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短歌

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#エッセイ

すべての犬たちが幸せでありますように (犬の短歌 12首)

小学四年生の、誕生日だった。

ゲージに入れられやってきた1匹のコーギーの子犬。その日から「クッキー」は我が家の一員になった。

クッキーはまだ耳が立ったばかりの赤ちゃんで、最初は本当に大変だった。やんちゃすぎる彼は私や弟のジーンズの裾にかみついて、楽しそうに引っ張り始める。穴だらけになってダメになったズボンや靴下がいくつもあった。

しつけをして、一緒に暮らすためのルールを覚えるまでは、かなり振

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歌集を買って読む

歌集を買って読む

 短歌って面白い。
 それに気が付いたのは、枡野浩一を読んでからだった。

 ハッピーロンリーウォーリーソングと題された文庫本を、ごくなんとなく買ったのだ。

 真っ白な表紙にそっけない手書きで、タイトルと作者名だけが書かれている。本を傾けて小口を眺めると、カラフルな色紙で本文が構成されているのが分かる。パラパラとめくると、見開きに一行だけの短歌と、なんてことない風景の写真が載っている。

 この

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「短歌を始めたのはいつですか」

「短歌を始めたのはいつですか」

短歌を始めたのはいつですか、と尋ねられると、「いやあほんの数年かじっているだけで」などと曖昧に答えるのが常だが、正確な答えを、実はわたしは知っている。

二〇一一年七月十日。ETV特集「この世の息~歌人夫婦・四十年の相聞歌」が放映された夜からだ。

その日の日記には、どうにか三十一文字に収まったというような、痛ましいくらいに未熟な短歌がいくつか並び、その後には「歌人の最期は辛すぎる。ずるい」

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