見出し画像

【週末投稿】つれづれ有用植物#105(イネ科トウモロコシ属:トウモロコシ)

トウモロコシは穀物として利用させるほか、家畜の飼料やバイオエタノールとして世界的に広く利用されている有用植物です。

ご存じの通り、穀物として観るだけでもさまざまな調理方法があります。
茹でたり焼いたりして食べるだけでなく、穂の先に出来る「ヒゲ(雌しべ)」はハーブティーとして利用されますし、種に含まれるデンプンを抽出して「コンスターチ」と呼ばれる製品になります。
さらに種を砕いて粉にした「コーンミール」を使って、水で練って調味・加熱し、フレーク上に成形したものが「コーンフレーク」になります。

画像8

種を発酵させた酒は「コーンウィスキー」として有名です。
バーボンなどウィスキーの原料として利用されたり、ペルーやボリビアなどを中心に造られるチチャは、人が噛んで唾液の酵素で発酵させていました。

画像7

ここでトウモロコシ全般の植物的な特徴をおさらいしておきましょう。
大型イネ科の一年草で、茎は単一で直立し、高さ2メートル近くに生長します。一生のうちに付く葉の数や背丈は品種によってほぼ決まっていて、早生品種ほど背丈は低く葉の数も少ないそうです。

発芽から3か月程度で雄花(雄小穂)と雌花(雌小穂)が別々に生じます。
雄小穂は茎の先端から葉より高く伸び出した円錐花序で、雄花だけがついた小穂を密につけ、ススキの穂のような姿になります。

画像3

【家畜用飼料用途の デントコーン】

雌花は全体的に包葉(苞)に包まれていて、上端から絹糸と呼ばれる長い雌しべの花柱だけが、ひげ状に長く束になって外に伸びだして顔を出します。トウモロコシのひげはこの雌しべに該当します。

画像6

花粉は風媒され、受粉すると雌花の付け根が膨らみ種子(可食部)が形成されます。種子(果実)が熟すと穎の中から顔を出します。
種子の色は黄・白・赤茶・紫・青・濃青などがあります。

画像2

トウモロコシは大きくいくつかの品種に分けられ、私たちは食用品種として、スーパーで見かけるものは以下のものになります。

・スィートコーン(スィート種)
実が黄色、白などがあり一般的に茹でたり、焼いたりして食用にします。蒸した実を擦って濾したものは、コーンポタージュとして利用されますね。

・ポップコーン(ポップ種)
いわゆる、ポップコーンが出来る品種です。熱を加えると爆ぜる特徴を持っています。

画像5

・デントコーン(デント種)
成長すると果実に含まれる糖分が、ほとんどデンプンに変わるため通常食用にはしません。主に家畜用飼料や、デンプン(コーンスターチ)の原料、エタノール生産に使用されます。
スィートコーンより背が高く巨大なトウモロコシというイメージです。

画像6

他に、フリントコーン、ワキシーコーン等がありますがここでは省略します。

最後に、日本名について少しだけ整理したいと思います。
日本の植物の命名は、アジアから伝わってきたものに対し(正確さに欠けますが)「チョウセン〇〇〇」とか「トウ〇〇」などと付けられます。
トウモロコシの場合の「トウ」は「東」という意味ではなく、唐の国から伝来してきた「モロコシ」という意味なのです。

それでは「モロコシ」とは何なのでしょうか。
一般に「モロコシ」とは、タカキビ(コーリャン)、ソルガム、ソルゴーの事を示し、トウモロコシとは違うモロコシ属という違う分類になります。
意外にも、モロコシの生産量ではコムギ、イネ、トウモロコシ、オオムギに次いで世界第5位という生産量なのです。

上記で出てきましたタカキビは高黍と書き、背の高い「キビ」という命名。しかし一般に「〇〇キビ」と名がつくものはキビ属という分類で、タカキビはモロコシ属。北海道ではトウモロコシを「トウキビ」とも呼んでいます。ややこしいですね。

命名は容姿が似ているというだけで似た植物の名前を付けたり、海外から入ってきたものを勝手な思い込みでネーミングしたり、商品名や愛称が一般名称になる事が昔からあり、これらが結構誤解や混乱を与えています。

画像8

これらの植物は、就農されている方や酪農をされている方以外では、なかなかお目にかからない植物になってしまいました。かつては山間部においてコメなどに混ぜる主食用として栽培され、第二次世界大戦後の食糧難の時代には一時栽培が拡大しましたが、すぐにコメの生産量増大によって栽培は激減しました。現代日本では「インコの餌」に若干含まれている事で、多少の認知はあるくらいでしょうか。

最後に
最近は遺伝子組み換えトウモロコシが巷に出てきて久しいですが、2021年はついに遺伝子組み換えトマトも出荷されるニュースがありました。
本当に安全なのか長い時が解決するかもしれませんが、今を生活している私たちはそんな長い期間は待っていられませんね。

■参考
遺伝子組み換え農作物の現状について 農林水産省

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?