王様の異常な愛情 〜または私はいかにして心配するのを止めてチョコレートを愛するようになったか〜
降る雪がすべての音を吸い込んでしまったある寒い日の午後、プラネタリウムの特別展示室のベンチに座ってオルダス・ハクスリーの『すばらしき新世界』を読んでいると、遠国幽香が向かい側にあるミュージアムカフェでコーヒーを飲んでいるのが見えた。
僕は栞代わりのパンフレットを本に手挟むと、プラネタリウムの上映が始まるまで王様の様子をそれとなく観察することにした。僕はリスナーの鑑なので配信外でVtuberに話しかけたりはしないが、そうは言っても、手持ち無沙汰な時間を誤魔化すには一度読ん