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エッセイ:大ちゃんは○○である23

高速道路に入った夜行バスの車窓からは暗闇の景色が広がっており、外を眺める時間を楽しむといった感じではない。
車内の人達もポツポツと座席ライトを消し始める人が増え始め静かな空間が出来上がりつつあった。
僕も目を閉じ、静かに睡魔が忍び寄ってくるのを待った。
ところが。
「グォ、グァーー、スピーーー。ガッ、グルァーー、スピー。」
おそらく、ずっと読んで下さっている読者の方は大方予想できていたかもしれないが、
隣の太っちょマンはそう簡単に僕を眠りの世界には行かせてくれなかったわけだ。
『いやいや、、トドかよ。。』
本当に申し訳ないが、本当に率直な感想ツッコミだった。
もちろんというか、当然のように2つ並んだ座席シートの真ん中にある肘掛けは占領されている。
座席の3分の2スペースに座らされているような感覚で目を瞑っていたが、もはや安眠なんて言葉は僕の中から抹消された。
安らかな眠り?無理無理無理無理。である。
どんな顔して寝てるんだ?と暗がりながらも、その寝顔に目を向けてみた。
まあ、まあ、まあ~~~、何とも気持ち良さそうな寝顔だこと。
半開きのお口に、ややずれた眼鏡。息を吸うたびバス揺れてんじゃないの?と錯覚してしまうような重厚感溢れるサウンド。
とってもイケナイことをあえて言わせてもらえるとするならば、
太っちょマンの右のほっぺたの毛穴という毛穴にマチ針を刺しまくってやりたかったぐらいだ。
再びイヤホンをつけ、目を瞑ったが睡魔が押し寄せてくる気配なんて微塵もない。
仕方なくカーテンを少しだけ開け、夜の高速道路を眺めながら音楽に身を委ねていたのだが。
「グォ~~~、ゴッ。ヴ~~ン」と太っちょマンは僕の左肩に頭を乗せてきたかと思うと
その巨体を預けてきたではないか。
「マジかよ、こいつ…」
思わず声に出してしまうほどだった。
さてどうしたものか。このまま左肩を貸したまま我慢するのか?
否。我慢なんてできるわけない。
そんな余裕なんてあるわけなかった。

つづく

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