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2023/7/10  『 アイリス 』

それは飛行する物体として多くの人が見たものである
しかしそれを正しく認識することはできない
偶然のように現れて、ただなんとなく消えて行く
明るい太陽の下で、それが輝いている
あるいはわたし自身が飛行するのであれば
それを追跡することも可能であるのだが
パイロットは現在、ひとりの人間である
判断力も、思考能力も、完璧である
その彼が羽を広げて、乾かしている
飛行する空からは、この町は小さな貝殻である
ゆっくりと観察してみたまえ、ゆっくりと
可能な限り多くの時間を用意しているのだ
地図の上ではここから運河が始まる
そしてわたしたちはこの場所から発射される
燃料は液体である
直前になるとわたしの喉から注入される
やや傾いた地形の上に、水平に建てられた
この施設は、南の空に向かって開かれている
あけぼのの頃、海はしだいに、色を持つのだ
それを一年間見つめていたから
わたしはこの場所の魅力について語ることができる
それは通信施設の入口から舗装された断崖の端まで
一直線に伸びている道であり
両脇にはアイリスの花壇がある
わたしは鳥としてここから
飛び立つのである
全くの未知の世界へと
彼はそのことをわたしに告げる
鳥は羽を広げて乾かしている
空は完璧な青である。