと思っています。

6. 💻社内VoCシステム

こちらはお客様の声を"直接"聞く仕組みでは有りませんが一応紹介します。それが、社内からの顧客の声 (Voice of customers)を拾い上げる仕組みです。

この仕組みは全世界共通で、営業系の社員が実際にお客様から聞いた機能改善要望を、登録することができる仕組みです。詳細はお伝えすることができませんが、一つの要望が世界中でどれほど求められているのか、これが無いとどのくらいお客様の業務に影響を与えるのかを数値化して、定量的、データドリブンで意思決定を行い、開発に反映させます。

プロダクトマネージャーは、自身の担当する製品のVoCを定期的にチェックし、作る理由、作らない理由を考え、優先順位付けを行い、ロードマップに反映させていきます。

一週間の時間の使い方

以上が私が日常行っている顧客の声を聞くさまざまな取り組みでした。もちろん、全てを毎日行うことは難しいと思います。私自身は、本社に開発チームがいるので、直接エンジニアリングリソースを持っているわけではないがゆえに、顧客の声を聞くことにリソースを集中することができています。

商談・顧客MTGはだいたい週2,3回ほど、要望に応じて不定期で行っています。パイロットプログラムは現在は4機能5社ほどでやっているので、隔週MTGだとして、1ヶ月あたり5-10回ほど週に1, 2回ほどパイロット顧客とMTGをしています。

それに加えて、月や四半期単位でのUXリサーチや顧客向けイベントがあるので、おおよそですが、1ヶ月の間に10-15回ほど、週に2から4回ほど顧客MTGをしています。もちろんそれ以外にもメールやSlackでのやりとりを入れるとほぼ毎日エンドユーザーであるお客様とコミュニケーションをとっていると、振り返ってみても言えると思います。

実際、4月は13回、5月はGWがあったので8回、6月は10回ほどお客様とMTGをしていました。

割合としては、パイロット3割、顧客MTG3割、ロイヤルカスタマー2割、コミュニティサイトやVoCシステムで1割、ユーザーリサーチで1割みたいな形です。

さいごに

プロダクトマネージャーは顧客と話すことが一番大事だと思っています。名著「ビルドトラップ」やYouTube チャンネル Product Schoolのセミナー、先日行われた日本CPO協会のイベントでも「PMは顧客と話すべき」や「PM、外に出なさすぎ問題」が話題に上がることがあります。

社内のステークホルダーとのMTGや製品そのものと向き合うことも大事だと思いますが、外に出て顧客と話す時間を今よりも1割増やしてみる、業務の何割かを顧客との会話につかうなど、意識してみると良いのではないかと思いました。

他にもユーザーインタビューの方法や分析方法についてnoteを書いているのでチェックしてみてください!

さいごに、この記事が良かったと思う方は、ぜひnoteのスキをお願いします!

また、普段からプロダクトマネジメントについて、学びながら発信しているので、Twitterのフォローもぜひお願いします!



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