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格好いいこと・しゃれたことを言った人を、からかったり皮肉ったりする(「そんな格好でよく言うよ」というふうに発言者の見た目や立場をネタにするver.) ~アニメ「怪異と乙女と神隠し」の場合

蓮「(強力な怪異との戦いにどうにか勝利した後、苦しそうな声で)菫子さん、なんで逃げなかったんです?せっかく格好つけて出ていったのに……」

菫子「(微笑んで)バカ言え。見くびるなよ。これでも作家だぜ?結末を見届けずに帰るわけないだろ!」

蓮「ソシャゲのダメージ差分みたいな格好で何言ってんですか」

アニメ「怪異と乙女と神隠し」(第3話)




◆概要

【格好いいこと・しゃれたことを言った人を、からかったり皮肉ったりする(「そんな格好でよく言うよ」というふうに発言者の見た目や立場をネタにするver.)】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「怪異と乙女と神隠し」(第3話)

▶1

本作の主人公は、菫子(女性20代)。

彼女はプロの小説家である。


菫子には友人がいる。

・Step1だ。

・Step2:菫子と蓮は、ゆえあって怪異(≒化け物、妖怪)を探したり、怪異と戦ったりしている。


いろいろあってある日、

・Step3:2人が強力な怪異と遭遇した時のことだ。

・Step4:相手の攻撃を受け、2人はボロボロになる

・Step5:相手は予想よりもはるかに強かった。これはまずいぞ。命がけの戦いになるだろう……。蓮は覚悟を決める。彼は菫子に逃げるように言い残し、1人で怪異に立ち向かった。


その後、

・Step6どうにか勝利した蓮

・Step7:しかし蓮もひどい傷を負った。彼はその場に崩れ落ちる。

・Step8:とその時だった。菫子が駆け寄り、蓮を抱きかかえた「大丈夫か?」。――そう、菫子は逃げていなかったのだ。

・Step9:蓮は呼吸するのも苦しそうな感じで「菫子さん、なんで逃げなかったんです?せっかく格好つけて出ていったのに……」

・Step10:すると菫子は微笑んで「バカ言え。見くびるなよ。これでも作家だぜ?結末を見届けずに帰るわけないだろ!」

・Step11:菫子の言葉に、蓮は相変わらず苦しげな声でツッコんだ「ソシャゲのダメージ差分みたいな格好で何言ってんですか」。――怪異の攻撃のせいで、菫子の服はあちこち破けている。蓮はそれを「ソシャゲのダメージ差分」と表現し、「そんな格好して何をキザなことを言っているんですか」とからかったのだ。


▶2

ご注目いただきたいのは、「ソシャゲのダメージ差分みたいな格好で何言ってんですか」という蓮のセリフである。

要するに彼は、「バカ言え。見くびるなよ。これでも作家だぜ?結末を見届けずに帰るわけないだろ!」なんてキザな言葉を口にした菫子をからかっているわけだが――これがいいと思うのだ。


第1に、蓮がどれほど辛い時にもユーモアと毒舌を忘れない魅力的なキャラだと伝わってくる。蓮は本作の副主人公であり、そんな彼の魅力を鑑賞者にアピールするのは極めて重要なことだ。

第2に、蓮と菫子が気の置けない間柄だと伝わってくる。親しいからこそこのようなツッコみが許されるのだ。そして、親しいキャラ同士のじゃれ合いは見ていて心地いいものである。

第3に、これは「戦いの後の軽口」であり、「戦いは終わりましたよ」という合図になっている。そもそも、作中でいま何が起きているのか、そしてこれから何が起きるのかを鑑賞者に示唆するのは重要なことだ。さもないと鑑賞者は混乱してしまう。そこでこの軽口である。この軽口を通じて私たちは「戦いは終わったんだな」と無意識の内に理解し、迷子にならずに済む。


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