【旅blog】ベトナム統一鉄道の旅 6
◾️8月13日(4日目)
フエに到着した。
駅を出ると早速ベトナム人の女性が私に話し掛けてきた。海外旅行はステージが変わるとRPGのようにすぐイベントが発生する。特に東南アジア。
「宿、宿。安い安い。」
「いくら?」
「2,500円」
電車移動の疲れから
他に探すのも面倒だと思い、
彼女の宿に決めた。
宿は駅から少し距離があり、
女性の運転する車に乗せてもらった。
フエはホーチミンと全く違って
こじんまりとして落ち着いている。
宿に着くと、やはり私の警戒心が働き、まずは部屋を見せてもらうことにした。女性はOKと言って快く部屋に案内してくれる。
最上階の部屋だった。
しかもかなり広い部屋でテラスまで
付いているではないか。
そこにはテーブルと椅子が設置されていた。
夜はここで333(バーバーバー)を飲もう。
そう思った。
こんな良い部屋に2,500円で泊まれるとは
かなり運が良かったのではないだろうか。
「ちなみにWi-Fiは使える?」
「もちろん。」
素晴らしい。
テラスから部屋に戻ると床に少しブイ(羽虫)が落ちて死んでいるのに気付いたが、まぁよくあることだろうと思い、特に気にも留めなかった。
部屋で少し休んでから私は世界遺産の遺跡を見に行こうと思い、一階の受付に降りた。
受付に先ほどの女性がいて、
私を見つけて言う。
「原付乗る??滞在中1,000円で良いよ。」
「国際免許持ってないんですよぉ。」
「ベトナムは国際免許いらないよ。」
即決。
海外で原付に乗れるとは
夢にも思っていませんでした。
私は遺跡に行くのを明日にして、原付を使って思う存分町を走り回ることにした。
町を抜け、川沿いを走ったり、橋を渡ったり、私は何を考えていたのか目印も何も覚えずに走りまくった。
多分、海外で初めて原付に乗ったことでハイになっていたのでしょう。
案の定、私はよくわからない村まで来てしまったのだ。観光地感なんて皆無で、下手したらスライムとか出てきそう。
村の理髪店のようなところに入り、地球の歩き方の地図を見せると店内の客がみんな集まってきてああだこうだと帰り道を教えてくれた。
なんて優しい人々なんだ。観光地の経験だけでその国の人柄を決めつけてしまってはいけないなと思った。
人はそれぞれです。まさに学びの旅。
そして、地球の歩き方を持っていたらどこまででも行けるんじゃないかと思った。
ちなみに借りた原付は燃費がかなり悪く、帰り道ですぐにガソリンが尽きた。
こりゃレンタル料金よりもガソリン代でたこつくんじゃないか…?
重い原付を引きながら、どこにガソリンスタンドがあるのかと探したが見当たらず、とある売店で聞いてみると奥からペットボトルを持ってきて中の液体を私の原付に注ぎだして金を請求してくる。
おいおい、これ本当に走るんだろうな?と日本語がわからないのをいいことに言いたい放題であった。
エンジンをかけると普通に走った。私はまたもや人を疑ってしまったのだ。
おい、おやじ。水とか入れてんじゃねぇだろうな?ああ?
そう思った自分が恥ずかしい!
のちに知るのだが、フエの道路には
たまに人が無表情で立っている。
その立っている人に話しかけるとイベントが起こるのだ。そう、横に置いてあるクーラーボックスの様なバッグからペットボトルを出してガソリンを補充してくれるのだ。
せめて「ガソリン」ってだけでいいから看板を立てておいてくれ!
ホントRPG。
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宿に戻ると女性が言う。
「ナイトマーケットあるよ。綺麗。」
イベントに従ってフォーン川のほとりにあるナイトマーケットへ向かう。
かなり盛況でホーチミンのナイトマーケットより食材が豊富だったと思う。 ホーチミンのナイトマーケットは土産物のグッズが多い。
そして、タイミングが良く、その川のほとりで夕陽を眺めることができた。
私は生まれて初めて夕陽が美しいと思った。基本的にブログ内の写真は加工をしていないのだが、もちろんこの写真も加工していない。
加工せずにこの色合いなのだ。
沢木耕太郎が、マレーシアにあるマラッカの夕陽は世界で一番美しいと小説に書いているのを読んで、昔沢木耕太郎とまったく同じ場所に立って夕陽を眺めたのだが、私には綺麗だと思えなかったという経験がある。
これもまた、人それぞれ。
私はこの夕陽を見て、旅に行くと必ず夕陽の見えるスポットを探すようになった。
それから私は川沿いでビールを飲み、鶏肉を食べ、とても良い気分になった。今なら「What a wonderful world」はマッチするだろうか。
そう思ったのだが、川の流れる音やマーケットの雑踏、原付の走る音、虫たちの声が心地よくてそのままでいることにした。
帰りに缶ビールとポテトチップスを
買おうと出店のばあさんに話しかけた。
ばあさんが値段を言うが、どうせぼったくってるんだろうと思い、「もっと安くしてくれ!」としつこく言うとばあさんは「これ以上安くなんて出来るか!お前には売らん!」と言わんばかりに私の手からポテトチップスをふんだくる。
正規の値段だったか…と反省しておばあさんに謝った。また疑ってしまった。人の癖とはそう易々と改善できるものではないらしい。
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そうして、ほろ酔いで宿に戻る。
部屋のテラスから見たフエの町は
とても静かだった。
ポテトチップスを食べて、333で流し込む。良い旅だなぁなんて思いながら、テラスから部屋に戻ると私は驚愕した。
大量のブイが床に落ちて死んでいる。帰ってきたときはいなかったはずなのになぜこんなにブイがいるのだ!
窓から外を見るとさらに驚愕した。
窓一面にブイがたかっているではないか。
この部屋の灯りにつられてブイが来ている。そして、隙間という隙間からブイが部屋に進入しては死んでいく。
…私は諦めた。
電気を消して、大量のブイの舞う中、布団に潜り、寝ることにした。
たまに顔や腕を
何かが這っている感覚がした。
つづく…
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