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焦げた味噌がたまらん。

 ここの所週末になると家の片づけに精を出している。

 今日も朝から台所の片づけを熱心にやった。

 置きっぱなしでほこりをかぶっている飲みかけのお酒のボトルを見てみるとわずかに残っており捨てるのはもったいない。
 
 妻から飲まないんだったら捨てたらと言われたがそんなことをするとお酒の神様から見放されるのでそれは選択肢にない。
 
 ほとんどがウイスキーと焼酎なので傷むことはないので今晩からしばらくはそれらの無念のお酒を消費したい。
 
 日本酒やワインなどの醸造酒は残っていたら料理に使うので余ることはあんまりないが浮気性なのでウイスキーのような蒸留酒はついつい溜め込みがちだ。

 そういえば父の世代までは家に人を招いては洋間に通してそこで舶来もののウイスキーを振舞うのが何よりのおもてなしだった。

 その頃はお呼ばれというのは普通にあって父がタバコをプカプカふかしながらお客さんと水割りを飲んでいる姿には憧れたものである。

 そんなときにひょっこりと顔を出しておじさん、いらっしゃいと挨拶をするとよく出来たお子さんですねと言って、ほら坊やお小遣いだと言って岩倉具視が描かれた懐かしの五百円札をピラリと財布から出してくれた。
 
 子どもにとってお札をもらうというのは何とも特別感があり、ありがとうおじさん!と元気よくお礼を言って上機嫌で洋間を離れた。

 そして子供部屋に戻って何を買おうかなとお札を眺めてニヤニヤしていると兄があっ、こいつおこづかいもらっちょると言って母にすぐにチクりに行った。

 すると母が光の速さでやってきてこれはお母さんが貯金しとくけぇと言って没収されることも度々あった。

 あるあるだがそのお金が手元に戻っってくることは決してなくて行方不明になるのが定番だった。

 それでも父は本当に人をよく家に連れてきていたのでお小遣いをもらうチャンスはいくらであった。

 その度に挨拶やら国語の教科書の音読、当時流行っていたアイドルの物まねなどをして小遣い稼ぎに精を出した。

 あの頃からお調子者だったと思うと今とあまり変わっていなくて三つ子の魂だなぁと思う。

 今はもう父も仕事をリタイアしてずいぶん経つので来客もあまりない。

 あれほど好きだったタバコも健康上の理由でかなり前に禁煙に成功した。

 ゴロゴロと転がっている酒瓶を眺めていたらそんなことを思い出して懐かしい気持ちになった。

 そういえば晩酌の習慣は父譲りだなと思って昨日の晩御飯は何食べたっけと記憶をたどる。

 昨日は冷蔵庫に使いかけの白菜が半玉あったので何にしようか頭を悩ませていた。

 私は白菜とツナを麺つゆでクタクタになるまで茹でた煮物が好きなのだが
妻はこれが苦手であまり食べてはくれない。
 
 炒め物に使うこともあるがそんなに好きじゃないらしくテンションが明らかに下がる。

 なのでここは無難に鍋にすることにした。

 そうと決まれば後は買い物、行きつけのスーパーで食材を買い込み帰宅。

 昨日の鍋は家では初挑戦の土手鍋にすることにした。

 メインになる具材の牡蠣を探したが売り切れでシーズンオフが近いからか売り場に姿が無かった。
 
 仕方がないので鱈と殻付きのエビを買った。

 野菜は白菜とシイタケ、春菊、えのきを揃えた。

 鍋に白だしを入れて下味をつける。

 鱈とエビは塩をして臭みを取っておく。

 鍋肌に味噌をケーキをデコレーションするように塗り付けておく。

 これで鍋の下拵えは完了。

 後は副菜を作っていく。

 砂肝の固いところを切り落として半分に切る。

 それをフライパンで炒めて塩コショウをする。

 ある程度炒めたら玉ねぎを加える。

 玉ねぎがしんなりするまで火を通したらケチャップ、オイスターソースで味を付けて仕上げる。

 これで砂肝のケチャップ炒めの出来上がり。

 それでは居間にご飯を運んでいただきます。

 昨日のお酒はビール。

 プルタブをプッシュと起こしてコッコッコとグラスに注ぐ。

 泡が落ち着いたら妻と乾杯。

 グビグビ―ッと飲み干すと今日も一日お疲れさんという声が聞こえてきそうになる。

 鍋が沸騰してきたら鱈とエビを入れて野菜も投入。

 グツグツするまでは砂肝をつまみにする。

 パクリと食べるとケチャップの甘い味と砂肝のショリ、サクとした歯ごたえがよく合っている。

 オイスターソースを入れているのでコクもあってなかなかいいつまみになった。

 そのうちに鍋が沸くので鍋肌に塗っている味噌を溶きながら味をつける。

 まずは鱈を食べると実が締まっており食べ応えがある。

 間髪入れずにお次はエビに。
 
 アチチと言いながら殻を剥いてパクッ。

 プリプリッの弾力があって濃い旨味が口の中に広がる。
 
 うん、これもいいなと言いながら野菜もちゃんと食べる。

 土手鍋の良いところは煮詰まってきてもお湯をさして味噌を溶いたら味がまたしっかりつくところである。
 
 初めて食べたという妻も気に入ったようで美味しいねぇと言いながら箸が止まらないようだった。
 
 あっという間に食べつくしたので締めにうどんを入れると鱈やエビの殻から出た出汁も加わって極上の味噌煮込みうどんになった。
 
 実家では何度か食べたことがあるが味噌仕立ての鍋もいいもんだなぁと思った。

 二人でハフハフとうどんをすすって出汁もきれいに飲み干した。
 
 それだけ食べるとさすがに満腹になった。

 鍋シーズンも終盤戦だが味付けを少し変えるだけで新鮮な気持ちで楽しむことが出来た。

 さぁて今日は何を食べようかな。

 飲み残しのお酒が沢山あって困るなぁ(ニヤニヤ)

 いやだなぁ一晩じゃ飲み尽くしませんよ、たぶん。

 


 

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