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燃えよ、男子華道部!!|『シービスケット』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「シービスケット」をベースに新しい物語を妄想します。

※「シービスケット」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「シービスケット」は、人生絶不調の4人(3人 + 1頭)が出会い、チームを組んで成功を収め、人びとの希望の星となる物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「シービスケット」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『シービスケット』 ~『燃えよ、男子華道部!』編」です。


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嘉村 男子華道部……?

三葉 ストーリーをご紹介しましょう。舞台は、とある高校です。「高校」と一口に言っても様々ですが……今回取り扱うのはいわゆる「底辺校」。アレコレ問題を抱えた生徒が集まる学校ですね。

嘉村 なるほど。

三葉 そして「案①」の主要キャラは、同校の生徒3人と教師1人です。ここではまず、生徒の1人(以下、Aくん)に注目してみましょう。

嘉村 ふむ。

三葉 Aくんは不良です。体格がよく、腕力も強い。1対1のケンカなら、まず負けることはない。性格は短気で、いつもイライライライラしている。教室にいるよりも、屋上や校舎裏で不良仲間とたむろっている時間の方が長い。そんな生徒です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて……その日、Aくんは落ち込んでいました。

嘉村 ほぉ。

三葉 つい先ほど、担任教師から宣告されたのです「率直に言って、退学の危機だ」。Aくんが目を剥く。担任教師が怯える。彼はビクビクしながら「そっ、その……先日の定期テストで、きみはまた大量の赤点を取りましたね。その上、欠席も多い。先日は他校生と喧嘩をした。校長が激昂していて……ぼっ、僕は止めたんだよ。止めたんだけど、校長が……次の定期テストで赤点が1つでもあったら退学にすると……」。

嘉村 なるほど。

三葉 Aくんは頭を抱えた。彼の家は母子家庭です。お袋さんが細腕1本で育ててくれた。自慢できるような学校じゃねぇが……それにしたって、せめて卒業してぇ。退学処分だなんて、お袋に顔向けできねぇよ!クソ―、校長め!背に腹は代えられねぇ。こうなったら校長を拉致して脅すしかねぇか……と物騒なことを考えるAくん。

嘉村 うーむ。

三葉 そんなAくんに1人の男がすっと近寄り、囁いた「ねぇ、きみ。相談に乗りましょうか?」。振り返ると……チッ!キモデブかよ!相変わらず気持ち悪ぃなぁ!

嘉村 キモデブ……?

三葉 ええ。古典の教師、通称「キモデブ」です。

嘉村 「通称『キモデブ』」って……ストレートすぎるでしょ。

三葉 キモデブ先生は、生徒から嫌われていました。

嘉村 でょうねぇ……何しろ、通称「キモデブ」ですから。

三葉 キモい外見に、キモい喋り方。その上……妙にお節介!

嘉村 ほぉ。「お節介」というと、金八先生みたいな感じですかね?しかし、「お節介な先生」というのは特段悪いことには思えませんが……。


三葉 いやいやいや。想像してみてくださいよ。廊下を歩いていて、ふと肩を叩かれた。振り返ると……うおーっ!キモいおっさんがニヤニヤ笑っているではないか!そして言う「ねぇ、きみ。何か困っていることはありませんか?いつでも相談に乗りますよ」。歯は黄ばんでいる。肩にはフケが落ちている。……いかがです?キツいでしょ?

嘉村 うーむ……。

三葉 Aくんは舌打ち。そしてキモデブ先生を無視して立ち去ろうと思ったのですが……その時、彼の脳裏にお袋さんの顔が浮かんだ。

嘉村 ほぉ。

三葉 チクショウ!Aくんは思う。こういうのを「溺れる者は藁にもすがる」って言うんだろうなぁ。まさに「退学しかけた者はキモデブにもすがる」か。まったく情けねぇぜ。だが仕方ねぇ。少しでも可能性があるなら……カッコつけてる場合じゃねぇな。Aくんは訊きました「相談、乗ってくれんのかよ?」。キモデブ先生が嬉しそうに笑った。……チッ!マジでキモいな、コイツ!

