メタルポテト
遥か北の大地にある広大な地ベジタブルランド。ここでは知能を持った野菜人たちが平和に暮らしていた。そんなベジタブルランドの一角にある小さな田舎町ではポテト一族である北野ポテ太郎という少年が暮らしていた。ポテ太郎は土の中から這い出して近くの川で体を洗っていた。
「今日もいい天気だな!あれ、おかしいな、いつも皆んな体を洗いに来てるのに、、、。」
するとキャベツ一族の少女、キャベ子が走ってポテ太郎を呼びにくる。
「ポテ太郎大変よ!!町の緊急集会が始まるって!!」
ポテ太郎は川からあがり、その辺の葉っぱで体を拭く。
「どうせナス爺さんのぎっくり腰の再発とかじゃないのか。仕方ないな、、、。」
ポテ太郎はキャベ子と共に嫌々集会へ赴く。
町の中央には多くの野菜人たちがナス爺の話を聞いていた。ナス爺は高齢で杖で体を支えなければいけない程の老人であった。
「災じゃ、災じゃ!遥か南の地より獣がやってくる!!大地をくらう悪魔の群れが!!」
住人たちは土団子を食べながら笑っていた。ポテ太郎もその1人だった。
「馬鹿な話だなぁ。ベジタブルランドでそういう事件があったのは1000年も前じゃないか。」
するとナス爺はポテ太郎に歩み寄り杖で彼の頭を軽く叩く。
「馬鹿もの!確かに獣が現れたのは1000年前。我々のご先祖様は退けたものの、多くの犠牲を出してしまった。その時の教訓は今でも語り継がれている!貴様もよく知っておろうが!そして今、獣たちは1000年の時を経て力を蓄えたに違いない!皆のもの、周辺にバリケードを築くのだ、武器も作れぇ!」
ポテ太郎をはじめ他の野菜人たちも付き合ってられないと帰っていく。ポテ太郎はキャベ子と一緒に帰る。
「キャベ子、次にナス爺さんの集会がある時は内容を聞いてから教えにこいよな。」
「でも、ナス爺さんの気持ちもわかるわ。獣がこの地からいなくなって大分経つもの。知ってる?昔の野菜人たちは食べられる事を常に恐れてたって、、、。」
「食べられる?俺たちが?そんなお伽話信じるかよ。」
翌日、いつものように目覚めたポテ太郎は潜っていた土から這い出しまた川へ体を洗いに行く。しかし、今日もまた1人であった。
「またナス爺さんの集会か?皆んなも行かなきゃいいのに、、、。ん?」
すると町の方から大きな音がする。ポテ太郎は胸騒ぎがしたため走って向かう。
町は悲惨な状態であった。仲間が、仲間が大勢食いちぎられて倒れているのだ。ポテ太郎はすぐ近くにいたポテト一族に話しかける。彼は胴体の半分が無くなっていた。
「おい!生きてるか!!何があったんだ!!」
「ポテ太郎、、、。逃げろ、獣が来たぞ、、、。」
するとポテ太郎の前に四足歩行の巨大なイノシシが立ちはだかる。鉄の鎧を身に、鼻息を荒くしてポテ太郎を見つめ笑っている。
「ブビャビャア!ここにも美味そうなやつがいるぞ!やっぱり活きのいいのが1番だからなぁ!」
ポテ太郎は近くにあった石を投げつけてイノシシを攻撃するが倒せない。
「離れろ!化け物!」
イノシシは小石に動じはしなかったが、急に体を震わせた。
「あ、び、びぁ!キタキタ!野菜人食ったからパワーアップキタァ!ぁああ!」
イノシシは筋肉が盛り上がり二足歩行の獣人となる。鼻息をさらに荒くし、ひたすらに酔っていた。
「ぁああ。気持ちいいなぁ。さて、お前も食っちまおう。」
その姿に震えて動けないポテ太郎。しかしイノシシの後ろから石が投げられる。投げたのはキャベ子だった。
「ポテ太郎!逃げてぇ!」
「よせキャベ子!お前の方こそ逃げるんだ!!」
するとイノシシ獣人はキャベ子に近づき彼女を手で捕える。キャベ子はもがくが無意味であった。
「離して!痛い!」
そしてイノシシ獣人は彼女の葉を思い切りむしり、そのまま口に放り込んだ。その子ゲップをして体を気持ち良さそうに震わせていた。
「メスの葉っぱもうめぇなぁ。また力がみなぎる、、、!」
ポテ太郎は怒りで我々忘れて木の枝でイノシシ獣人に立ち向かうが、イノシシ獣人は彼を蹴り飛ばす。するとポテ太郎の体の表面はひどく損傷し、多くの土が被った。
「けっ。野菜人も身の程をしれってんだ。」
すると後ろからイノシシ獣人よりも体の大きいマンモス獣人が現れる。黒い鎧に覆われた、いかにも強者の風格を出していた。
「あ、マンモス様!俺もついに獣人化出来ましたよ!」
マンモス獣人はゆっくりな声で喋る。
「それは良かった。この町の野菜人はほぼ食らえたな。他に生き残りはいないか?」
「えぇと、さっきジャガイモのガキがそこに。あれ、どこ行った?食っちまったかな?」
「まぁよい。行くぞ、次の町にはカボチャとニンジンがいる。」
「お、美味そうっすねぇ!メスは俺が食いますからね!」
「どうでもいい、好きにしろ。いや、やはり年寄り以外は好きにするがいい、あの味だけは気に入らなかった。」
2人の住人はさらに来た他の獣人や獣と一緒にその場を去る。ポテ太郎は隙をついて茂みに隠れていた。
「いっ、行ったか、、、。あれが獣、野菜人はどうなってしまうんだ、、、。とにかく傷をなんとかしないと。」
