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叱ったり批判したりする時に、わざわざ疑問文を使う ~映画「プラダを着た悪魔」の場合 #1

ミランダ「(アシスタントがミスした時に)予約の確認をするのがそんなに難しい仕事かしら?」

映画「プラダを着た悪魔」




◆概要

【叱ったり批判したりする時に、わざわざ疑問文を使う】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「プラダを着た悪魔」

▶1

本作の主要キャラの1人・ミランダ(50代頃の女性)。

彼女は、一流ファッション誌「ランウェイ」の編集長である。

極めて優秀で、ファッション界のドンのような存在だ。そしてまた――メチャクチャに厳しいことで知られている。神経質で完璧主義者。厳格で辛辣。周囲の人は彼女を尊敬しつつ、いつもビクビクしていた。


ある日、

・Step1:ミランダがエステに行った時のことだ。

・Step2:担当エステティシャンがヘルニアで欠勤しており、施術を受けることができなかった


かくしてミランダは会社に到着するや否や、

・Step3アシスタントのエミリーに言った「予約の確認をするのがそんなに難しい仕事かしら?」

・Step4:エミリーは慌てて謝罪する「すみません!昨夜確認はしたんですが……」。

・Step5:しかしミランダは「あなたの無能ぶりは説明しなくて結構!」とにべもない。


▶2

ご注目いただきたいのは、「予約の確認をするのがそんなに難しい仕事かしら?」というミランダのセリフである。

要するに「あなたのせいで時間を無駄にしたわ。予約の確認くらいちゃんとしておきなさい!」と叱っているわけだが――ストレートにそう言ってしまっては何も面白くない。

そこで【叱ったり批判したりする時に、わざわざ疑問文を使う】という技法の出番だ。


そもそも疑問文とは何だろう?

それは、平叙文(=普通の文章)や命令文とは違って、相手に「回答」を求めるものだ。

回答を求められた側からすれば「何とか言えよ」と圧力をかけられているわけであり、時としてこれはきつい。

だって、「何と言えば許してもらえるだろうか?」「何と言えばこれ以上怒られずに済むだろうか?」と自問したり、「なぜあんなことをしてしまったのだろうか?」と自らの過去のあやまちを振り返ったりすることになる。その中で、「私のせいだ……」と罪悪感に駆られることもあるだろう。「なんてバカなことをしてしまったんだ!」と絶望することもあるだろう。「まずいまずい!早く答えなければ!」「こんな答えじゃダメだ!余計怒られる!」と焦ることもあるだろう。

そう、「○○しなきゃダメでしょ!」「次からは○○しなさい!」と平叙文・命令文で叱られたり注意されたりする方がよほど楽なのだ。

逆に言えば、叱ったり批判したりする時に疑問文を使えば、相手をより強く威圧できる。傷つけられる。屈辱感を与えられる。


というわけで、「あなたのせいで時間を無駄にしたわ。予約の確認くらいちゃんとしておきなさい!」を「予約の確認をするのがそんなに難しい仕事かしら?」に置き換えたことで、人を人とも思わぬミランダの性質が伝わってくる素晴らしいセリフになったといえるだろう。


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