1年1ヶ月のエンジニア生活から見えた2つの会社の対称的な在り方

この4月末、つまり平成限りをもって自動車エンジニアの職を辞めることとなりました。

まだあまり実感がないのですが、ひとまず一通りのことを済ませ、デスクを片づけて最後の勤務を終え……
ゴールデンウィークの長期休暇に入る(+その休暇の前後1日に強制力の高い休暇が入る)ため、4月25日(木)で配属先を後に。

振り返ると、たった約1年間のエンジニア生活。しかし振り返ると、社会人1年目の生活だったこともあり、非常に学ぶことの多い1年でした。

なんといっても、1年間で同時に2つの会社の姿を見ることが出来たのは良い経験です。

どんなところが?と言われれば、書き連ねるといくらでも書けてしまうのですが、せっかくなので今書いておきたいのは、会社の風土による男女の扱い方の違い、LGBTなどと呼ばれる性的少数者に対しての会社の態度について感じたこと、いろいろ。

1年1か月間にわたり所属した会社、そして、その所属会社からの出向で10ヶ月間配属され仕事をさせていただいた会社。
2つの会社はとても対称的でした。

はじめに押さえたい、業界の特色

まず2つの会社それぞれを見る前に、性別に関することで自動車エンジニア業界全体にいえる特徴を整理しておきます。

まず、理系職ということで男性が多く、年齢の高い層ほど男性が多いということ。
若い層には女性もいますが、それでも開発現場、エンジニア全体に限って言えば、見た感じ1割もいないのではないでしょうか。

それに伴い、元々は男性社会、縦社会と呼ばれるようなものが当たり前にあった場であることも容易に想像できます。
男性優位、女性を下に見るような発想も、ひと昔前なら誰に否定されることもなく当たり前にあったことと思います。

一方、自動車開発はグローバルな規模で行われます。
少なくとも大手自動車メーカーなら、様々な国の人が開発に携わったり、会社も世界の様々な国に建てられていたりということが当たり前にあります。

世界の中で、先進国の人々とともに開発や販売を進めるためには、男女差別など言語道断、古き日本の性別観は他の日本企業に先駆けて改めなければならないという面もあります。

そしてもう1つ。
理系職の人は、ヒトに疎い人が少なくないです。

理系の人々が集まる職場というのは、普段ヒトではなくモノと対面して仕事をしている人達の集まる職場ということです。
ヒトよりモノを見ている人達の中には、人に対してあまり関心を向けない人も少なくなく、正直ヒトというものには疎い人も多いものです。

よって、世間では常識のようになりつつあるLGBTという言葉も、言葉自体を知らない人がまだまだざらにいます。
悪気はないんです。知ればなるほどと受け取ってくれる人も一定数います。

……というのは、あくまで文系人間から見た感覚かもしれません。
人との対話が上手な人は非常に上手ですし、言い切るのは申し訳ない。

所属していた会社がとった態度の古さとシンプルさ

所属していた会社は、男性だらけの小さなエンジニアリング会社。と言いたいところですが、実はもう社員数的には大企業規模な会社です。
最近女性も少しずつ増えてきたかなという会社です。
この会社、一言で言えば古い習慣が蔓延している状態でした。設立は自分が生まれた後なはずなのに。

そんな環境の中、上層部など、ある程度年齢が上の方は当たり前に「今年の新人は可愛い女の子がいない」「(退職する男性社員に)本当は可愛い女の子から花束を渡したいところだけど……(以下略)」と平気で発言していました。
まずいと思ったのは、かなり権力のある人が冗談とはいえ「来年は女の子全員顔採用しようぜ(笑)」と笑って言っていた時。
また、男性同士でも、上層部の人が愛情として特定の社員を多数の社員がいる前で「お前バカだな!」と言っていたり、ノリで本人が嫌がっていることを強要してやらせたりしていた時もありました。

一方で、若い層ほどシンプルに「仕事で評価する」という人も多く、その場合は男であろうが女であろうがその他であろうが構わない。
ある意味、最も平等といえる態度で接していただけることもありました。
入社当時、男女でスーツの服装が細かく決められていた中で私のネクタイ着用があっさり認められたり、研修やその後も仕事ぶりを褒めていただけたりしたのは、このような側面が上手く出た結果だと思います。

そんな会社で「LGBTフレンドリー」という言葉を使うとどんな反応をされるのか。
実際にやったことがあります。
とりあえず大抵の人が「LGBTって何?」から始まるのですが、自分のような下っ端と直接関わるようなレベルの上の人は「でもこの仕事に性別は関係ないし、あなたのことは一人の人として見ているから」という反応をしてくれました。
ただ、本社に居るような方々は、人づてに聞いた話だと「LGBTは居てもいいけど、会社からLGBTフレンドリーを名乗るのはちょっと……」という反応だったそうです。
まあ、名乗る名乗らないは考えが色々おありだろうとは思うのですが、LGBTは「いてもいい」って何なんでしょう?何様なんでしょうか?
人づてに聞いた話なので、本当はそんな言い方でなかった可能性もありますけどね。