ポテ太郎はひたすら歩いた。傷を癒すにはよい土を探さねばならない。しかし町を出た後も獣人や獣はベジタブルランドにて野菜人を襲撃。ポテ太郎は襲撃に怯え、逃げ、やがて人里離れた浜辺にたどり着く。
「海だ、何日も歩いて、獣人のいない場所はもうここしかない。でも、ここじゃまともな土もない。俺も、ここで終わりなのか、、、。」
ポテ太郎が砂浜に寝転がり、自らの終わりを待っていると、波の音が止まった。すると目の前の海が割れ、下へ続く階段が現れる。
「なんだ?階段、、、。」
ポテ太郎が階段を降りると巨大な洞窟へ続いていた。さらに進むとそこには鉄でできた聖堂になっており、その中央には少し古びた鉄の箱があった。
「なんだこれは、、、。」
ポテ太郎が鉄の箱に触ろうとした途端、彼の頭の中に声が響く。
「力が欲しいか。」
「誰だ!!」
「私は1000年前、禁忌の力を使い獣人を退けたもの。すなわち、お前たち野菜人の祖先である。」
「ご先祖さま!?じゃあ、あの獣を倒す術がこの箱に!?」
「その通り。その鉄は戦う意志のあるものに反応し、触れれば力を与える。だが、これは大地の神が嫌いし異次元の力。手にすればもう、お前は土の温もりも、人の気持ちすらもまともに感じられなくなるやもしれんぞ。それを失っても、お前は生きて戦いたいと望むか。」
ポテ太郎は息を飲み、強く箱に触れた。
「友や愛するものを失って得た命だ。これ以上、何も失わない、失わせたくない!」
ポテ太郎が箱に触れると、箱は錆色に輝き聖堂を全て照らす。禁忌の力は今、彼の正義に共鳴した。光が与える力の強さはいく日もポテ太郎を苦しめたが、彼は苦しみのたびに強くなった。彼が聖堂を出た頃には、悲しみと恐怖は消えていた。
獣人襲撃から5日後。
ベジタブルランドはありとあらゆる場所に出没する獣人や獣により絶望が蔓延っていた。イノシシ獣人はイノシシ達を引き連れ野菜人達を襲撃していた。
「食え、同胞達よ!食って強くなるんだ!!おい、ニンジンがいるぞ!そいつも食っちまえ!」
「た、助けてぇ!!」
ニンジン達が逃げイノシシ達に食べられようとしたその時、空から弾丸の如き速さで落ちてくるものがあった。それはイノシシの頭に直撃し、たった一撃でのしてしまった。衝撃で砂煙が舞いイノシシ獣人は慌てふためく。
「な、何事だ!」
その時砂煙の中からゆっくりと歩いてくる勇者がいた。冷たい鋼鉄のボディに熱き正義を宿したポテトである。
「そこまでだ獣人達よ!!」
「だ、誰だ!」
「北の大地を守るため、死の淵から舞い戻ったじゃがいも!!鋼鉄の野菜ヒーロー、メタルポテト見参!!!」
イノシシ獣人はヘラヘラと笑う。
「メタルポテトだぁ?もしかして、この間逃げたじゃがいも君じゃねぇか?ヒーローになってもサイズはそのままかよ、やってしまえ!!」
イノシシ達は一斉にメタルポテトへ突っ込んだが、メタルポテトは高速移動しながらイノシシ達を蹴りで倒していく。
「これが、マッハポテトアタックだ!!イノシシ獣人よ、故郷を滅ぼした貴様は許さん!!ここで、貴様を倒す!」
イノシシ獣人は棍棒を持ってメタルポテトと戦う。
「お前みたいなチビに負けるかぁ!くらぇ!」
メタルポテトに棍棒が当たるが、逆に棍棒はへし折れる。そしてメタルポテトはイノシシ獣人の足を掴み体ごと振り回して投げ飛ばす。
「ポテトスイング!!」
イノシシ獣人は声を荒げながら森へ突っ込む。木々は多く倒れその威力が凄まじい事がわかる。イノシシ獣人は何とか立ち上がり身構える。
「お、俺様をなめるなよぉおお!!」
イノシシ獣人はメタルポテトに突っ込むが、メタルポテトは体を高速回転させ空中に飛び、隕石のように落ちてイノシシ獣人を貫く。
「メテオポテトダイナミック!!」
「うぎやぁあああ!!」
イノシシ獣人は爆散しメタルポテトはニンジン一族の命を救った。ニンジン達は無表情のまま立ち尽くすメタルポテトに駆け寄る。
「あの、ありがとうございます!!助かりました!」
しかしメタルポテトは何も言わずにニンジン達の元から去っていく。
メタルポテト、いやポテ太郎は思った。戦いとは悲しい事だと。
「ご先祖様は人の心を忘れてしまうかもと言ったが、それは力を得た後にではなく、戦った後になのかもしれん。なんと冷たい体だ、傷は力で覆っただけでもう治癒する事はないだろう。だが、この身朽ち果てるまで戦おう。愛と平和をこの大地が思い出せるように。」
メタルポテトの戦いはまだまだ続く。マンモス獣人をはじめ多くの獣人達がベジタブルランドに残っている。空と大地の温もりを取り戻し、愛と平和を得るまで、戦え北野ポテ太郎!!勝て、メタルポテト!!
メタルポテト〜完〜
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いかがでしたでしょうか!ジコマンキングのHEXANFTお迎え記念に書かせていただきました!
HEXAで出品した頃よりも若干メタルポテト設定を変えたり、日本特撮のオマージュした部分など、ジコマンキング小説にはなかったストレートな作品になったと思います!
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