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雑学

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寛容と不寛容

寛容と不寛容

寛容は不寛容に対して不寛容になるべきか。

自分と異なる多様な価値感を認め、ひとりひとりの違いを包み込む「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」という言葉をよく目にするようになった。これからの社会でますます重要になる考え方である。金子みすゞの言葉を借りれば「みんな違って、みんないい」。しかし他者に対して「寛容」であることは実は言うほど簡単なことではない。まず、寛容は無関心とは違う。寛容であるためには

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自立と依存

自立と依存

自立とは依存先を増やすことである。

脳性マヒの障害を持ちながら医師としても活躍され、現在は東京大学先端科学技術研究センター准教授として「当事者研究」などの分野でも注目されている熊谷晋一郎さんの言葉である。

一般的に「自立(independent)」とは「依存(dependent)」の反対語であり、自立することは、誰にも依存することなくスタンドアローンになることだと思われがちだが、決してそうでは

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あるがままと現状肯定の違い

あるがままと現状肯定の違い

よく「あるがまま」を受け入れようという話をすると、それじゃあ現状の問題は何も解決されないし社会もよくならないし、ただの「ことなかれ主義だ」だ、という意見をもらう。

まず「あるがまま」を受け入れることは、言葉の通り「あるがまま」を受け入れているわけで、現状を肯定しているわけでも否定しているわけでもない。ただ石がその形でそこにあるというのが「あるがまま」を受け入れているということで、石は丸であるべき

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標準と配慮

標準と配慮

小学校で子供達に生い立ちを書かせる授業があり、それが問題になっていると聞きました。養子で引き取られた子供が自らを生い立ちを書くことに悩み、子供への負担が大きいからだそうです。確かに日本の小学校で、多数の家庭とは違う家庭環境で育っている子供がそれを発表することの心理的負担は大きいように思えます。

ただ、これを問題とするならば、養子で引き取られたということを告白することが子供を傷つける、という前提が

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人は弱く理性的ではないのか

人は目に触れる機会が多いものを好ましいと思う傾向にあり、接触機会の多さと好ましさは一定相関するそうだ。受動喫煙のシーンを映像から取り除こうとするのは、それを見た人たちが受動喫煙に対し好ましいと思わないまでも、許容する傾向にあるからだと思う。一方で、見たものを許容するのであれば、表現は気をつけなければならなくなる。全ての映画は、ジェンダーに気をつけ、政治的表現に気をつけなければならなくなる。これは表

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偏り

メディアは事実をあるがままに報道すべきだという意見に接することが多く、私なりの感想を書きたいと思う。確かにメディア、日本におけるテレビの影響力はとても強い。だから中立であるように努めなければならないという方向は理解しているけれども、実際に中立であるということは達成不可能だと思う。

木を見る西洋人、森を見る東洋人という本がある。その中で、中央に大きな魚がいて周辺に小さな魚が泳いでいる水槽を眺めた東

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我欲と社会課題

昔ある人にされてどきっとした質問がある。

”もしその問題が解決されるとしたら、あなたではない人が解決しても構わないですか”

私は少し考えた。過去に私が質問してきた経験から言っても即答で答える人は少ない。あまり考えたことがない問いかけなのかもしれない。私自身もこういう問いかけを自分にしはじめたのはここ数年だ。

世の中には解決されるべき問題がたくさんある。貧困や教育、病など。それらにとりくむ素晴

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強さについて

強さについて

質問箱で強さについて質問があったので回答します。

強さとは「その環境で勝利条件に対し有利に働く特性のこと」です。

生物の世界ではリチャードドーキンスの言葉を借りればいかに遺伝子を増やし伝えていくかが目的となります。言い換えればそれが勝利条件です。勝利条件とはそこに至れば至るほどいいことだということです。例えば、食物の豊かな時代では体の大きな個体は戦う上では有利だと思います。一方で食物が不足する

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権威と権力

権威と権力

世の中には権威と権力があります。少し乱暴にこの二つに分けてみます。権威は抽象的で、権力は具体的です。権威は示唆し、権力は決断します。権威は与えられ、権力は勝ち取ります。

権威タイプのリーダーは人々から愛されやすいです。理想を語り、分断を埋め、人の心を癒します。権威タイプのリーダーは示唆しそうしたくなるように仕向けます。批判をすることは少なく、あちらと向こうを分けるようなことをしません。裏を返すと

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