ルポ【パレスチナ難民キャンプ③ [パレスチナとイスラエル、どっちが好き?]】
皆様こんにちは。
前回の投稿はこちらからお願い致します。
また、投稿している写真ですが、現場の性質上あえて個人や場所が判別できないようなものを抜粋して投稿しております。
【2018年11月3日(土)】
7:30。
バカアのバス停へ降り立ち、ムハンマドさんと子ども達と合流した。この日、学校行きのバスには見慣れた子どもの他に一部初めて見る子どもが同乗していた。学年を聞いてみると全員が小学校6年生以上で、受け答えもしっかりしている印象を受けた。
学校に到着した後はいつものようにランニングや準備運動といったウォーミングアップから始まり、徐々に動きの大きい練習へと移っていった。今日はゲームがメインの日で、何度かチームを編成しながら試合を進めていった。一部の子どもは途中休んだりもしていたが、大半は最後まで運動場を縦横無尽に走り続けておりポテンシャルを見せつけられた。
(練習風景)
練習終了後、先方の手違いもありバスの到着まで1時間半近くの暇があったため、バスの車内で子どもと一緒になって談笑していた。
会話のなかで何人かの子どもにバカアでの生活はどうか聞いてみたところ、特に不満のあるような返事は帰ってこなかった。やはり毎月会費を払ってサッカークラブに所属しているだけあって、彼らは地域内においてある程度は満ち足りた生活を送っているのかもしれない。
そのような他愛もない会話をしていると、答えに窮するような質問を受けた。
「マルズークはパレスチナとイスラエルはどっちが好き?」
ヨルダンに来て5ヶ月だが、この問いを受けたのはこれが初めてだった。
個人的な意見としては、歴史的な要素を考慮すれば即答できるような質問である。しかし『安易に答えて良いものか』と一瞬たじろいでしまった。
結局素直に自分の気持ちを述べたところ、子ども達全員から「自分も同意見だ」と握手を求められた。
彼らと打ち解けたなかで、一人の子どもは特に何をするわけでもなく私に寄りかかり「حبيبي مرزوق(親愛なるマルズーク)」と何度も呟いていた。私の来訪を歓迎してくれる人がいることに安堵した瞬間だった。
自分自身まだバカアでの日は浅く、ここに住む人達のために何も成し遂げたわけではないため、今後も通い続けていくなかで自分にできることを模索していかなければならない。
彼らの飽きがピークに達した頃にバスが到着し、難民キャンプへ戻るべく出発した。約10分後に到着し、子どもはそれぞれの家へ、私達は昼食をとるためにマフムードさん宅へとそれぞれ帰って行った。
いつもであればゆっくり談笑しながら昼食をいただくところだったが、この日は時間が押していたため、食事を胃に詰め込んで落ち着く間もなく土曜塾へと向かった。
教室に行くと、子ども達が私達の到着を待っていた。私は前半にアラビア語のクラス、後半は英語のクラスに入り、いずれも後方から授業の様子を眺めることにした。
アラビア語のクラスでは低学年と思われる小柄な子どもも、おそらく高学年であろうひときわ背中の大きな子どもも教室におり、同じ授業を一緒に受けている。今日来ていた4人の子ども達に学年を聞いてみたところ、1年生、2年生、4年生、6年生と皆ばらばらであった。
内容としては、日本語でいうところの「ひらがな」のようなものを教えており、小学校低学年・高学年にあたる子どもたちがが皆、同じ内容の授業を受けている。
この日の全ての日程が終了した後、マフムードさんに「なぜ本来は休みである土曜日に彼らは塾に来ているのか」「彼らは無料で授業を受けているのか」といった、以前から疑問に思っていたことを投げかけてみた。
「彼らはアラビア語を話すことはできても読み書きができない。だから平日通っている学校とは別に、土曜日は補修のような形でここに授業を受けに来ている。しかし無料ではなく月に20JDを支払っている。そして英語を習いに来ている子達も同様で月に15JDを支払ってここに来ている。」
ヨルダンでこれほどの教育格差があるとは考えもしなかった。単純な学力の差などではなく、母国語の読み書きの次元である。
今日来ていた子ども達は月賦を支払うことで授業を受けることができている。しかし、このような施設の存在をそもそも知らない、あるいは月賦を支払うことが難しいがゆえに、大人になってからも読み書きが十分にできない人は地域内に一定数存在するのではないかと思った。
のちに配属先の先生に、ヨルダン国内におけるアラビア語の識字率の話を伺ってみると、やはり国内の深刻な問題の一つである旨を嘆いていた。
おそらくバカアに行っていなければ、この問題を知るどころか考えることもなかっただろう。もしかしたら、まだ自分の知らない更なる潜在的な困難がこういった難民キャンプにはあるのかもしれない。
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