「相手が絶対にノーと答える質問」や「トンチンカンな質問」を投げかけることで、罵倒する ~映画「ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金」の場合
◆概要
【「相手が絶対にノーと答える質問」や「トンチンカンな質問」を投げかけることで、罵倒する】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金」
▶1
本作の主要キャラの1人・カーショウ(50代頃の男性)。
彼は、コロンビア出身のアメリカ人である。
カーショウは
・Step1:大金持ちだ。事業に成功し、たっぷり金を持っている。
・Step2:そして、その金を狙われた。彼は悪党に誘拐され、さんざん拷問を受けた。
・Step3:さらに悪党どもはカーショウを殺そうとした。しかし連中は間抜けだった。カーショウはどうにか生き延び、その後病院に担ぎ込まれた。
意識を取り戻したカーショウは、
・Step4:警察に被害を訴えた。
・Step5:中年男性と比較的若い女性の刑事コンビが、病院に事情聴取に来てくれた。
ところが、
・Step6:刑事コンビはカーショウの証言をまったく信じてくれない(!)。
・Step7:カーショウの傲慢な態度や、彼が麻薬大国コロンビア出身であること、そして事件現場に大人のおもちゃが落ちていたことなどから、「カーショウさん、あなたはSMプレイをしていて大けがしたのでは?」などと言い出す始末だ。
・Step8:カーショウは呆れ、絶望し、そして激昂した。彼は叫んだ「その女はまだ新米か?それとも娘を仕事見学に連れてきたのか!?」。さらに、男性刑事のヘアスタイルがちりちりのパーマであることから「縮れ毛が耳にかかって私の言葉が聞こえんのか!?」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「その女はまだ新米か?それとも娘を仕事見学に連れてきたのか!?」「縮れ毛が耳にかかって私の言葉が聞こえんのか!?」というカーショウのセリフである。
要するに「このバカどもが!俺の話をちゃんと聞け!」と怒り狂っているわけだが――ストレートにそう言ってしまっては面白くない。
そこで【「相手が絶対にノーと答える質問」や「トンチンカンな質問」を投げかけることで、罵倒する】という技法の出番だ。
例えば、あなたが友人との待ち合わせに遅刻してしまったとしよう。
友人は言った「ひどいじゃないか!」「約束は守れよ!」。もしくは、友人は言った「お前の家には時計がないんだっけ?」「もしかしてお前は時計を読めないの?」。どちらの方がより攻撃力が高いと感じるだろうか。あなたがよりムカつくのは、より傷つくのはどちらだろうか。
後者だろう。
そう、ストレートに怒ったり批判したりするよりも、「相手が絶対にノーと答える質問」や「トンチンカンな質問」を投げかける方が攻撃力が増すのだ。
というわけで、「このバカどもが!俺の話をちゃんと聞け!」を「その女はまだ新米か?それとも娘を仕事見学に連れてきたのか!?」「縮れ毛が耳にかかって私の言葉が聞こえんのか!?」に置き換えたことで、カーショウの怒りが感じられるセリフになった。
と同時に、「すごい皮肉だ(笑)」と鑑賞者が思わず噴き出してしまうユニークなセリフになったといえるだろう。
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