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エッセイ:大ちゃんは○○である21

いざ上京することを決めたものの、退学届を出した時点ではまだ何も決まっていなかった。
所属するプロダクションも決まっていなければ、住む場所も決まってない。
知り合いがいるわけでもなければ、ツテやコネがあるわけでもない。
本当にないない尽くしの状態だった。
この事務所に入りたい!という目星だけはつけていて、書類は送っていたので
プロダクション面接の日程だけは先方から連絡をいただいており、決まっていた。
僕には何度も東京・京都間を往復する資金はなかったから、プロダクション面接で東京に言った際には住む所も決めてしまわなければいけなかった。
面接日の前夜、夜行バスで東京に向かった。
今の夜行バスはよく分からないが、当時の安ーい夜行バスはとにかく座席が狭かった。
指定席だった為、誰かが隣に座ってくる可能性がある。
見知らぬ人と隣同士、一晩バスに揺られるのははっきり言ってきつい。
気にならない人は気にならないかもしれないが、僕は苦手だった。
『頼むー。誰も来ないでくれー。』と僕は心から願った。もしかしたら声に出てしまっていたかもしれない。(そんなわけないか)
そう願う時に限って。。そう、そういう時に限ってなんだ。
願ったことと全く逆の現象が起きたりするんですよ。
しかも、プラスアルファがついていたりもするんですよ。
「えっと…18のB、18のB」と言いながら、1日何食食ったらそうなんのよ?とツッコミたくなるぐらい
お肉を蓄えた男性が近づいてきた。
『め、眼鏡が曇っていらっしゃる……はぁ、こんな人が隣だったら最悪だよな。絶対一席分じゃ足りないもんな。肘掛けとか奪われちゃうんだろうな。肘掛け奪われて更に腕とか押し込まれちゃうんだろうな。この人が眠りについたら肩に頭とか乗せてきて潰されちゃうんだろうな。寝言で「大好きだよ」とか言われたら思わず往復ビンタかましちゃうかもしれないな。あ~~、絶対に隣にこないでほしい。頼む頼む頼む。』
なんてことを考えていたら、ふと気づいた。
『えっ!?この太っちょマン、18のBって言ってた!?と、隣じゃん!』
18のAに座っていた僕は、この夜が長ーーくなることを覚悟した。

つづく

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