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「ヒーローの強さの秘密を知る者」と「『強くなりたい!』『ヒーローと戦いたい!』と願う戦闘狂」が手を組む→しかしやがて「戦闘狂」が暴走し始める

兵士「気分はどうだい?」
ブロンスキー「……ふっ。まるでモンスターだ!」

映画「インクレディブル・ハルク」


◆概要

ヒーローものでは、【打倒ヒーローのために複数の敵が手を組む】という展開を見かけることがある。

【「ヒーローの強さの秘密を知る者」と「『強くなりたい!』『ヒーローと戦いたい!』と願う戦闘狂」が手を組む→しかしやがて「戦闘狂」が暴走し始める】はその一例。


◆事例研究

◇事例:映画「インクレディブル・ハルク」

▶1

本作の主人公は、ブルース(男性、40歳頃)。

彼は天才的な研究者だった。

ところがある日、とある実験を行うにあたって自ら被検者に立候補。自身に「超人血清」を投与し、さらに「ガンマ線」を浴びせた。すると……嗚呼、実験は大失敗!「心拍数が1分間に200回を超えると『ハルク』に変身する」という体質になってしまった。


なお「ハルク」とは、

・特徴1:筋骨隆々の大男。猛烈に強く、銃撃にすら傷つくことがない。つまり、ほぼ無敵である。

・特徴2:変身中、ブルースの人格や理性はほとんど失われる

・特徴3:というわけで一度ハルクに変身すると大暴れ、敵味方の区別なくすべてをぶちのめしてしまうのだった(ただし、特別大切に想っている人のことだけは認識できるらしい。また、その人を守るためならいつも以上のパワーを発揮できるようだ)。


▶2

一方、本作の敵はロス将軍(男性、60歳頃、アメリカ陸軍の将軍)と、ブロンスキー(男性、40歳頃)。この2人がタッグを組んでブルース(=ハルク)に襲いかかる。

以下、経緯をまとめてみよう。


<前提>

・Step1:そもそも、上述の実験を主導したのがロス将軍である。実験失敗後、彼は考えた「ブルースを捕まえておき → 治療を施すことなく → 研究のためのモルモットとして扱おう。いいデータが取れるはずだぞ!」。また、ロス将軍は実験の失敗を隠蔽したい。そのためにもブルースを手元に置いておこうと決めた。

・Step2:一方、ブルースは一目散に逃げ出した。当たり前だ。彼は研究用のモルモットになぞなりたくない。どうにかして治療法を探し、普通の人間に戻るつもりだ。

・Step3:そして……実験失敗から5年が経った。ブルースはいまブラジルに潜伏し、治療法を探している。ロス将軍は引き続きブルースの行方を追っている。


<ハルク登場>

・Step4:いろいろあって……ロス将軍は、ブルースの潜伏先を突き止めた。よーし、今度こそ捕まえてやるぞ!

・Step5:ブルースはいつ怪物ハルクに変身するやもしれぬ危険な男だ。ゆえに、ロス将軍は精鋭部隊を組織した。その中でも特に優秀な兵士、それがブロンスキーである。

・Step6:精鋭部隊がブルースに襲いかかった。しかし、追い詰められたブルースはハルクに変身。兵士を蹴散らし、いとも簡単に部隊を全滅させてしまった。唯一生き残ったのがブロンスキーである。


<ブロンスキーの超人化→敗北>

・Step7:ロス将軍の口からブルースの体の秘密を聞かされたブロンスキー。彼は好戦的な男だ。戦いが大好きだ。かくして願った「俺もあんなパワーがほしい!」「そしてハルクと再戦したい!今度は負けねぇ!!」

・Step8:確かにハルクを捕まえるのに生身の人間では厳しいだろう。というわけで、ロス将軍はブロンスキーに「超人血清」を投与した。

・Step9:しばらく後、ロス将軍はブルースの居場所を再び特定した。超人的な肉体を手に入れたブロンスキーがハルクに立ち向かう。しかし……ダメだ!ボコボコにやられてしまう。


<ブロンスキーのさらなる超人化そして怪物化>

・Step10:えーい、まだパワーが足りぬ!!ということで、快復したブロンスキーに再び「超人血清」が投与された。明らかに過剰投与である。

・Step11:さらにひょんなことから……ガンマ線に汚染されたブルースの血液のサンプルが存在すると知ったブロンスキー。彼は研究者を脅し、それを自分に投与させた。

・Step12:その結果、ブロンスキーは怪物「アボミネーション」に変身できるようになった


<ブロンスキーの暴走→決着>

・Step13:上述の通り、ブロンスキーは元々が好戦的な男だ。しかし、アボミネーションに変身できるようになったことで完全なる戦闘狂と化してしまったようだ。彼はアボミネーションに変身すると街で暴れ始めた。「ハルクと戦いたい → どうすればいいだろう?そうだ!ブルースは善人だ。自分が街で暴れていれば、それを止めるべくハルクに変身してやってくるに違いないぞ」と考えたのだ。

・Step14ロス将軍は呆然とする。だが、最早ブロンスキーは彼の命令になぞ従わない。

・Step15:アボミネーションが大暴れしていると知ったブルース。彼は、初めて自らの意志でハルクに変身した。そして街を守るためにアボミネーションに立ち向かった

・Step16:激闘の末、ハルクが勝利。アボミネーションは身柄を取り押さえられた。一方、ハルク(=ブルース)は再び逃亡生活に戻った。


▶3

以上を整理してみよう。

・1:当初ブロンスキーは、ロス将軍の命令に従って動く1人の兵士にすぎなかった

・2:しかしハルクとの戦い(Step6)を経て、「ハルクのように強くなりたい!」「ハルクに勝ちたい!」という自らの願望を抱くようになった。

・3:それでも、しばらくの間は問題なかった。ロス将軍とブロンスキーの利害が一致していたからだ。「ロス将軍は『超人血清』を投与してやる + ハルクと対戦する機会を与えてやる」「ブロンスキーはハルクとの戦いに全力を尽くす」という協力関係が成り立っていた。

・4:ところが……ブロンスキーの力への欲求にはすさまじいものがあった。彼はロス将軍に無断で、ガンマ線に汚染されたブルースの血液のサンプルを投与させた(Step11)。かくしてアボミネーションに変身できるようになった(Step12)。

・5:その結果、ブロンスキーは完全なる戦闘狂になってしまった(Step13)。もうハルクと戦うことしか考えられぬ!ハルクをおびき出すために街で暴れるわ、その後も街をぶち壊し、一般市民を危険な目に合わせつつハルクと戦うわ、ひどいものである。ロス将軍のことは完全に無視だ。


つまりロス将軍の視点からまとめると、

・1:ヒーロー(ハルク)と戦うために超人(ブロンスキー)を育成したら、

・2:いつの間にやら戦闘狂の怪物(アボミネーション)と化し、そして暴走。最早制御不能!ヒーロー(ハルク)以上に厄介な存在になってしまった

……というわけだ。


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