嘉村 ふむふむ。

三葉 Aくんが一通り事情を説明すると、キモデブ先生は大きくうなずきました「僕に任せてください」。Aくんが言う「言っておくがな、オレはバカだぜ。猛勉強したって、赤点をゼロにするなんて不可能だ。かといって、カンニングも無理だ。あの陰険な校長のことだからな。オレを徹底的に監視するつもりだろう」。Aくんはため息をついた「どうだい?絶望的だろ?」。しかし、キモデブ先生は微笑んだ。

嘉村 ほぉ。

三葉 そして、キモデブ先生は言った「きみ。道は1つではありませんよ」。キモデブ先生曰く、校長はコンプレックスを持っている。そう、自分が何のとりえもないクソ高校の長であることに、コンプレックスを抱いているのだ。彼は、校長同士の集まりではいつも肩身の狭い思いをしていた。

嘉村 ふむ。

三葉 つまり、校長は自慢できるものを欲しているのだと言う。「たとえテストがからっきしダメでも……それが、トロフィーやメダル、表彰状の類をもたらす生徒なら?校長先生は退学になんてしないでしょうねぇ」。

嘉村 なるほど。

三葉 しかし、Aくんは舌打ちした「チッ!トロフィーやメダル、表彰状だと?夢みたいなことを言ってんじゃねぇよ。生憎オレは帰宅部だぜ!いまから野球部にでも入って甲子園を目指せってか?『ROOKIES』じゃあるまいし……無理に決まってんだろ!」。


嘉村 ふーむ。

三葉 キモデブ先生がうなずく「確かに、野球で甲子園を目指すのは難しいでしょうね。次のテストまでに3か月しかありませんから」「かといって、書道や絵もダメだぜ」。キモデブ先生がニヤニヤ……本人は「ニコニコ」なのかもしれませんが、「ニヤニヤ」にしか見えぬ笑みを浮かべた。Aくんはイラッとする「テメェ、笑ってんじゃねぇよ!結論を言え、結論を!」。

嘉村 ふむ。

三葉 かくして、キモデブ先生は言いました「男子華道部を作りましょう」。

嘉村 男子華道部!?そんなものがあるんですか……?

三葉 現実に存在するかどうかは知りませんが……。

嘉村 ええ。

三葉 「こち亀」184巻に登場するんですよ。不良高校生を更生させるべく、両津が「男子華道部」やら「男子リリアン部」やらを作るというエピソードなんですがね。


嘉村 ほぉ。

三葉 まぁそれはいいとして……さて、Aくんはひっくり返った「かっ、華道だと!?」。

嘉村 そりゃ仰天するでしょうねぇ。

三葉 しかし、キモデブ先生にはちゃんと考えがありました。すなわち、日本広しと言えども「男子華道部」を持つ高校は少ない。当然、選手層は薄い。つまり……Aくんがゴクリと生唾を飲み込んだ「つっ、つまり、オレにも勝ち目があるってわけか!?」。キモデブ先生がうなずく「その通りです」。

嘉村 なるほどねぇ。

三葉 希望が見えてきた。「これならいけるかもしれねぇ」とAくんは思う。とはいえ、抵抗もある。何しろ華道です。「不良のオレが華道!?冗談じゃねぇぜ!」と思う。仲間に何と言われるか……考えるだけで胃が痛くなる。しかし……他に手はないのである。彼はグッと堪える。そして頭を下げた「先生、世話になります」。

嘉村 ふむふむ。

三葉 それから数日後……キモデブ先生がやってきて嬉しそうに笑いました「準備が整いましたよ」。

嘉村 ほぉ。

三葉 スポーツにしろ芸術にしろ、上達するには仲間が必要です。時に励まし合い、時に競い合う仲間が。

嘉村 確かに。切磋琢磨は重要ですよね。

三葉 ということで、キモデブ先生はあちこち駆け回り、男子華道部のメンバーを集めてきたのです。

嘉村 ほぉ。

三葉 とはいえ、「男子華道」という超マイナーな部です。しかも顧問は、生徒からの人気皆無のキモデブ先生。さらに部員第1号は、キレやすいことに定評のあるAくん。

嘉村 改めて考えると、とんでもない部ですねぇ。

三葉 そうなんですよね。まともな生徒が入部するはずがない。当然、曲者ばかりが集まった。すなわち……Bくんは引きこもりです。出席日数が足りず、このままでは留年確実。そこでキモデブ先生は自宅を訪問し、囁いた「いいアイデアがあるんですよ」。かくしてBくんは、どうにか進級すべく入部しました。

