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『正欲』を読んで

ずっと気になっていたけど、勇気がなくて。
映画化すると聞いて、読んでみました。
ネタバレになると思うので、もしお読みでない方はこのままお戻りください。

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読んだ最初の感想は、「いいなぁ」。
仲間を見つけられて、
分かり合える唯一無二の存在がいて、
心のよりどころに、なってくれる人がいて。

何回かこのnoteには書いているので、もし読者さんがいたらご存知とは思いますけれど、私は自分がアセクシャルであると自認しています。
性別は関係なく、どんな人でも性的に好きになることはありません。
性欲もありません。いや、あるんだとは思うけれど、他人に向ける必要性を感じません。他人に満たしてほしい、触ってほしいともおもいません。
そういう面では、夏月、佳道、大也と同じ。

そして私は、性被害にあったことがあります。
職場でのセクハラ、大学生時代に受けた性暴力。
だから「性的な目で見てくる男」が苦手です。
大人か子どもかは関係ないです。悪気があるかどうかも関係ないです。
そういう面では、八重子と同じ。
大也とも、同じかもしれません。

本文の中に、「地球に留学しているみたい」という1文があります。
私もまさにそんな感じです。
いつも地球人に擬態して生きています。
誰も私のことをわかってくれないといつも感じながら、生活しています。
分かってほしいと思っても、誰にでも自分の話をすることはありません。でもこれは最初からそうだったわけではなくて、
今までは聞かれたら話すようにしていました。
だって悪いことはしていないし、
私には恋愛感情がない、それだけなので。

でも、それを世間は許しません。
「おかしいよ」「本当はいるんでしょ」
「あの人といい感じだったじゃん」
「まだ出会ってないだけだよ」

結婚願望がないというと、達観した「女」のように思われます。
付き合いたくないというと、遊び人の「女」と言われました。
女で生まれたというだけなのに、男の人と遊ぶとそういう目で見られます。
レズビアンではないか、と噂を職場に流されたこともありました。
親には一応カミングアウトしたけど、未だに結婚しないの?と聞かれます。

もううんざり。
もううんざりなんです。

だからもう、言うのはやめました。
正直に生きると、傷つくので。

でも、擬態して生きるのも疲れました。
どうして自分は、皆と同じじゃないんだろう。

いいな、みんなは。
恋愛感情があって。欲求があって。
つながることができて。

同じように「結婚興味ない」って言い合ってた友達は、みんな結婚していきました。
うれしい気持ちもあるけど、寂しさ、裏切り、そんな気持ちの方が強かったです。

「あぁまた1人になる。」
そんなむなしさが、常に心にいっぱいなんです。

一応私にも「好き」の感情もあれば、
「一緒にいたい」の感情もあります。
でも性的な欲求が、付き合うこと、結婚することに(一般的には)必要不可欠なら、私はそれ以上には進む方ができません。相手を傷つけたくないし。

でも、誰かの1番にはいつまで経ってもなれない。
選ばれない、そして選ばない人生を過ごしていくんだ。きっとこれからずっと。

だから、この作品を読んだ時、「いいなあ」って思いました。
たった1人、自分の曝け出したくないところを確かに知ってくれている人がいる。それが、どれだけ幸せなことか。

noteの「正欲」感想を読んでいると、
「自分の知らない世界」と表現している方が多くいらして、「ああやっぱりわたしは「地球の人」じゃないんだな」と再確認しました。
確かに私は水に欲求を覚えたことはないので、「知らない世界」なんだけど、そうは思えなかった。
ここにあるのは、私の見ている世界。
でも、私の得られていない希望と奇跡がある世界。

「多様性」ってなんだろう。
理解しようとすることが大事。
でも、無理やり分かろうとしなくてもいい。
どちらも本当。
だけど確かなこと。私がここにいること。
誰かに気付いてほしい、私の触られたくないところに、そっと触れて欲しいと、叫ぶ人がここにいること。
そう思っている人が、私の横にもいるかもしれないと想像すること。

明日からもそうやって生きていく。
「留学生」の勤めを果たすんだ。
読み終わったあと、そう決めた。



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