「比喩・たとえ話・換言」がおかしい/間違っている ~マンガ「スナックバス江」の場合 #1
◆概要
【「比喩・たとえ話・換言」がおかしい/間違っている】は「コメディシーン、ギャグ」に関するアイデア。
◆事例研究
◇事例:マンガ「スナックバス江」(第3巻)
▶1
本作の主人公は明美(若い女性)。
彼女は、スナック「バス江」のチーママである。
その日、
・Step1:「バス江」には常連客の森田と山田が来ていた。2人とも若い男性である。
・Step2:森田は大変なブサイクだ。加えてその言動は相当にキモい。かくして女性にモテず、いまだに童貞である。どうにかして童貞を捨てたいと機会をうかがっているものの、いまだ大願叶わずにいた。
さてそんな森田だが、
・Step3:彼は確信していた。曰く「山田はワイの同類や!」「ワイと同様にまったくモテず、童貞に決まっている!」「いや、ワイのがまだマシや!山田はワイ以下や!」と。
・Step4:明美が「いやぁ、普通に考えて山田の方がモテるでしょうよ……」とツッコんでみても、森田は聞く耳を持たない。なぜか自信満々なのだった。
ところが、
・Step5:やがて明らかになった。そう、山田は童貞ではなかった!
・Step6:森田は絶句する。大変なショックを受ける。彼は寂しそうにつぶやいた「山月記なら虎になっとるで……?」。
・Step7:明美は困惑する「どういうたとえ?」。
▶2
「山月記」とは中島敦の短編小説。
李徴という男が虎に変身してしまう物語だ。
ごくごく大雑把にまとめると……李徴は優秀な男だった。しかし、あまりにも自尊心が強すぎる。「俺はすごいんだぞ!」「お前らのような有象無象とはひと味もふた味も違うんだぞ!」という気持ちが強すぎる。いろいろあって李徴は元同僚たちの部下になってしまうのだが、プライドの高い彼が耐えられるはずもない。嗚呼、屈辱だ!メチャクチャに悔しい!彼は発狂してしまう。そして姿をくらまし、虎に変身してしまうのだった。
「格下だと思っていた山田がじつは非童貞だった(=自分よりも格上だった)」と知った森田。彼は思わず、自分と李徴の姿を重ね合わせたのだろう。だから「山月記なら虎になっとるで……?」というセリフが飛び出したのだ。
「童貞が云々といういい大人が話すにはあまりにも下らない話題からの……突如『山月記』!文学作品!!ふり幅がすごいな(笑)」「森田ってクソみたいな人間だけれど、意外にも教養人なのか?(笑)」と思わず噴き出してしまった読者は少なくないだろう。
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