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毎年「24時間テレビ」に思うこと

いつの間にかテレビのない生活を何の問題もなく送るようになっていた。それでも毎年きちんと24時間テレビの放送日は耳に入ってくる。

24時間テレビを最後にまともに観たのは何年前だっただろう?中学生?高校生?どちらにせよ10年ほど前だ。
そうなる前までは24時間のうち何時間テレビに張りつけるかを競う勢いで見ていたし、感動を誘う企画に何度も涙していた。難聴のいとこが通う東京のろう学校が毎年出ていて、毎年何かにチャレンジする企画をやっていた気がする。いとこの姿を探して家族と盛り上がった。ある年は実話を元にしたドラマで、医者として父のいとこが関わった少女の話が放映されていたので積極的に観た。後で書籍版も読んだ。

でもある時、違和感を覚えてしまった。
「これでは障害者や病気の人達が見せ物みたいではないか。自分とは違う人たちであると一線を引いて、動物園の檻に閉じ込められた動物を見るかのごとく上から目線で『かわいそう』と思いながら観ることの何がおもしろいのだろう?」
「障害者の人達を健常者を感動させるために頑張らせて、頑張っている本人たちはそれで良いのだろうか? 耳の不自由な人達に合奏をさせるとか、本人たちはやりがいを持ってやれているのだろうか?」
そんな違和感を持つようになったら24時間テレビをあっさり観なくなった。後に「感動ポルノ」という言葉を知り、腑に落ちるようになる。

その後しばらく、24時間マラソンだけは健常者の芸能人がチャリティのためにヤラセなしで本気で頑張っているという印象があったから気にかけていた。でも今となってはマラソンも気にならなくなってしまった。なぜチャリティのためにとる行動が「走る」なのかが理解できなくなってしまったから。

24時間テレビにそういった思いを抱いてきた自分が先日たまたま乙武洋匡さんのnote記事を目にして、首をヘドバンのレベルで縦に振りまくった。
(正直、今日のこの記事は乙武さんの記事の引用さえしてしまえばもう何も言うことはない、くらいの気持ちで書いている。その割にはたくさん書いているけれど。)

2つ拝読したのだが、まずは2019年に書かれたこちらの記事。

24時間テレビの功罪について書かれていて、罪の部分はもちろんのこと、多額の寄付金集めに成功しているという功の部分もまさしくその通りでしかない。やり方に疑問はあれど、それにより助けられている人達も世の中にはたくさんいる。
自分自身、24時間テレビのロゴが入った福祉施設の車は何度も見たことがあり、その度に24時間テレビの凄さを思い知らされる。そしてその度に「寄付金を集めるための手段としてなら、障害者や病気の人を見せ物にして“感動ポルノ”を流しても構わないのだろうか?」とスッキリしない気持ちを抱えてしまうのだった。

そして、そんなスッキリとしない気持ちをスッキリとさせてくれた記事が、もうひとつの乙武さんの記事。上の記事を引用して先日書かれたばかりの記事だ。

「24時間マラソン」にかえてこんな企画をやってみたらどうだろう?という内容の記事だ。詳細は読んでいただきたい。
その手があったか!と思わず膝を打った(私には打つ膝があった)。感動ポルノにはよほどなり得ない、番組を観る健常者の多くが他人事ではなく自分事ととして受け止めやすい企画。ああ、こんな企画があったらテレビがなくともTVerで観るよ。

社会の中には様々な生きづらさを抱える人が生きている。障害と名のつくものだけでも、見た目にわかりやすい身体障害の他に、知的障害に精神障害も。病気や高齢で生活に難があったり、妊娠子育て中とか、社会に理解されないマイノリティな側面を持つ人とか。
正直、自分が持たない性質を持つ人への理解を深めるのは難しい。いろんな想像をして必要ならサポートをしようと考えてみても、実際にその性質を持たないと分からないことは山ほどある。自分も、セクシュアルマイノリティであっても他のマイノリティのことはおろか、同じカテゴライズをされる他の人のことすら分かりきれない。妊娠中にバスで立って乗車することのつらさも、頭ではわかっていたつもりでも、実際に体験するとつらさの度合いが全然違った。

だから、完全な体験でなくとも少し垣間見る程度の体験でも体験しないのとでは大違いだと思う。テレビで健常者の有名人が何らかの障害の体験をしてくれれば、その障害を持たない視聴者も追体験ができる。その体験で「体験しないと分からない」という気持ちも持てたら、その障害を持つ人に対してはもちろんのこと、他の生きづらさを抱える人達にもより適切なサポートを出来るように努められるかもしれない。

そういったところに切り込んでくれるチャリティ番組ができたなら、できれば既に大きな力を持つ24時間テレビがそういう番組になってくれたなら、きっと視聴率も募金の数字も社会に与える影響ももっと良いものになっていくだろう。


現状、自分の生き様や思考を晒しているだけなので全記事無料です。生き様や思考に自ら価値はつけないという意志の表れ。 でも、もし記事に価値を感じていただけたなら、スキかサポートをいただけるとモチベーションがめちゃくちゃアップします。体か心か頭の栄養にしますヾ(*´∀`*)ノ