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【週末投稿】つれづれ有用植物#240(マツブサ科キシミ属:トウシキミ)

ハッカク(八角)とかスターアニスという香辛料は聞いたことがあったり、料理で使った方もいらっしゃると思います。それじゃどんな植物なのでしょうか。今回はその有用植物である、トウシキミ(唐樒)をご紹介します。

常緑性高木で15m程に成長します。
中国南東部からベトナム北東部が原産らしく、紀元前2000年ころから果実や樹皮を利用する目的で栽培されてきたそうです。
今では中国南部やインド南部、インドシナ半島などで広く栽培されています。しかし日本では自生しておらず、薬用植物園の温室で稀に栽培されているくらいで、めったに御目に掛かれる事はありません。

しかし同じシキミ属で、見た目がそっくりな「シキミ」という植物が日本に自生しており、「トウシキミ」と勘違いし易いのです。
こちらも有用植物ですが植物全ての部位に毒があるので口に含んではいけません。後ほど違いなどを説明します。

ちなみにアニスという植物もありまして、ハッカクに似た香りがあるそうですが、こちらはセリ科であり、全く種が違います。
植物界あるあるで、誤解を与えやすいですね。

【トウシキミの開花】

花は、黄緑色や濃いピンクからオレンジ、エンジ色の花を付けます。

特徴的な実

中国では9月~10月、3月~4月と年2回収穫されるそうです。
果実はダイウイキョウ(生薬名)とも呼ばれ、甘く強い香りがあり、生薬や香辛料として利用されています。

【トウシキミの葉】

中国料理をはじめ、インド料理、マレーシア料理、インドネシア料理、ベトナム料理などに広く使われています。またミックススパイスとしての五香粉(シナモン、クローブ、カホクザンショウ、フェンネル、チンピ、スターアニスの混合香辛料)の原料に使われます。


山高路远,干香的八角得之不易。霜浓露重,鲜嫩的鸡肉和香浓的酱料熬煮,又香又辣,回味无穷 #康仔农人 #农村生活 #特色美食 #food #八角

Posted by 康仔农人 on Thursday, May 9, 2024

飲み物ではチャイの中にハッカクを入れたりしますね。
豚の角煮や中華風漬物など広く使われています。

【スターアニス ティー】
【チャイ】

加工品としては果実部分や種子から抽出された油が、スターアニス油としてリキュールやブランデー、歯磨き粉、タバコ、香水などに使われています。アロマセラピーでは、咳や腹痛の緩和や消化不良の軽減を促すために使用されます。薬用としても重要で、健胃作用や刺激作用、利尿作用、抗菌作用、感染症予防、殺虫作用などの効果があるとも言われています。

★毒をもつ似た植物、キシミ。
日本では本州などの温帯地域に分布しています。
仏事に広く使われるため、神社の境内や墓地によく植栽されています。
精油を含んだ葉や樹皮は、抹香や線香の原料としても利用される有用植物でもあります。

全ての部位に毒成分が含まれ、特に種子は毒性が強いので、食用にすると死亡する可能性があると言われています。面白い事に、ヤマガラやヒメネズミはシキミの種子を収穫・輸送・貯蓄して種子散布に寄与していることが知られています。

「シキミ」と「トウシキミ」はとてもよく似ています。

【キシミ(毒)の葉】
【シキミ(毒)の花】
【ベニバナシキミ(毒)】
左:シキミ(毒) 右:トウシキミ(ハッカク)

シキミの実は八角形の先端に向かって太目で先は尖っています。トウシキミは先端に向かって徐々に細くなって先端は丸みがあります。しかしこの形の違いは例外があったり、時期の違いなどで見誤る事もあります。あくまでも参考程度にしてください。シキミは葉や枝を気づ付けると抹香の匂いがする点が、トウシキミと違います。
※抹香とは、葬儀の際に行われる焼香で用いられるお香を指します。

日本では自生樹木としてのトウシキミは存在しません。
疑わしい実は口にしない様にしましょう。

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