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「人を励ますために、自らの黒歴史をさらす」というシーンを描く ~アニメ「スキップとローファー」の場合

兼近「そりゃ僕だっていつか最高のものを作って皆に認められたいけど……これだって、誰にも見せないよりはきみらが笑ってくれるならいいと思ったんだ」

アニメ「スキップとローファー」(第7話)




◆概要

【「人を励ますために、自らの黒歴史をさらす」というシーンを描く】は「読者・鑑賞者に好かれるキャラ、共感されるキャラ、応援されるキャラ」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「スキップとローファー」(第7話)

▶1

本作の主要キャラの1人・兼近(高2男子)。

彼は演劇部の次期部長であり、劇作家になることを夢見ている。


ある日いろいろあって、

・Step1:兼近は、十貴子(同級生の女子)が落ち込んでいることを知った。

・Step2:十貴子は生真面目な努力家だが、その努力が報われず、「私のこれまでの努力は何だったの?努力が報われるだなんてあれは嘘なの?」とショックを受けているらしいのだ。

・Step3:かくして、兼近は一計を案じた


別日、

・Step4:兼近は1本のビデオを持参した。彼は、十貴子やその場に居合わせた人びとに半ば強引にビデオを見せた。それは兼近が小学生時代に作った自主制作映画だった。監督から脚本、出演まですべて兼近1人きりだ。

・Step5:その出来栄えはというと……拙い演技にぎこちない映像。素人目にもひどいものだ。嗚呼、まさに黒歴史!兼近は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。

・Step6:十貴子は困惑する。彼女は訳がわからない。えっ?恥ずかしがるくらいなら、一体何だってこんなビデオを私たちに見せたのだろうか?

・Step7:すると兼近は、はにかみながら言った「だってさぁ……面白いだろ、これ!?きみらビミョーに気を使ってくれてるけど、笑ってくれちゃっていいんだぞ!」「そりゃ僕だっていつか最高のものを作って皆に認められたいけど……これだって、誰にも見せないよりはきみらが笑ってくれるならいいと思ったんだ」

・Step8:翌日、十貴子はすっかり元気になっていた。


▶2

兼近がなぜビデオを見せたのか、そして十貴子がなぜ元気になったのか、その理由は作中では明言されていない。

しかしおそらくは……

・理由1:映画の中の幼い兼近は一所懸命だった。拙い演技ながらもキラキラと輝いていた。 →兼近は「努力はそれ自体が素晴らしい」と伝えたかった。十貴子はそれを理解して立ち直った

・理由2:幼い頃の努力は報われず、そのビデオはいまや黒歴史と化している。しかし劇作家を目指す兼近にとっては当時の失敗が何かしらの糧になっているに違いない。 →兼近は「一度夢が破れたからといってそこで人生が終わるわけではない。人生は続く。努力はいつかきっと実を結ぶだろう」と伝えたかった。十貴子はそれを理解して立ち直った

・理由3:幼い兼近の努力にも関わらず、それは駄作になってしまった。しかしいまそのビデオは「十貴子を笑わせる・励ます」という目的のために役立っている。 →兼近は「一見すると報われなかった努力も、いつか芽吹く時が来るかもしれない。近視眼で判断してはいけない」と伝えたかった。十貴子はそれを理解して立ち直った


いずれにしても、兼近は十貴子を励ますべく己の黒歴史をさらした。そしてそのおかげで十貴子は元気を取り戻した

「同級生を励ますために自らの黒歴史をさらすとは……いいやつだなぁ!」と兼近に好意を抱いた鑑賞者は少なくないだろう。


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