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わたしの本棚100夜~「愛する源氏物語」

 コロナウイルスに慣れてしまって危機感が少なくなったけれど、大阪を始め関西地方大変な状況です。大阪府に16ある「三次救急病院」のうち、2か所がコロナ患者受け入れで、他の病気の患者さん受け入れやめるというニュース。幸い、気候が良くなり、ワクチン接種も浸透しだし始めましたが、変異型の猛威、とても怖いです。

 この春から、少し学ぼうと思って始めた、源氏物語の和歌を読んでいくのも、今日、6首終わりました。そのきっかけを作ってくださった本です。文庫本の値段は2007年の初版の値段です。

☆「愛する源氏物語」俵万智著 文春文庫 533円+税

 源氏物語には795首の和歌が登場します。ここぞ、というときの和歌は恋のゆくえを左右したり、個々の人物の心の叫びを表しています。

 各章ごとに、俵万智さんが、エッセイで概略を述べ、そのうちの数首の和歌を万智訳でよみといてくれます。口語訳で、感情がわかりやすいです。

「源氏物語」を現代語訳した訳者のなかでも、瀬戸内寂聴さんは和歌は五行詩で訳し、与謝野晶子にいたっては一切手をつけなかったそうです。谷崎潤一郎氏は前後の文章のつながりで和歌は考えろと詳しくは訳さず、歌人の窪田空穂氏はかなり詳しく訳し、円地文子さんは左ページに小さく意味は記されも引歌や修辞などの言及は一切なかったそうです。歴代の訳者の違いなども書いてくれており、わかりやすい文章と万智流の口語訳で、読みやすいです。

 源氏物語に出てくる好きな姫君は、読む年齢によって好みが変わりました。学生のころは「夕顔」のはかなさが好きでしたが、働くようになって読むと「朧月夜」に魅かれ、子どもができた今は「明石の君」が愛しいです。

 万智さんが書いているのですが、和歌としては和泉式部日記の和歌の方が優れているけれど、数が多く、その章に出てくる女性になりきって詠んでいるのが素晴らしいと。「源氏物語」の女性はすべて紫式部の分身という説もあるそうだから、それだけ人間には多面性があると考えると、それもまた素敵な発見です。解説は東直子さんで、彼女もまた俵万智さん同様、紫式部が自分自身を投影させることのできる姫君たちの姿を描いていると。そして、数ある「源氏物語」の関連本のなかでも、「愛する源氏物語」はもっとも感情移入しやすい本ですと紹介されています。第14回紫式部賞受賞作品。

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