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小さき厄災が落ちた日

その日は夜が綺麗だった。望遠鏡があれば夜空を肴に酒が飲めるほどに。だが、研究者である我々は施設にこもる毎日。白衣に白い壁、無機質な道具たち。そんな我々にとって窓から眺める景色だけが唯一の変化だった。


私が研究をサボってジュースを飲みながら窓の外を眺めているとそれは落ちてきた。眩い光を放つ隕石。それもかなり小さい。私は研究員を引き連れ急いで落ちた場所まで走った。


我々はガスマスクをつけてそれを確保した。オレンジ色に輝き手のひらに収まるほどの小さな隕石。落ちてから時間が経つのに未だ眩い光を放っている。熱くも冷たくもなく、ただ眩い光がどこか新鮮で魅力的に感じてしまう。我々がその隕石を近くで見ようとした瞬間、隕石は輝きを失い謎の煙のようなものが勢いよく噴射される。我々はそれが顔にかかり焦ったが、体には何も異常は出なかった。


その後研究所に帰り、隕石を保管したのち我々は除菌をし生体検査を行ったが、先程の煙による異常などは見受けられなかった。我々は隕石が希少なものかと思ったが、ただのガスを含んだ石という結論に至った。私もそう思い、隕石の調査は後回しにした。


その夜、寝つきが悪かった。皆んなが寝静まったであろう夜に私は部屋にある冷蔵庫からジュースを出そうとするがなかった。先程飲んだのが最後だったのか。私が研究所の食糧庫へ何かないか懐中電灯を持って探しに行くと、ガサガサと音が聞こえる。明かりを照らすと、同僚たちが塩や燻製肉、その他調味料など塩分の高い食べ物をひたすらに食べていた。異常に気づいた私は止めようとしたが、同僚たちは私に襲いかかってくる。知能はあるが理性はない、そんな感じだった。私は必死に逃げた。こんなに走ったのは何年振りだろうか。


辛くも危機を脱したが研究所内には悲鳴や怒号、そして爆発音も聞こえる。ガスだ、きっと隕石のガスを浴びたから皆おかしくなったんだ。だが、なぜ私だけが無事なのか。私もあの場で隕石のガスを浴びた1人だ。そうだ、もしかしたらあれがガスの力を弱めてくれたのかもしれない。私は急いで通信室に向かい近隣の星々に警告メールを送った。研究者の知り合い、軍、そして友人、私が思いつく限りの宛先に送信した。もうすでに施設はボロボロだ、正常に送れているかもわからない。だが、私は研究者として可能性を繋ぐ。


私が必死にメールを送っていると、長い縄の様な何かが首に巻きつき何かの折れる鈍い音がした。私が最後に聞いた音だ。


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