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あなたは「自分の作品の『売り』」を理解していますか?【K.M.ワイランドの「5つ星レビュー」に関する考察】

まずは「準備」だ!


マンガにしろ小説にしろ映画脚本にしろ、いきなり本文を書き出すのはあまりにも無謀。事前の「準備」が重要です。

※「準備」の重要性についてはこちらの記事にまとめてあります。よろしければご一読ください!


で、一体何を「準備」するのか?一般的には以下を用意する人が多いようです。

▶ オープニングからエンディングまでの【あらすじ】

▶ 【あらすじをコンパクトにまとめたもの】(「ログライン(logline)」、「プレミス(premise)」などと呼ばれる)

▶ 【キャラ】の設定表や相関図

▶ 【世界観】の設定表

▶ 【構成】に関するもの(「三幕構成」、「ビート・シート」など)


しかし、これらは「絶対に準備すべきもの」ではありません。それがあることで創作が捗り、よりよい作品が生まれるなら、何を準備したっていいのです。

創作術の本を覗くと、いろいろな人がいろいろな「準備物のアイデア」を提案しています。「私に向いた(私が必要としている)準備物って何かな?」と一度検討してみることをオススメします。


「5つ星レビュー」を作ろう!


さて、今回ご紹介するのは一風変わった「準備物」です。

その名は……「5つ星レビュー(perfect review)」!

K.M.ワイランド(K.M. Weiland/アメリカの作家、小説執筆術の研究家)が、「アウトラインから書く小説再入門」の中で紹介しています。


「5つ星レビュー」とは何か?ざっくりまとめると……

▶ あなたの作品が完成し、世に出たとしよう。そして誰かがそれを読み、「あなたが作品に込めた想い」を完全に理解してくれたとする。

▶ この時、その人はどのような感想を抱くだろうか?作中のどの部分を、どのような理由で褒めてくれるだろうか?

▶ 本文を執筆する前に、読者になりきって感想文を書いてみよう!


要するに、「5つ星レビュー」とは「読者目線の感想文」のことです。


<補足>

ワイランドは、「プロの書評家(professional reviewer)になりきって、書評(review)を書いてみよう」と表現しています。

しかし私見では、「5つ星レビュー」で最も重要なのは「読者目線(一般的な読者がどう感じるか?)」という部分。「プロの書評家」という表現では、「プロ目線(プロがどう感じるか?)」というニュアンスが出てしまい混乱を招くように感じます。したがって本記事では、「プロの書評家による書評」ではなくて、「読者による感想文」という表現を使っています。


「5つ星レビュー」は、「(読者目線で)作品の『売り』を把握するためのツール」である!


ワイランドは「5つ星レビュー」について、「こんな準備物があってもいいかもね」といった感じでサラッと触れる程度にとどめています。

しかし私は思うのです。「5つ星レビュー」ってメチャクチャ重要かも!もしかすると、「最も重要な準備物」と言っても過言ではないかも!


「5つ星レビュー」を用意するメリット……それはズバリ、「これから作る作品の『売り』を明確化できる」という点です。


例えば、「クライマックスが最高!まさに手に汗握る展開でした!○○が戦線に復帰して主人公を助けるとは……超激熱です!!」なんてレビューを書いたとしましょう。あるいは、「主人公が超萌え萌えで、キュンキュンしました♡特に□□のシーンのあのセリフは神がかっています!」でも結構です。

……ご覧の通り、「読者が、その作品のどこに魅力を感じたか?/なぜそこに魅力を感じたか?」、つまりは「作品の『売り』」が一目瞭然ですよね。

要するに「5つ星レビュー」は、「(読者目線で)作品の『売り』を把握するためのツール」なのです。


なお、念のために補足すると……これは、作者(あなた)が「読者にこう感じてほしいな」と妄想して書くものです。したがって正確には、「5つ星レビュー」によって明確になるのは「作品の『売り』」ではなく、「作品の『売り』にしたいとあなたが企んでいること」です。

「5つ星レビュー」は、「作者(あなた)の頭の中の『企み』を明確化するためのツール」であると言えるでしょう。


そして「作品の『売り』」が明確になれば……あとは、やることは1つだけですよね。

すなわち、「『売り』の部分」に全力を注ぎ込むべし!「もっと激熱の展開にできないだろうか?」「もっと萌え萌えにして、読者をキュンキュンさせられないだろうか?」と考えるのです。


「作品の『売り』」を把握できぬまま本文を書き出すと、何が起こるのか?


一方、もしも「作品の『売り』」を明確にすることなく本文を書き始めると、どんなデメリットがあるのでしょうか?

ズバリ、「『売り』ではない部分 = 比較的どうでもいいはずの部分」に、必要以上のパワーを割くことになるでしょう(何しろ、どこにパワーを注ぐべきか理解できていないわけですからね)。


その結果、本来マックスパワーを注ぎ込むべき「『売り』の部分」が疎かになり、作品全体がパワーダウンしてしまう危険性がある(人間のパワーは有限ですから)。


また、物語にはメリハリが必要です。「落ち着いたパート」や「気軽に読めるパート」があるからこそ、「クライマックス」が引き立つのです。

ところが「売り」が不明確だと、メリハリをつけられない!ゆえに「常にハイテンション状態」「全編を通じてハラハラドキドキしっ放し」といった作品が生まれる。こういった作品は、読んでいてじつに疲れるものです。当然、読者の満足度は低下するでしょう……。


まとめ


ここまでご説明してきたことをまとめると……「5つ星レビュー」を書くことで、あなたは「(読者目線で)あなたの作品の『売り』」を理解できるようになる。そしてその結果、よりよい作品(より読者が満足してくれる作品/メリハリの利いた最高の作品)を作り得るのです。

「5つ星レビュー」!「あらすじ」や「キャラの設定表、相関図」などと共に、ぜひ準備物候補の1つに入れてみてくださいねー!!


<補足>

「5つ星レビュー」についてより詳しく知りたい方は、前掲の「アウトラインから書く小説再入門」、もしくはワイランドの公式サイトをご覧ください。

以下は、公式サイト内の「5つ星レビュー」に言及した記事へのリンクです(英語のみ)。文中の「perfect review」というのが「5つ星レビュー」のことです。


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(担当:三葉)

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