嘉村 なるほど。つまり……Aくん同様、男子華道で賞を獲り、校長に気に入られて留年を防ごうというわけですね。

三葉 ええ、その通りです。

嘉村 ふむ。

三葉 続いて、Cくん。彼は「ヤバいヤツ」「関わっちゃいけないヤツ」として知られていました。といっても不良の類ではありません。ピンク色の髪にピンク色の爪、そして「お前は空条承太郎か!?」とツッコみたくなるほど改造された制服……。


三葉 おまけに寡黙で無表情。生徒や教師からは「狂人」「ファッションモンスター」として恐れられていた。

嘉村 なるほど……。

三葉 キモデブ先生が、声高らかに宣しました「さぁ、Aくん、Bくん、Cくん、そして私……この4人で男子華道界のてっぺんを目指しましょう!」。Aくんが叫ぶ「ちょっと待て!おかしいだろ!不良生徒とキモデブ教師……まぁ、ここまではいいとして、そこに加わったのが引きこもりと狂人って……おかしいだろ!」。しかしキモデブ先生はニヤニヤ笑うだけ。

嘉村 うーむ。

三葉 とまぁこんな具合に4人は出会いました。そして切磋琢磨し、成長していきます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さてここで、「シービスケット」を振り返ってみましょう。すなわち……「シービスケット」の主要キャラは、4人とも「大切な何か」が欠けた人生を送っていました。

嘉村 ええ。

三葉 しかし4人が出会い、チームを結成したことで……そう!その「欠けていたもの」を得る(取り戻す)ことに成功します。


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嘉村 ふむふむ。

三葉 では、「案①」ではどうか?以下の表をご覧ください。


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三葉 つまり……キモデブ先生は、本当は生徒想いの教育熱心な教師なのです。しかしその外見や喋り方ゆえに誤解され、長年生徒からバカにされてきた。じつに哀れ。しかし「男子華道部」の活動を通じて、彼は次第に生徒から信頼を置かれるようになります。

嘉村 ふむ。

三葉 また、Aくん。ここまで申し上げてきた通り、彼は不良です。暴れん坊です。しかし、根っからの悪人ではありません。熱中できるものがなく、ありあまる情熱を持てあましていただけなのです。しかしいま、彼は男子華道に出会った!人一倍強い情熱を華道にぶつけ、彼はグングン腕を上げていきます。

嘉村 なるほど。

三葉 続いて、Bくん。彼はいじめを受け、引きこもっていました。彼に必要なものは何か?……言うまでもないでしょう。信頼できる仲間です。共に笑い、共に泣き、そして時には真剣に叱ってくれる友だちです。彼は男子華道部に入り、仲間を得た。

嘉村 ええ。

三葉 最後に、Cくん。彼は生まれついての芸術家でした。溢れんばかりの才能を持っていた。しかし不幸なことに……彼はこれまで、その芸術センスをぶつける対象を持っていませんでした。だから空回りしていた。しかしいま、彼は男子華道と巡り合った!その才能を存分に発揮する舞台を得たのです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 このように……彼らはチームを結成し、「人生に欠けていたもの」を得た(取り返した)のです。

嘉村 ふむ。

三葉 その後、彼らは「華道甲子園」に出場し、堂々たる成績を残しました。さらに、彼らの情熱は周囲の生徒や教師にも伝播。「県1番のバカ高校」「粗大ゴミ高校」と蔑まれていた面々の顔つきが変わった!……これが「案①」のアイデアです。

嘉村 なるほど。

三葉 以上、「『シービスケット』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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