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ボクだけの図書館 

蔵書は少ないが、災害にはあわない

#わたしの本棚
人生をかえた一冊

 ボクが読書を始めたのは19歳の頃からだ。一時間半かけての予備校通いの時間を使ってスタートした。能力の低いボクは、かけ算7の段で躓くように、読書は後戻りしながらしかできなかった。今もそうだ。だから、一時間で30ページしか読めない。

 とは言え。その頃、知り合った才女との差を埋めるのは読書しかないと思った。その才女と一緒になることはできたが、なんらアカデミックの差は埋まっていない。ただ、本の一冊も読めなければ相手にされなかったと思う。

 先日、家内にその話をしたところ、全然気にしたことはなかったと。ただ、一度決めたことは無理をしてもやるなと見ていたとも。

 ということで、ボクは読書を約45年続けています。25年くらい前からブログを始め、読み書きの文芸活動となった。三年前にはKindle出版をし、今は1日一作を目標にnoteを書いている。

 さて、構えて19歳から始めた読書とは。夏目漱石著「こころ」だった。もちろん、頓挫寸前の10日間かけて読み終わった。とうぜん、主人公と先生との関係以外はわからなかった。

 次に読んだのは、島崎藤村著「破戒」であった。これには感動した。当時興味をもっていたアメリカ黒人社会と重ね合わせながら読み解いた。主人公:丑松の心の揺れがよくわかった。終盤、理不尽には触れず身分を謝る行動に感動した。さらに、自身の生かせる場を求めた行動には圧巻だ。

 「破戒」から、早くも読書を楽しみ始めた。小説では、藤村の諸作、太宰治著「人間失格」「走れメロス」や志賀直哉「城崎にて」「清兵衛と瓢箪」「網走まで」を中心に読んだ。幸田露伴「五重塔」は、特別に多く読んだ。また志賀直哉と三島由紀夫は、ほぼ読んだ。

 社会科学の学問的な本も読んだ。マックス・ウェバー「プロテスタンティズムと資本主義の精神」、カール・マルクス「経済学・哲学草稿」、大塚久雄「社会科学における人間」、堀尾輝久「現代教育の思想と構造」などはバイブルのごとく読み返した。

 海外文学も好きだ。なんと言っても、セルバンテス「ドン・キホーテ」がいい。また、それを追える作品としてシェークスピア「マクベス」、ドストエフスキー「白痴」、モーム「月と六ペンス」。

 40歳の頃、夏目漱石生誕90周年企画で写真集付全集が刊行することになった。家内のすすめで、毎月購入して読むことにした。値段は同等品の倍であった。配達されると嬉しかった。手が震えた。新刊の匂いがたまらない。もったいなくもつぶさに読んだ。さすがに、漢詩や英文は読めなかった。それ以外は、詩歌も含めて読んだ。

 ボクは初期の作品では「草枕」「虞美人草」「三四郎」が良い。後期の作品では、圧倒的に「こころ」が好きだ。ストーリーはさることながら、多くの漱石の作品を読んで「こころ」を読み解くことが出来たからです。

 英国留学のカルチャーショック「倫敦塔」に始まり、漱石は文学を自然科学の公式により著したいと考えた。最終的にその理論は「文学論」にまとめた。そして、「こころ」で見事に登場人物それぞれを動かすことで「心(こころ)」という物を科学にまで昇華した文学を描くことに成功した。


 ところで、大学の入学式で都市社会学の第一人者磯村栄一学長が話したことをはっきり憶えている。

「どんなに立派な図書館を作っても火事などの災害ですべてを失う。皆さんは、しっかり読んで身につけてください。万難の図書館をもってください」

 ボクは知能の関係で、未だに本を読むのが遅い。でも、遡って理解をする努力は怠っていない。だから、読んだ本は概ね身についている。恥ずかしながら、”ボクなりの万難の図書館”である。さらに、便利が良いことがある。以前読んだ本ならば、アーカイブのように引き出しさながら空想読書を楽しむことができる。数えたことはないが、500話くらいは蔵書してある。

万が一、読書を出来なくなっても”ボクの万難の図書館”からアーカイブを引き出して楽しめる。

かわせみ💎

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