現代詩の世界2022 坂本達雄

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現代詩の世界2022 坂本達雄

現代詩を書いています。             https://poet.jp/author/坂本達雄/

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最近の記事

2024/3/29 『 時 』

記憶するのは誰ですか 思い出すのは誰ですか あなた自身を思い出してください 過去のあなたではなく 現在のあなたを。

    • 2024/2/8 『 ソレイユ 』

      アンダルシアの脱ぎ棄てられた靴 ボイジャーの夢は捨てられている 霧が深くてわがままである しんみりとした惑星の陸地で 紳士的言葉の地面を歩きつつあるわたしたち ワルシャワのサインとは、霧雨であろう ひからびたワイシャツで声を隠しているから 君たちの掌にも、一途のことわりがある たまたまの言葉でことわりを貝殻に入れておこう 昔的今昔のこんにちのことわりで たまたまの感情をもてあましている タンジェント、これは感覚である 少ない花瓶の中からこの花瓶を選んだのである それはもう過去

      • 2024/1/11 『 詩的・神体論(2)』

        尾びれを振ってすすんでいくもの 記憶と無意識の果てに 完全な河が生まれている ビザンチンのタイル画で描かれた救い主 舶載の貿易船は過去と未来を行き来する 祭りの為に用意された惑星 言葉の為に造られた人間 感覚の宴というものがあしらわれている ソルジャーたちの戦場である 二本足のロボットたちとともに ピタゴラスの開閉扉を押し続けているのだ ハマリンドウやウマノアシガタ、それに シルクの帽子で千里の荒地を疾走する 曲技団の娘たちとサーカスのライオン または白熊、それから黒豹、かれ

        • 2023/12/19 『フォト・太郎さん』

          湯舟につかった太郎さんの写真を見る 湯舟は規定の構造体である あんまり好きではないのであるが 頭を洗っている シャンプーは泡だっている、そのため 火星の温泉につかっているように思えるのである 暗示的様相であるところの、それらの水は もともとは火星の岩石から抽出されたものである やがて真剣にその湯舟の中から脱出する方法へと 思考回路は切り替わるのであろう、その時には ユーカリのような堅い葉を持つ植物が必要である 太郎さんの声で人間の言葉を話す必要があるでしょう しかしその太郎さ

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        • 現代詩の世界2024
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        記事

          2023/12/11 『 旅人 』

          それは静けさであるのか ガンジスのあたりでは小雨である 丸くなったストゥーバは 極限からのヒスイの言葉で語るのでしょう それからの〈陽だまり〉のことも ゆるやかな河の流れのことも ベンジャミンが書き記したように 鳥たちの言葉で安穏と言うべきなのでしょう 実際この付近では、水瓶が泉に立てられて その底から湧き出して来るかのように 神秘的である、珪石の色合いで なめらかなわたしの手に触れて来るのです アジアの方角が示すのは、太陽と霧の中のラワジャです 立葵の方角から、湿った川霧の

          2023/12/11 『 旅人 』

          2023/11/24 『 蠅 』

          ひっきりなしに爆撃される トマトの菜園、君の部屋 飛び散る家具や、シロツメグサ 緑黄色野菜、カクテルグラス 本格的推理小説の序章としてのテーブルクロス マリファナもジキタリスも 平行宇宙を飛行しているのだろうか ボンタンの重なりゆく未来的思考の始まりに やばい草の蔓がからまりながら 未来に起こるであろうシンギュラリティを 雑然とした感覚で語ろうとする ひっきりなしに愛撫される君のひふに ただ眼を閉じて言葉の呪文をかけておこう アサリ、ハマグリ、ウミウシと ヒルガオのうすいピン

          『 神の優雅なる一指 』

          ベアトリーチェ、固唾をのみ見つめる中 針鼠の子はガザの内部へと 侵入するのであった はすかいに縮緬の帯は渡され 機械の内部の油切れのあたりは ぎしぎしと音立てて 檸檬のように肩を叩き合いながら 巣立ちゆくオオゴンの雄鶏を見舞い給うのだ あらがいがたい冷たい水の美しさから ケルトの民のしっかりと織り込まれた羊布の 色は湿潤の我等の眼をカヤツリグサの浸潤の ときにカラハリ、ときにマタハリ、とわの苦しみ ジョルジオーネ、さすらう詩人のこうもり傘と はたらきの悪い化粧品売りのこの男

          『 神の優雅なる一指 』

          『 マラソンランナー 』

          ウルウルと、陽だまりの〈角〉が ヒルスベニア産の格子構造を持つ 身を天空の〈サンザシ〉に置く 遠浅の海水浴場の焼ける砂は ひび割れたカナダの大地の砂の 天人の衣はひるがえる、するすると 都会の馬たちの声がひたすらに鋭角に 神秘する金属製馬体の土星号令の 突然の驚きは 百の号令のその始末すれば声のただ乗り ゴンズイの評論のコタンの響きの あわいあわい蛭の吸い付いている 陶酔の机の上の昼顔の 定められた足跡の木霊するカプセル その大部分は性懲りもなく 近くでコンクリートを打ってい

