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『 神の優雅なる一指 』

ベアトリーチェ、固唾をのみ見つめる中
針鼠の子はガザの内部へと
侵入するのであった
はすかいに縮緬の帯は渡され
機械の内部の油切れのあたりは
ぎしぎしと音立てて
檸檬のように肩を叩き合いながら
巣立ちゆくオオゴンの雄鶏を見舞い給うのだ
あらがいがたい冷たい水の美しさから
ケルトの民のしっかりと織り込まれた羊布の
色は湿潤の我等の眼をカヤツリグサの浸潤の
ときにカラハリ、ときにマタハリ、とわの苦しみ
ジョルジオーネ、さすらう詩人のこうもり傘と
はたらきの悪い化粧品売りのこの男
けだし湖の桟橋へと泣き虫をつれて来い
ひびわれて立ち眩みする蛍光発色の
タルホの樹、ひしがれて涙目をする霧の中
とんでもない、筋肉の倒立する岸辺のテント小屋で
彼等は彼等の意味あいで
ひさごからとりだして、ひさごからそそがれる
水の色、朝まだき、霧の色
そのままではいけないと、とりいだしける
噴射式ペリカンの放射線入り塗料
やままたやまを乗り越えて
ひがしの方へと急ぎ行く彼等の
懐はひなひなと情けなや
団子ひとつも買えない資本主義経済の道中でござります
神はここに立ちて語るべし
カンナ、グラジオラス、ベルモンテ
トマト、わくらば、ヒンズー教徒
チャイナの民の広大な大地の舌である
塩辛く我が民は深鍋で炒めるのである
貯蓄する平均的給与取りの銀行通帳より
為替相場の連日の乱高下する
神はその額に手を置きて
なにやら深く思慕する
その可憐なる女神の如き思慕する思いは
さんざんたる一日の最後の一瞥
とうしろうには知るべくもない
栄光の落日である
神ははや眠ろうとする
その優雅なる一指をもって
眠ろうとする。