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わたしの本棚89夜~「推し、燃ゆ」

 画像は朝日新聞のasahi.comからダウンロードしました。今回、芥川賞受賞作であり、文藝春秋3月号を購入して、選評と一緒に読みました。

 面白かったです。アイドルとは違って、「推し」というもの。現代のオタク文化にも広がるような感じで、一気に読みました。わたし自身、「推し」がおらず、ここまで思える対象があるのは、ある面、うらやましく思いながら読み進めました。

☆「推し、燃ゆ」 宇佐見りん著 河出書房新社 1540円(税込み)

 実社会ではうだつのあがらない高校生のあかり。勉強もできず、忘れ物ばかり。通院歴もあります。上野真幸を推しているときだけ、輝いています。「あたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな」

 その真幸がファンを殴って、インターネットは炎上します。あかりは、SNSの世界では、「あかりさんのブログのファンです」と言われ、推し仲間からは慕われています。

 SNSの匿名性の怖さです。川上未映子の「夏物語」にもありましたが、SNSで明るく人気のある主婦が、実生活では田舎に帰り姑との生活苦を体験しなければならないという・・・。あかりの場合、寝たきりの祖母の介護を母と姉と三人でしており、その祖母が亡くなり、海外赴任していた父親は帰国します。押しグッズを買うために居酒屋でバイトしていたあかりは留年が決定し、高校中退まで追い込まれている実生活です。

 ブログは快調に更新を続け、SNSのファン間の交流ではあかりは慕われていましたが、実生活は全くうまくいきません。推しだけが、真幸を推しているときだけ、あかりは輝いていました。もはや推しは神です。

 真幸はあの事件で炎上し、今回の人気ファン投票では最下位でした。同棲報道まででます。そして、グループは解散し、真幸は引退すると言うのでした。最後のライブにすべてを捧げようとあかりは思うのですが・・・。

 SNSを通じて人と知り合うという現代の社会を活写しており、面白く読みました。そして、実生活とSNS上の人物のギャップの対比。女子高校生の生きづらい生活。推し文化。推しによって生きていることを実感するという現象。

 わたし自身、そんなに執着するアイドルや作家もなく、どこか諦観してしまうので、そこまで推しがいる、没頭できる人はある面、楽だろうな、とも思いながら、読みました。ラストのあかりの生きる姿勢には、切なさと逞しさと愛しさを感じながら・・。

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