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エッセイ:大ちゃんは○○である

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大学時代~役者を経て介護業界に飛び込み、現在までを綴るエッセイ。
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#上京

エッセイ:大ちゃんは○○である27

エッセイ:大ちゃんは○○である27

「おはようございます。本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
開始時間になり、扉が閉められ、スタッフの方の挨拶が始まった。
最終的に書類選考通過者50名程はいただろうか?
先にも書いたように根拠のない自信はみなぎっているのに、なぜだか周りにいる人間が皆すごい人達なんじゃないかと思えてくる。
何を見たわけでも、何を聞いたわけでもないのにだ。
僕は緊張の糸を切

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エッセイ:大ちゃんは○○である26

エッセイ:大ちゃんは○○である26

事務所オーディションは浅草にあるビルの一室で行われた。
会場の入り口に近づくと、付近は熱気に包まれており、元々纏っていた緊張感がさらにグッと増していく。
受付には事務所スタッフと思われるスーツ姿の男性1名、女性1名がおり、来場者に1人づつ案内をしていた。
僕が行くと先に到着していた4人のライバルが並んでおり、スタッフの方から順に説明を受けていたので、僕もその4人の後ろに並び、受付の順番が来るのを待

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エッセイ:大ちゃんは○○である25

エッセイ:大ちゃんは○○である25

「おはようございます。当バスは間もなく東京駅に到着いたします。本日はご乗車いただきまして、誠にありがとうございました。」
車内に到着を知らせるアナウンスが流れ、乗客達はごそごそと起きだして、降車に向け備えだした。
僕はというと、結局一睡もできないまま、バスは東京駅の八重洲口へと到着した。
隣の太っちょマンを見ると、しっかり寝ましたと言わんばかりのスッキリした顔をしていたもんだから
本当に気分は『こ

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エッセイ:大ちゃんは○○である24

エッセイ:大ちゃんは○○である24

僕は左肩に力を入れ、クイっと動かしてみた。
「うーーん、、むにゃむにゃ」
全く気づく気配がない。まあまあまあ、そりゃあそうだよ。クイっぐらいで気づかせることができたなら苦労はない。
ならばと、今度は2段階クイクイを入れてみた。
クイっクイっ!
「むにゃん、うーん」
ほぉー、これでもだめですか。なかなか手強いじゃないですか。2段階クイクイでダメとなると、いよいよアレか。
アレを出すしかないか。
本当

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エッセイ:大ちゃんは○○である23

エッセイ:大ちゃんは○○である23

高速道路に入った夜行バスの車窓からは暗闇の景色が広がっており、外を眺める時間を楽しむといった感じではない。
車内の人達もポツポツと座席ライトを消し始める人が増え始め静かな空間が出来上がりつつあった。
僕も目を閉じ、静かに睡魔が忍び寄ってくるのを待った。
ところが。
「グォ、グァーー、スピーーー。ガッ、グルァーー、スピー。」
おそらく、ずっと読んで下さっている読者の方は大方予想できていたかもしれない

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エッセイ:大ちゃんは○○である22

エッセイ:大ちゃんは○○である22

「18のB…あー、ここだここだ。」
太っちょマンは18のBを見つけた。しかし、席を探す時ってこんなに声って出ちゃうもんなんだろうか?一人言が多いタイプなんだろうか?
「すみません、隣失礼しますねー。」
そう言って、太っちょマンは荷物を荷台に上げると僕の隣のシートにその大きなお尻をねじ込んだ。
「はい、どうぞ」とは言ったものの、本当は
「いえ、ちょっとお断りします。」と言いたかった。
言いたかったけ

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エッセイ:大ちゃんは○○である21

エッセイ:大ちゃんは○○である21

いざ上京することを決めたものの、退学届を出した時点ではまだ何も決まっていなかった。
所属するプロダクションも決まっていなければ、住む場所も決まってない。
知り合いがいるわけでもなければ、ツテやコネがあるわけでもない。
本当にないない尽くしの状態だった。
この事務所に入りたい!という目星だけはつけていて、書類は送っていたので
プロダクション面接の日程だけは先方から連絡をいただいており、決まっていた。

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