所属していた会社はこのような具合でした。
男社会が根強く残る業界であり、性別問わずシンプルに技術的なスキルがものをいう職でありという環境が、良くも悪くも出ている印象でした。

かなり先進的だったらしい配属先の会社

一方、所属の会社で3ヶ月間の研修を受けた後に配属されたのは、全国で名の知れた、財閥絡みの大手自動車メーカー。
(誰もが社名を察せるレベルで言ってしまっているのはつまり、この会社の素晴らしさを伝えたいからであります。)

過去にはいろいろと問題も起こした会社ですが、現在でも定期的に振り返りの機会を設け、過去の失敗を胸に刻みながら真摯に、しかしアグレッシブに新しいことに挑戦をしていこうという会社の方針が、下っ端の下っ端な私には見てとれました。

そんな会社の社内は、業界柄、いろいろな国の方がいました。
食堂に行って待ち列に並ぶと前の人は英語、後ろの人は中国語で喋っていて、環境に慣れないうちは「あれ?今自分はどこの国にいるんだ?」となることも珍しくありませんでした。
このような風土の中では当然のように多様性が大切にされ、多様性の考えの中には“性の多様性”という観点も入っていました。

社内の規則のようなもの?の中にも人種や性別、宗教などで差別されることはあってはならないということが明記されていて(これは今どきの大企業なら普通なのか?)、それが体現されてもいました(ここは重要)。

体現されていたもののひとつとして自分が感動したのは、自分が配属された後に出来た建物の設備です。
建物内には祈祷室が設けられました。
かつ、トイレがある場所には必ず多目的トイレも設置。その多目的トイレの名前は「ALL GENDER RESTLOOM」……。

日本国内では、多目的トイレの存在はともかく、祈祷室や「誰でもトイレ」の存在はまだまだ先進的なのではないでしょうか。
私は、トイレひとつで自分の人権が認められたような気持ちになり、その気持ちを抱いたことに驚きました。

きっと、多目的トイレが必要な人達も、お祈りのための環境が必要な人達も、これらの設備が出来るだけで物理的に助かるのはもちろん、気持ちとしてもかなり救われるのではないでしょうか。

他にもLGBT関連の取り組みでいえば、LGBTセミナーが行われたり、PRIDE指標でゴールド評価をされていたり、今回のTRP(東京レインボープライド)への賛同を「重要情報」として社内に流していたり……
正直に言って新卒でこんなに良い会社に巡り会えていいのか!?と思ってしまったほどいろいろと取り組んでいます。

ちなみに社内も、男女差などはまるで感じさせない世界でした。
性別など関係なく仕事をしていて、セクハラはもちろんパワハラのようなものも自分が見ていた限りでは見ることもなく。
差別の意図なく「女性は〜だよね」などと発言する場面も、一切見たことがありません。
(見たとすれば、私と同じ会社に所属するメンバーには一部いましたが……)

とにかく、性別が仕事に関わることが一切なく、性別で人を分けるような発言を受けることもなく、素直に仕事そのものに打ち込める環境でした。

2つの会社に出会ってみて感じたこと

初めに述べた通り、私が1年間で経験した世界は男性が大多数の世界です。

男性多数ということは、日本においては世間一般でもまだまだ強い男性の地位が、より高くより優位に扱われてしまいかねない世界なはず。
女性が窮屈な思いをするのはもちろん、女性以上に弱いであろう少数派な存在であるLGBTはもっと居場所が無くなりかねない。

初めに出会った所属していた会社は、世界に肩を並べようとしている割には、男性優位の度合いがあまりに根強すぎる場所でした。
若い世代がそこまででなかったとしても、会社の色を決めるのは結局上層部の態度であるということが実際に見てみたら明らかでした。

やっぱり男性社会の中では男女平等などは目の敵で、男性優位を貫き通したがるのだろうかと諦めにも似た気持ちも抱いていた時に、配属先の在り方に出会います。

配属先は、とにかく性の多様性はじめ多様性というものを重要視していて。実際に働く人達や職場環境からもそれを感じられて。
これは、グローバルな流れに乗らなければならないからというよりも、多様性を大事にするからこそ生まれる高い生産性を知っているからこその態度のように見えました。

そうした環境はまさに、自分が憧れを抱いていた、働きたい会社像そのものでした。

実際に自分が理想としていた環境で働いてみて、確信しました。
性別、その他国籍や宗教なども含め、自分の属するものによって囚われることなく、純粋に仕事に打ち込める環境。
これが、生産性を高めるため、より良いものを作るためには間違いなくプラスに働く環境だと。

多様な人間がいれば、多様な視点を得られる。多様な視点を通してモノを作れば、より精度の高いものをつくれるかもしれない。また、新たなものを生み出しやすくなるかもしれない。

……所属している会社しか知らなかったら、自分は社会全体に絶望していたかもしれません。

対称的な2つの会社、どちらの在り方がいいか。
自分の中では、答えは明白でした。

ちなみに次の会社は、まだ確定はしていませんが、合格すればまたまた毛色の違う会社です。
次はどんな世界を経験することになるのでしょう。

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