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沼地の悪魔、育つ。

沼地に住む1匹の生き物は大きくなる事に憧れた。

自分は非力で無に近い生き物だという認識は、僅かな知能でもはっきりとしていた。手足はなくヌルヌルとした物体程度の存在だ。

獰猛な生き物が巣食うこの星で、生きるために逃げ湿気った草木をかじり飢えを凌ぐだけで精一杯。その生き物はまさに弱肉の部類なのだ。

そんなある日、生き物が食い物を探しているのと2頭の巨獣が己の生死をかけてぶつかり合っていた。その内の1頭が負け、勝者である巨獣がそれを食った。

腹を満たした巨獣が消え、生き物はその食いかけに近づく。生暖かい肉、生き物にとっては未知の物質に近かった。生き物がそれをひと口食べると美味しさもさる事ながら力がみなぎってくる。弱き生き物はその日はじめて肉の味と力を覚えた。

生き物はその日から強者の食いかけを探しはじめた。時として骨しかなかった日もあったが、それすらも喜んで食べた。やがて生き物は少しずつ成長していった。

弱き生き物はある日、捕食者と遭遇した。以前なら見ただけで全力で逃げる相手だが、生き物は逃げる事なく立ち向かい勝利した。その特権は新鮮な肉、そして勝利の優越感。弱き生き物はその日から強き生き物になった。

やがて強き生き物は巨獣に自ら立ち向かうようになった。その度に傷つきながらも勝利し、肉を食い体を大きくしていった。あの頃の小ささはもうない。今は多くの生き物の肉と骨を取り込み、形容し難い姿になっていた。沼地の星で悪魔が生まれたのだ。

沼地の悪魔は幾年もかけて星の強者を喰らい尽くしていった。悪魔に勝てる存在はこの星にいない。だが、そんなある日空から何かがやってきた。見たことのない生き物だ。すばしっこく、何かを手に持っている。沼地の悪魔は新鮮な肉達を力で歓迎した。大きくなりたいという欲は、悪魔から離れる事はない。

続く↓


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