          『 マラソンランナー 』

          2023/9/21『  スイフト 』

          モーリヤックの、めざましい僻地の開発する 住まいと言うものは 青い屋根の秋空の透明の 神経は砂のような河を渡り ただだんまりの影の湖水から 響くカコウの声に親しめる 我等の初等教育のはずかしげに土の道の翳り 湿度ある林の奥の下草の、わずかに香る 白い花は、みずからの思考する時間 病める時間の滞在する気象 ひろがりつつうすくなる雲の消えゆき そしらぬふりをしてみあげる山肌へと ナンジャ、ナニージャ、ヒルベルトは崩壊する 芥子粒の指先の世界地図と言うもの ヒワの声がする林の奥の道

          2023/9/21『  スイフト 』

          2023/8/10  『 水 』

          肥沃な土地をおびただしい水が灌漑していく それはマリアージュ、君だけの秘密にしておいて ずいぶんと密林の弦楽四重奏のほとぼり 悩み深い我等の音楽指導員、彼女までも ピアノ曲からシンフォニーまで おそらくはガルシアのように キジの声からヒントをもらい うだる暑さの美しさと言うものをたとえようもなく 哀れなる怪盗の最後の息継ぎの言葉、春の声 よどみなくすみわたる後悔の華が咲く そうした経過と観察と結論付けされたあまたの自恃を 多治見の工房からながめていたのである すべての穏健なる

          2023/7/27  『 ソーダ水 』

          突撃する子葉体 これらの性格は無駄なしぐさだと了解される エスペラント語の本質的理解を欠いたまま 古代の出窓に正月が来る 触感的にふるさとがあら塩で遠ざかる 起請文に血判を押して 極彩色のアルカディアを想像させる遠見やぐら すべての蛇は死者の耳から登場する 廃寺跡から防水性の彼岸花が開く時 彼等のともしび、すなわち彼等の懐具合い ジープが進行する泥と血の混じるこの道を ハインリッヒはすくなくとも一度は 通ったはずである、東から南へとまっすぐに この後は、ほがらかに後始末するの

          2023/7/27  『 ソーダ水 』

          2023/7/10  『 アイリス 』

          それは飛行する物体として多くの人が見たものである しかしそれを正しく認識することはできない 偶然のように現れて、ただなんとなく消えて行く 明るい太陽の下で、それが輝いている あるいはわたし自身が飛行するのであれば それを追跡することも可能であるのだが パイロットは現在、ひとりの人間である 判断力も、思考能力も、完璧である その彼が羽を広げて、乾かしている 飛行する空からは、この町は小さな貝殻である ゆっくりと観察してみたまえ、ゆっくりと 可能な限り多くの時間を用意しているのだ

          2023/7/10  『 アイリス 』

          2023/7/3  『 球根 』

          それらはそもそも不可思議の唇で包囲されている 引くべき時には引けずトンカラの法則で 虫眼鏡だけで跳躍する ただその場合でも、カクテルは朴訥の響きを持つ 水産試験場では〈ナキクジラ〉が コクテールを歌う、ほど良い甘さで 過去を清算するために、歌う 銅鑼の音が響く水銀細工の七面鳥たちが ダブリンの細やかな通路を西へと ただ静かに、そして夢見る兵隊さんたちのように ぎりぎりまで煙草を吸いながら へっぽこ鳥の声をなつかしく思いつつ スタジアムの空気を総入れ替えするために 細い葉の芝草

          2023/7/3  『 球根 』

          現代詩の世界2023/6/22 『 カトレア 』

          カトレア、またシンガポールの落日 区別された体操選手、混濁された意識の落日 消化器官のアルコール漬け、ヒンズーの祝祭日 頂点からさまざまに気高く、そりかえる招魂碑 たくましく、そして若気の至りとして ソーシャルにひんむかれたともしびである 路上の藍色の昆虫たちが 無理をしてでも、大量の胞子を飛ばして増殖する ルオーの絵画の裏側から、光を当てて たくましい、大江戸の排水計画と言うものが 赤土の泥とともに小便小僧を大地に建てる かがやかしい船酔いの頃あいである ムジナが石垣からは

          現代詩の世界2023/6/22 『 カトレア 』

          現代短歌2023…6/13②『 大鴉(おおがらす) 』

          ・ 大鴉 ゆきたる人の なかりせば 何をおそれて 指かまんとす ・ ハムレットは 意志する人か 内側へ より内側へ 落ちゆく人か ・ ドビュッシー 水をくぐらせ ゆれる藻の 贖罪するは みもだえること ・ キリコ描く 少女は町を 走りゆく 影 長い影 すべては影か ・ こたえてよ つつじが丘の ゆうまぐれ カンダタ去れば むなしくすると

          現代短歌2023…6/13②『 大鴉(おおがらす) 』

          現代短歌2023・・・6/11『ストロベリー』

          ・ ストロベリー 誘惑するもの さがしだす ここでもないと 鍵かけてなを ・ アンダンテ その手その足 ふりきれず マドレーヌ恋し さがしだしたし ・ リズミック そしてダンスも 星なるか われとなんじの さまよえるまち ・ シシリーは 港町なり 恋人よ スキップステップ 踊るように行け ・ ラズベリー 新鮮なとき かわるとき 青空ジュースの 神聖なとき

          現代短歌2023・・・6/11『ストロベリー』