思い出・回想の内容がおかしい／捏造されている／ロクなものがない　～マンガ「邪神ちゃんドロップキック」の場合 #2

回想の中の邪神ちゃん「私に力があれば……！！」
回想の中の邪神ちゃん「ぴのは犠牲者だ！！ドラッグを憎め！！」
回想の中の邪神ちゃん「ここは任せて先に行けー！！」

マンガ「邪神ちゃんドロップキック」（第14巻）

◆概要

【思い出・回想の内容がおかしい／捏造されている／ロクなものがない】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。

◆事例研究

◇事例：マンガ「邪神ちゃんドロップキック」（第14巻）

▶1

本作の主人公は邪神ちゃん。

彼女は悪魔だが……いまは、ゆえあって人間界に滞在中。料理などの家事をする代わりに、ゆりね（人間、女子大生）の住むアパートに居候させてもらっている。

年末のある日、

・Step1：不用品をまとめたり、掃除機をかけたりと大掃除に精を出す邪神ちゃん。

・Step2：彼女はふと手を止めて「今年も残すところあとわずかになりましたの」。

邪神ちゃんは

・Step3：今年一年を振り返る。すなわち……①傷つき死んでしまった子供を抱きかかえる邪神ちゃん。彼女は涙を浮かべて「私に力があれば……！！」。あるいは、②半死半生のぴの（知人）を前に「ぴのは犠牲者だ！！ドラッグを憎め！！」と叫ぶ邪神ちゃん（どうやらぴのはオーバードーズで死にかけているらしい）。はたまた、③全身に矢が突き刺さった邪神ちゃん。彼女は格好よく言った「ここは任せて先に行けー！！」。

・Step4：邪神ちゃんは「いろいろなことがあったなぁ」と懐かしむ。

・Step5：だがしかし……私たち読者は知っている。そう、すべて捏造だ！これは邪神ちゃんの中二病的な妄想にすぎない。実際の邪神ちゃんの人生はこれほどドラマティックなものではない。パチンコを打てばあり金をすべて失い、血の涙を流して「過ちはもう繰り返しません」と誓うものの翌日にはリベンジせんとして再びホールを訪問、そして改めてコテンパンに敗北し、「食費まで使い込むってどういう了見よ！！」とゆりねに鉄拳制裁を受ける……そんなクズのような毎日の繰り返しだったはずだ！

▶2

「いろいろなことがあったなぁ」と懐かしむ邪神ちゃんだが……「お前、それ全部捏造じゃねぇか！（笑）」「捏造された回想の内容が中二病全開ってのが、いかにも邪神ちゃんだなぁ（笑）」「っていうか、唐突に捏造された回想シーンに入るな！『えっ。こんな出来事あったっけ？』と一瞬悩んじゃったじゃないか（笑）」と思わず噴き出してしまった読者は少なくないだろう。

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