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マンガ「ごくちゅう!」はなぜ面白いのか?|21世紀マンガスタディーズ

こんにちは。傑作マンガを分析・研究する「21世紀マンガスタディーズ」のお時間です。

本日取り上げるのは、こちらの作品!


「ごくちゅう!」

※第1話は上記サイトで無料で読めます(2021年5月10日時点)。ぜひご覧ください!

※本記事の分析対象は第1話のみです。


分析開始!


三葉 5月6日に公開されるや否や大きな反響を巻き起こした本作ですが。

清水 ふむ!

三葉 本記事では、【本作の魅力(= 一体なぜこれほどに面白いのだろう?)】を明らかにすべく分析してまいります!


【魅力①】「ゆるふわ日常系 × 獄中」というコンセプト


三葉 さて早速だけれど……まず何よりも、【ゆるふわ日常系 × 獄中】というコンセプトがいいよね。最高だよ!

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三葉 だってさ、監獄って日常の真逆にあるものだよ。それをくっつけてしまう……。まさに「混ぜるな危険」じゃん(笑)


清水 確かに(笑)

三葉 そこに驚きがある。新鮮味がある。俺たち読者は「おおっ!何だこれは(笑)」と興味を持たずにはいられない!


ストーリーテリングの巧さに注目しよう!


三葉 残念なことに……世の中には、<コンセプトは魅力的なのに、物語としてはいまいち>って作品も少なくないじゃない。

清水 ふむ。

三葉 読んでいて、「えー、そういう方向に進むのね……」「あっ、こんな感じかぁ」と残念になってきちゃう作品ね。

清水 まぁね。確かにそういう作品もある。

三葉 その点、本作はコンセプトのみならず、語り口もじつに巧みだと思うんだ。ここからは、本作の<ストーリーテリングの巧さ(= 物語としての巧さ)>に注目してみよう。


【魅力②】冒頭3ページの強烈なツカミ


<1>

三葉 まずさ、冒頭3ページが素晴らしいよね!

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清水 ほぉ。

三葉 というのも……多くの人はタイトルや表紙を見た瞬間に、「これは<日常系>作品だな」と感じたと思う。

清水 そうだね。


<2>

三葉 どこからそう感じたかというと、第1に「ごくちゅう!」というタイトルだよね。これがいかにも<日常系>っぽい。

清水 確かに。

三葉 なにしろ「らき☆すた」「けいおん!」「みなみけ」「ゆるゆり」などなど、<日常系>と呼ばれる作品群にはひらがな4文字程度のタイトルが多いからね。


三葉 ゆえに「ごくちゅう!」というタイトルの響きや字面から、俺たち読者は「ほぉ、<日常系>ですか」と感じるわけだ。


<3>

清水 絵柄の影響も大きいだろうね。

三葉 このデフォルメされたかわいい絵、特に頬の部分がちょっと出っ張った輪郭は、確かに<日常系>っぽいね。


<4>

三葉 それから、1ページ目がいかにも<日常系>だよね。

清水 1ページ目というと……「春!/それは始まりの季節!」「入園/入学/入社!!」「そして私の場合はー…」というモノローグが続くページだね。

三葉 うん。

清水 なるほど。<日常系>作品って、主人公が学校や会社に入るところから始まるものが多いもんね。

三葉 そうそう。

清水 例えば、「けいおん!」や「ごちうさ」がそうだね。

三葉 あと、「スロウスタート」もそうだったな。それから……うん。「NEW GAME!」は主人公の青葉がゲーム開発会社に入社するところから始まる。


<5>

三葉 というわけでさ。

清水 うん。

三葉 ①タイトル、②絵柄、③1ページ目の内容を通じて、俺たち読者はこう思うわけだ。「なるほど。これは<日常系>作品だな」と。

清水 ふむふむ。

三葉 ところがページをめくると……びっくり仰天!なんと、舞台は獄中でした(笑)

清水 ふふっ(笑)

三葉 この構成、上手いよねぇ。最高だよ。多くの読者は、<日常系>と獄中というギャップに驚き、続きが気になって仕方がない。「えっ、どういうこと?(笑)」「何だこれ?(笑)」と感じる。

清水 たった3ページで読者のハートをがっちり掴む強烈なツカミだね。


【魅力③】読者の感情をゆさぶる巧みな構成


三葉 さて、ここまでは<冒頭3ページの素晴らしさ>に注目してきたわけだけれど、無論それ以降も素晴らしいんだよ!

