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女シリーズ

5
女たちの詰め合わせ
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#読み物

あざとい女

あざとい女

気持ちが悪かった。
久しぶりに電車に乗った。男友達と飲みに行った帰りだった。電車に乗るのが非日常だという感覚が、気持ち悪かった。私は、それほどまでに外に出ない生活を送っていたということを、今の初めて自覚した。
今夜は、新宿二丁目のゲイバーとメイド喫茶に行った。大いに酒を飲んだ。
でも、そんな日常から掛け離れた異世界よりも、この電車の方が異世界だと感じられた。
私は、学生の頃聴いていたビートルズなん

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ズルい女

ズルい女

彼氏と楽しくデートして、じゃあバイバイと駅で別れてから、家まで歩いてたったの10分だった。一人で夜道を歩き始めて5分足らずで、昨日観た映画のワンシーンを思い出した。

もう、無理だと思う。僕たちもう終わったんだよ。

二股をして、四年間付き合った優しい彼氏と別れた女が、今度は二股相手に二股され全て失い、元彼に復縁を迫る。
お願いだから私を一人にしないで、失ったものの大切さにやっと気づいたの、と。

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耐える女

耐える女

何をしたいのかわからなくなってくる。
家に帰りたくない。

私、何してるんだろう。ふと、そう思った。

ハローワークに失業手当の手続きに行った帰りだった。
駅のホームで、椅子に座ったまま、足が動かなくなった。家に帰る気が起きず、漠然とした不安感に押し潰されそうになる。
昨日も母に、うちの家計は火の車だと言われたばかりだ。

ぼうっと宙を眺めているうちに、目頭が熱くなってきて、あわてて目を瞬かせた。

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初恋が忘れられない女

初恋が忘れられない女

私には好きな人がいる。
学生の頃の初恋の人だ。そんな人のことをまだ好きなのかと、呆れられるのは承知の上だが、本当に忘れられないのだから仕方がない。

あの頃から、もう数え切れないほどの年月が経つ。しかし、新しい良い人が出来ても、私は彼から逃れられない。
ああ、彼だったらこういう風にするのに。
こんな話もできるのに。
こうしても平気なのに。
だから、いけないと分かっていても会いたくて堪らなくなってし

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優柔不断な女

優柔不断な女

小さい頃、いじめられていた。
どうしていじめられたのかといえば、私の性格が問題だったからだと思う。私は、誰かに褒められたい、認められたいと思うと同時に、人に嫌われるのが病的に怖かった。調子の良いことをよく言って、周りの友達にちょっと受け入れられたと感じると、調子に乗り過ぎておかしな事をした。私と仲良くしたい子なんて、いなかった。出しゃばれば、恥をかかされ、陰口も叩かれる。
いつも日陰のタイプだった

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