「A(=真実)かB(=絶対にあり得ないこと)のどちらかだ」とわざわざ選択肢・候補を並べることで、「Aが正しい/Aしかない」と強調する ~映画「マネーボール」の場合
◆概要
【「A(=真実)かB(=絶対にあり得ないこと)のどちらかだ」とわざわざ選択肢・候補を並べることで、「Aが正しい/Aしかない」と強調する】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「マネーボール」
▶1
本作の主人公はビリー(男性40歳頃)。
彼は、プロ野球チーム「アスレチックス」のGM(=球団運営の責任者)である。
ビリーはいま、
・Step1:たくさんのスカウトマンとともに、「来期に向けてどの選手を獲得すべきか」「どの選手をどのポジションに付けるべきか」といったことを話し合っている。
・Step2:スカウトマンたちはあれこれ提案する。
・Step3:しかしビリーは片っ端から拒否。そんなチーム編成じゃ優勝できっこない!
やがて、
・Step4:スカウトマンたちは苛立ち始めた。俺たちの経験や直感を無視する気か!?
・Step5:険悪なムードになる。
・Step6:間もなく、1人のスカウトマンがその場をとりなすべく仲間たちに言った「皆、思い出してくれ。ボスはビリーだ。彼に考えを変えさせられるのはオーナーか、神だけさ」「我々は提案する係。決めるのは彼の仕事だ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「彼に考えを変えさせられるのはオーナーか、神だけさ」というスカウトマンのセリフである。
スカウトマンが言いたいのは「彼に考えを変えさせられるのはオーナーだけさ = オーナーではないわれわれがいくら言っても考えを変えさせることはできない」ということだが――しかし、ストレートにそう言ってしまっては何の芸もない。
そこで【「A(=真実)かB(=絶対にあり得ないこと)のどちらかだ」とわざわざ選択肢・候補を並べることで、「Aが正しい/Aしかない」と強調する】という技法の出番だ。
改めて「彼に考えを変えさせられるのはオーナーか、神だけさ」というセリフをご覧いただきたい。
このセリフの「神」は、「ビリーよ考え直しなさい」と神がのたまうことはまぁあり得ないわけで、つまりは【絶対にあり得ない選択肢】ということになる。
そして「オーナー」の後ろにわざわざ【神 = 絶対にあり得ない選択肢】をくっつけたことで、①オーナー以外に考えを変えさせられる人はいないというニュアンスが強調され、かつ②ちょっとばかりユーモラスなセリフになったといえるだろう。
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