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ルポ【パレスチナ難民キャンプ⑩ [来訪者]】

皆さんこんにちは。

前回の投稿はこちらからお願い致します。

5月6日月曜日からラマダーンが始まりました。
ムスリム(イスラーム教徒)は一ヶ月間、飲食、喫煙、性交などの行為が日の出から日没までの間はすることができなくなります。そして、日没後の断食を解く食事を「イフタール」といいます。
先日、私はラマダーン初日をバカアで過ごし、イフタールにも参加する機会がありましたので、そのレポートもまとめていく予定です。

今回は2月23日のレポートです。

【2019年2月23日(土)】

およそ1ヶ月ぶりとなったバカア訪問。これまで毎週通っていた現場であったことから、体感的にはもっと長い期間のように感じられた。

この日、ムハンマドさんに呼ばれたのはサッカークラブのためではなく、彼の活動先である学校で新たな企画を検討しているということで声を掛けられたのがことの成り行きである。それでも久しぶりにバカアへ行けるというだけで胸が高鳴った。

学校に到着したのは9:30。
土曜日は学校が休みであるため生徒はおらず、校長と2人の先生だけが事務室で待っていた。長い挨拶を交わし、お互い久しぶりの再会を喜んだ。
事務所でお茶を頂きながら世間話をし、本題であるイベントの話題へと移った。両者の話を聞いていると、どうやらこの学校で音楽のイベントを企画しているようである。来週の土曜日に催される、試験の成績証を授与する会には保護者も任意で参加できるため、学校側から選抜された生徒達がその会のなかで歌を披露することになった。そこで、ムハンマドさんは音楽が専門であることから彼らへの指導を買って出たというわけである。

一時間半に及ぶ談義を終え、マフムードさん宅へ向かうと思っていたが、次はハンドボールの練習場に行くという。今日はムハンマドさんの息子がハンドボールの練習試合に出場するのに加え、有名なプロボクサーが来場する日でもあるらしい。

(試合前。この日はバカアのハンドボールクラブの紅白戦だった)

運動場に到着すると、選手、コーチ、大勢の観客、そして報道陣が既に集まっていた。選手達はウォーミングアップをしているところで、会場は熱を帯びていた。試合が始まり、年下にはまるで見えない強靱な肉体をした男達が体をぶつけ合いながら戦っていた。
2クォーターが過ぎたところで大きな歓声が会場中で沸き起こる。何事かと入り口に目をやると、先ほどまで熱戦を繰り広げていた選手達以上に屈強な男性2人と、お付きの女性達が運動場へ入ってきた。話に聞いていたプロボクサーとそのコーチである。ヨルダン人記者も複数来ており、取材や撮影をしていた。
のちにその選手について調べてみると、彼は元WBCチャンピオンという称号を持つ有名な選手であった。

(急遽開催されたサッカーの交流戦)

プロボクサー、コーチ、そして地元のサッカークラブの子ども達を交えたサッカーの交流戦のようなものが急遽開かれ、現場は一層熱くなっていた。
試合後、彼らは引き続き取材があるためか記者と共に運動場を去って行った。
その後はハンドボールの残りの試合を観戦したのち、ムハンマドさんと運動場を後にしてマフムードさん宅へと向かった。
マフムードさんは変わらぬ笑顔で歓迎してくれて、3人で談笑しながら昼食を摂った。

(国内最大規模のパレスチナ難民キャンプ。通りは複雑に入り組み、治安の面でも多少の問題を抱えることから、外国人が一人で入り込むことは難しい)

ここではよそ者である人間に対して怪訝な表情を向けられたり、煽りを受けたりすることが常であり、不快な思いをすることも珍しくない。それでも、ここに来なければ知ることがなかった現実に直面したり、いくつもの出会いがあった。何よりも、難民問題に関して真剣に考える機会を与えてくれた。

この日は特に活動らしいことはしなかったが、アンマン行きのバスに揺られながらこれまでの経験を回想していた。

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