2023/11/24　『　蠅　』

ひっきりなしに爆撃される
トマトの菜園、君の部屋
飛び散る家具や、シロツメグサ
緑黄色野菜、カクテルグラス
本格的推理小説の序章としてのテーブルクロス
マリファナもジキタリスも
平行宇宙を飛行しているのだろうか
ボンタンの重なりゆく未来的思考の始まりに
やばい草の蔓がからまりながら
未来に起こるであろうシンギュラリティを
雑然とした感覚で語ろうとする
ひっきりなしに愛撫される君のひふに
ただ眼を閉じて言葉の呪文をかけておこう
アサリ、ハマグリ、ウミウシと
ヒルガオのうすいピンクの花だけである
爆撃されて破壊されて生き埋めにされて
未来のあたたかな寝室へと
過去のうすみどりの気配が浸潤する
夜光虫の見つめる話し声からは
夕闇の静かな爆撃だけが聞こえるのである
黙って死んで行けと言う小鳥
老いぼれたミサイルは不発のままに秋が来る
手を組み、頭をあげて、その未来に語る
しわがれた三味線のつぶやいている
栄光の蠅が
額にとまる。