見出し画像

「糞尿まみれの汚いトイレ」を使って、物語全体を暗示する象徴的なシーンを作る

レントンは糞尿にまみれたトイレで「オエッ!!」

映画「トレインスポッティング」


◆概要

【「糞尿まみれの汚いトイレ」を使って、物語全体を暗示する象徴的なシーンを作る】は「トイレ」に関するアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「トレインスポッティング」

▶1

主人公はレントン。彼はヘロイン中毒者で、クソみたいな生活を送っていた。

だがある時、腹を決めた。もうヘロインは止めよう!この生活から抜け出そう!ということで、彼はアヘンの座薬を入手。これを使ってヘロインの禁断症状を乗り越えようという算段だ。


レントンが座薬を使う。間もなく便意を催した「あっ」。まずい。彼はまだ屋外にいるのだ。比較的傍にある知人の家に駆け込もうか?いやダメだ!激しい腹痛が押し寄せてきた「うぉーっ!」。

もう我慢できぬ。

彼は近くのベッティングショップ(賭博を楽しむ店)に飛び込んだ。小汚い店である。嫌な予感がする。


▶2

レントンがトイレのドアを開けると……おお神よ!そこは「スコットランドで最悪のトイレ」(the worst TOILET in Scotland)だった。

とにかく汚い!

誰かが糞尿や吐瀉物をまき散らしたのか、あるいは下水が漏れているのか、おそらくはその両方だが、便器から床、壁、天井に至るまでぐちゃぐちゃに汚れている

さらに、レントンは個室に入り悲鳴をあげた。便器に汚物が溜まっていたのだ。彼は顔を背ける。そして水を流そうと、天井からぶら下がっている紐を引っ張った。だが紐は千切れてしまった。最悪だ。


▶3

そうこうする内に、再び激しい腹痛!もう耐えられぬ。彼はズボンを下して便器に腰かけた。

レントンの表情が和らぐ。排便は快感である。

だがすぐに固い表情になった。そして急いで立ち上がると、彼は便器に手を突っ込んだ。あの汚物にまみれた便器の中に、である!!


じつは、便器の中に座薬を落としてしまったのだ。これからヘロインを断とうというのに!あれがなければ地獄である。

かくしてレントンは便器の中を探る。

吐き気を催す。必死に耐える。しかし見つからない。奥まで腕を突っ込む。それでも見つからない。


▶4

で、ここから幻想的なシーンに突入する。すなわち……

・Step1:レントンはぐいぐい腕を伸ばす。だが座薬は見つからない。彼は便器の中に頭を突っ込んだ(!)。それでも見つからない。今度は上半身を全部突っ込む。まだ見つからない。かくして彼は、便器の中にすっぽり潜っていってしまった

・Step2:便器の奥は意外や意外、まるで海だった。透明度が高く美しい海だ。

・Step3:レントンは水の中を泳ぎ、やがて座薬を発見。

・Step4:間もなく、彼は便器を抜けてあの地獄のようなトイレに戻ってきた

・Step5:その後、無事帰宅。脱ヘロインを目指して禁ヤク生活に突入した。


▶5

さて。

ここまでご紹介してきたのは、本作全体を象徴する極めて重要なシーンである。ご説明しよう。


まず【汚いトイレ】。これは「レントンの現在の生活」を象徴していると考えられる。一方、【便器の奥にあった美しく澄んだ水】は「レントンが目指すまともな生活」の象徴だろう。

ということは……そう!【現在の生活から抜け出すために座薬を入手 → しかし便器の中に落としてしまう → そしてなかなか見つからない】という一連の出来事は、「現在の生活から抜け出すことの難しさ」を表現しているのだろう。実際のところ、この後レントンはまともな生活を送ろうと奮闘するものの、なかなか上手くいかないのだ。


とまぁこのように、この汚らしくも幻想的なシーンは本作全体の構図を暗示・象徴している。


◆他のアイデアも見る👀

この記事が参加している募集

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!