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ラピュタとガリバー旅行記

『天空の城ラピュタ』という作品が好きである。
公開時のキャッチコピーは

「血沸き、肉踊る冒険活劇。」

あまりに好きすぎて、金ローでラピュタが放映された翌日の学校で、校庭から積乱雲を見上げては「あの空の向こうに見たこともない島があるんだ……」などと思っていた。
(僕が小学1年生だった時は、まだ土曜日は‘半ドン’だった。)

また、中3の時にクラスで流行った休み時間の大富豪では、なぜか9を3枚出すと「ラピュタの雷!」と叫んでたし、当時はセリフも全て覚えた。

今でも空を見るのは好きだし、マラカイボ湖に行きたいのだってその辺に理由がありそうだ。

そんなラピュタの主人公、パズーの一言に「ガリバー旅行記で、スウィフトがラピュタのこと書いてるけど、あれはただの空想なんだ。」というものがある。

え、ガリバー旅行記?ラピュタ出てたっけ?というのが率直な感想かもしれない。

というわけでここからが本題。


あなたはガリバー旅行記を
最後まで読みましたか?


ガリバー旅行記。ほとんどの人が名前を知っているだろう。
そして大多数の人が、小人の国に迷い込んで、ロープで縛られたガリバーをイメージするだろう。

幾らかの人は、その小人の国---リリパット国での事の顛末も知っているかもしれない。

だがしかし。

小人の国に迷い込んだのは序章でしかないのである。

ガリバー旅行記はその名の通り、ガリバーという1人の男が奇妙な国に迷い込みそこでの出来事を記した架空の旅行記である。

そしてそれは大きく4つの章に分かれる。
小人の国、巨人の国、天空の国、馬の国である。

小人の国に関してはみなさんご存知の通りなので割愛する。
その後無事に国に帰ったガリバーは、再び調査か何かで船に乗り、嵐によって難破して巨人の国にたどり着く。

この巨人たちは別に人間も食べないし進撃もしないが、それでもガリバーにとっておぞましい描写はされていた。

例えば、巨大な母親が巨大な乳房を、これまた巨大な乳飲み子に含ませている。
が、この巨大な乳房の表面がいやに凸凹していて、大きなシミなんかもあって見るに耐えないものだったという。

純粋な思春期だった当時の僕には「そんなこともあるもんかね?」と記憶に残っている。



そして何やかんやで巨人の国を無事脱出し、国に帰って三度船に乗って難破して、次についたのは天空の国をはじめとするいくつかの国々だった。

実はこの第3章だけは、一国ではなくいくつかの国を巡る。
その中に天空の国もあるのだが、実は長寿の国や日本もある。

なぜか知らないが日本だけは実在する国である。
それだけ当時の欧米にとって、日本は遠くて幻のような国だったのかもしれない。
マルコポーロの黄金の国のイメージも寄与しているのだろうか。

ちなみに長寿の国では、推定300歳の方とガリバーが話す機会があるのだが、それを読んで僕は「長生きしすぎるのも考えものだなぁ」と思った覚えがある。


さて、天空の国の話をしよう。
この国は「ラピュータ」と呼ばれていた。
ジブリ映画のラピュタと同じく天空に浮かんでいるのだが、実態はかなり違う。

まず、ラピュータは廃墟ではない。
普通に人がいるし、しかも多くが学者や研究者だ。

だがこやつらがちょっとオカシイ
首を傾げて虚空を見つめているのがデフォルトのスタイルなのである。

思想に耽っているらしいのだが、四六時中そんな様では日常生活も会話もままならない。

そこで、そういった学者には必ずサポート役が付いている。
彼らは学者の身の回りの世話をしている。会話の最中で学者が思想に耽ったりすると、手にした棒のようなもので学者の頭を小突く。

それで学者は我に帰り、会話を続けるという寸法だ。


こういった国々を巡り、国に帰って船に乗って難破して、また新たな国に着く。
また難破かよ。他にやり方ないんかい。

そして最後に訪れるのが第4章の馬の国だ。

馬の国、である。

その国では馬が人間のように生活している。
いや、見た目は馬だが実際はより高度な生き物である。彼らは自身を「フウイヌム」と呼ぶ。

フウイヌムはその脚を使い、色々なことを器用にこなす。その様は見ているガリバーを感嘆させるほどである。

ガリバーが語るところによると、フウイヌムにはいくつか美徳がある。
そのうち最も僕の記憶に残っているのは、「嘘をつかない」ということだ。

というより、フウイヌムの中で「嘘をつく」という発想すら存在しない。
実際ガリバーは嘘をつくことのメリットを問われて答えに窮している。

そんな第4章のフウイヌム国には、もう一種類蛮族が存在する。それがヤフーである。

ヤフーの見た目は人間にかなり近い。どちらかと言うと類人猿だろうか。毛深いが背格好は人間と大して変わらないため、ガリバーも最初はヤフーだと思われていた。

そしてヤフーは基本的に野生だが、フウイヌムによって使役されることもしばしばある。
それを見たガリバーは当初は戸惑っていたが、次第にフウイヌムの高尚さに感化されヤフーを軽蔑していく。

余談だが、昨今ニュースやオークションで有名なYahoo!はここから取られているそうだ。
どのような意図を持って命名したのかは本人のみぞ知る。


さて、ここまでつらつらと『ガリバー旅行記』の概略をお伝えしてきたのだが、本作の魅力はここで終わらない。

最大の魅力は「風刺」にある。

当時のイギリスの政治状況や人間を風刺した作品で、イギリスお得意の皮肉が至る所に散りばめられているのだ。

僕は深くは知らないのだが、この作品の風刺を解説している記事や動画があったらいいな。

当時の社会情勢などを知るきっかけにもなりうると思うので、気になる方はぜひガリバー旅行記を読んで、そこに書かれた批判を合わせて楽しんでほしい。


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