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清水 ふむ。

三葉 まずは、本作の構成をざっくり整理してみた。すなわち……

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三葉 ここでは、5ページ目以降の展開に注目してみよう。


<1>

三葉 まず、うららが雑居房に移るにあたって「同房の囚人と仲よくなれるだろうか」と緊張する場面。

清水 ふむ。

三葉 これ、つまりは「さぁ、この先どうなるのでしょう?うららは皆と仲よくなれるのでしょうか?」という<謎>が読者に提示されたわけだね。かくして読者は、「一体どうなるのだろう?」とストーリーに引き込まれる

清水 なるほど。


<2>

三葉 続いて、うららが雑居房に入った直後の場面。彼女は、副主人公3人と仲よくなろうとしてモノマネを披露する。

清水 ところがダメ、と。

三葉 そうだね。3人は不愛想、ニコリともしてくれない。

清水 ふむ。

三葉 多くの読者は、「まぁここは獄中だ。かわいそうだけれど、そう簡単には仲良くなれないだろうね」と肩をすくめたと思う。


<3>

清水 しかし……うららは諦めないんだよね。

三葉 そう!彼女は頑張ってモノマネを続ける。その健気な姿に、俺たち読者は心を動かされ、思わず「がんばれ!」と応援するようになる。

清水 ふむふむ。


<4>

三葉 すると……おや。

清水 3人の様子がどうもおかしい、と。

三葉 うん。単に不愛想ということではないようだ。俺たち読者は、「一体どういうことだ?」と興味を抱く

清水 なるほど。一段とストーリーに引き込まれるわけだね。


<5>

三葉 そして最後に真相が明かされる。おお!3人ともいい人そうじゃないか!いまやすっかりうららに感情移入した俺たち読者は、「うららちゃん、よかったね♥」と嬉しくなる。

清水 ふむふむ。

三葉 とまぁここまでご説明してきた通り、本作は読者の感情を揺さぶり、物語に引き込む構成になっている。ゆえに俺たちは途中で飽きることなく、最後まであっという間に読んでしまう。

清水 確かに。

三葉 これ、じつに巧いなぁと思うんだよ!


【魅力④】謎のキャラを登場させることで、読者の興味を惹きつけるテクニック


三葉 そういえばさ、うららの紹介欄に「№831」って書いてあるじゃん。これ、たぶん囚人番号だろうけれど、「831 = 野菜 = 大麻」だよね(笑)

清水 なるほど(笑)

三葉 つまり、罪状と囚人番号が紐づいている

清水 ふむ。

三葉 で、他の3人の紹介欄を見ると、まず夏川ひまりが「罪状:業務上横領罪」で「№510」。これは「強盗」かな。

清水 ふむふむ。

三葉 それから秋月柚木は「罪状:傷害罪」で「№315」。たぶん「サイコ」だよね(笑)

清水 ふふっ(笑)

三葉 そして、興味深いのは冬白華。彼女の罪状欄だけが「???」となっている。さらに囚人番号の「№81」ってのもピンと来ない

清水 なんだろう……「81 = ハイ」?覚醒剤かな?

三葉 ヤクザの言葉で「ハイ出し = 恐喝」ってのがあるから、それかもしれないね。

清水 ほぉ。

三葉 まぁ、いずれにしろはっきりしない

清水 うん。

三葉 加えて、彼女の刑期は「8年」。他の3人と比べて1人だけ明らかに長いんだよね。

清水 あー、本当だ。他の3人は「1年」「2年半」「2年」か。

三葉 つまりはこれ、<他のキャラとは違って、1人だけ謎に包まれたキャラを登場させることで、「彼女はどうして捕まったのだろう?」「『81』は何を指しているのだろう?」などと読者の興味を惹く>というテクニックだね。

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清水 他の3人とは違って、1人だけベールに包まれているからこそ気になるね。


【魅力⑤】いかにも<日常系>の主人公らしいポンコツっぷり


清水 俺がいいなと思ったのは、うららのポンコツ具合だな。

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三葉 ほぉ。

清水 うららは3人と仲よくなろうとしてモノマネを披露するじゃん。まずね、【初対面の人と仲よくなりたい → モノマネを披露する】というこの思考回路ね(笑)

三葉 確かにポンコツだ(笑)

清水 そして、うららは「わかめ」など4つのモノマネを披露するわけだけれど……やっていることは全部同じという(笑)

三葉 なるほど。「湯葉」のモノマネをする姿だけは描かれていないけれど、まぁ他の3つと同じなんだろうね(笑)

清水 そうそう(笑)まさにポンコツ。

三葉 確かに。

清水 このポンコツ感は、唯の「うんたん」を想起するよ。


三葉 あー、あの伝説の!(笑)

清水 いかにも<日常系>の主人公っぽくていいよね。


まとめ!


三葉 以上、【本作の魅力(= 一体なぜこれほどに面白いのだろう?)】を整理してきました。

清水 はい。

三葉 本作は、まず何よりもコンセプトがいい。しかし、それだけではない。ストーリーテリングも巧みである。ゆえに出オチになっていない。最後のページまでしっかり楽しめる。そして次話も読みたいと思う。


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三葉 いやぁ、すごいですね!



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(担当:三葉)

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